ホーム > インタビュー&レポート > 奥嶋ひろまさの同名漫画を吉沢亮主演で映画化した ラブ・コメディ『ババンババンバンバンパイア』 吉沢亮&浜崎慎治監督インタビュー
──本作のオファーを受けた時はどのように感じられましたか。
浜崎監督:まず原作を読ませていただいて、漫画をそのまま実写にする部分もあっていいと思いましたが、脚本にどこまで漫画の要素を落とし込むのかバランスを取るのが難しいだろうなと思いました。キャスティングについては、原作を読んですぐに蘭丸は絶対に吉沢さんがいい、と。
──すぐに吉沢さんだと思われたんですね。
浜崎監督:そうですね。原作の蘭丸もすごいイケメンなので。笑いの要素も多いキャラクターを自然に演じることができる人はなかなかいないんです。だから、吉沢さんにオファーさせてもらいました。バンパイアものも初めてで、日本ではあまり馴染みがなくて、西洋のものというイメージがありましたが、銭湯とバンパイアという組み合わせがあったので、そこが面白いと思いました。
──なるほど。吉沢さんはオファーを受けていかがでしたか。
吉沢亮(以下、吉沢):台本を読ませていただいた時に、監督とご一緒するのは今回が2回目ですが、前回出させていただいた『一度死んでみた』の印象が台本に色濃く出ているように感じて。僕はそれがめちゃくちゃ面白いと思ったので、「ぜひやらせてください」と。監督が浜崎監督だったから出演しようと(笑)。
浜崎監督:ありがとうございます。僕としては、吉沢さんは『国宝』をやった後にこの映画に来てらっしゃって。あの作品の後に、この作品って、真逆じゃないですか。僕らは『国宝』の撮影を知らないので、吉沢さんがどんな気持ちでやってたのか聞きたくて。全然違う作品だけど、同一人物が演じているので、その切り替えがすごいと思って。僕が俳優だったら「マジっすか」って言うと思うんです(笑)。
──『国宝』をやってらっしゃった時に、次にこの映画でバンパイア役をやるのは、決まっていたんでしょうか。
吉沢:決まっていました。
浜崎監督:そんなすごいことあります?
吉沢:むしろ、『国宝』の撮影がすごくしんどかったので、楽しくやれると思いました(笑)。
浜崎監督:さすがですね。
吉沢:1ヶ月ぐらい間があったので、その間に身体作りをする計画をなんとなく立てていたんですが、意外とこの1ヶ月間が忙しくて。
──(笑)。
吉沢:そっちの方がしんどかったです(笑)。なんで身体を作ってる最中なのにこんな忙しいんだって。
──おふたりは『一度死んでみた』でもタッグを組んでらっしゃいましたが、お互いにどんな印象をお持ちだったんでしょうか。
吉沢:僕がすごく好きだなと思った部分は、監督の作品は、いい意味でバカしか出てこないところです(笑)。
浜崎監督:確かに(笑)。
吉沢:敵役でも愛されキャラというか、観ていて安心するんです。
──わかります。『一度死んでみた』の小澤征悦さんなんて、すごく面白いですもんね。
浜崎監督:(笑)。
吉沢:笑っちゃいますよね(笑)。
浜崎監督:真面目にやってるのに(笑)。
吉沢:どんなキャラクターでも笑えるのは非常にいいと思いました。
浜崎監督:僕は『一度死んでみた』で、吉沢さんに存在感のない男を演じてもらったので...。
──もったいなかったですよね。
浜崎監督:そうなんですよ。イケメンを封印していたので。今回は真逆で、イケメンを前面に出せる(笑)。コメディだけど、存在感のある中心人物を演じてもらえるわけですから。実は、『一度死んでみた』で吉沢さんを見た時に、すごくコメディが上手い方だと思ったんです。
──具体的に言うとどういう部分が上手いと感じられたのでしょうか。
浜崎監督:緩急のつけ方がお上手なんですよね。その記憶があったので、今回、蘭丸役をお願いできないかなと思いました。人間ではなくてバンパイアだから、全く違うキャラクターではあったんですが。
──本作はバンパイアがメインキャラクターの映画ですが、恋愛要素もあって、もちろんコメディも。さらには堤真一さん演じる織田信長と蘭丸のシーンは時代劇で、さらにはワイヤーアクションまで出てきて。いろんなジャンルが楽しめる映画だと思いますが、時代劇のシーンはすごく本格的だったと思いました。
浜崎監督:めちゃくちゃ気合入ってましたね。実は、本能寺のシーンは撮影2日目だったんです。初日は、蘭丸が(眞栄田郷敦さん演じる)兄の長可から織田信長に紹介されるシーンで、時代劇からこの映画の撮影が始まったんです。
──時代劇から入ったんですか?
吉沢:あれが初日でしたっけ?
浜崎監督:初日だったんです。バンパイアの格好もせず、あのシーンから始まって、堤さんがいるから、これなんのシーンだっけ?って(笑)。
──それはそうなりますよね(笑)。いろんなジャンルを飛び越える撮影はいかがでしたか。
吉沢:「何を撮っているんだろう?」と思うことはありました(笑)。
──(笑)。
吉沢:最初の信長様とのシーンは、セットもそうですが、シーン自体も重めで。撮影が始まって2日目には泣きのシーンもあって。
浜崎監督:そうそう。「信長様~」って。でも、編集してみると蘭丸には一切ブレがなくて、完璧なんです。あの炎の中のシーンは僕もキュンときたぐらいで。
──あそこはすごくいいシーンでした。
浜崎監督:でも、よく考えるとコメディ映画だったよねって(笑)。
吉沢:この映画なんだっけ?ってなりましたよね(笑)。
浜崎監督:「信長様~」って叫んで、吉沢さんは泣いてるけど、これなんだっけ?って一瞬我に返って。でも、あのシーンがあるからこそ、作品に幅が出たと思います。
──蘭丸は信長様との時代から450年生きてますが、森蘭丸というキャラクターを演じるにあたって、一番大事にしたことは何でしたか。
吉沢:年齢的な部分で言うと、蘭丸はいろんな感情を経験しているはずだから、もう飽きているというか、簡単には心が動かなくなっていて、全てを達観して見ているような感覚は意識しつつ、李仁くんだけには、まだ5年ぐらいしか生きてないぐらいのピュアな熱量を持っている。だから、李仁くんとそれ以外の間に太い線を引きながら演じていました。
──なるほど。
吉沢:李仁くんに対してだけはものすごく人間臭くなるけど、それ以外の人に対してはバンパイアとしてというか違う生物として接している感覚を意識しながら演じていました。
──本作は、全員が大真面目だからこそ生まれる面白さがあると思いますが、胸にじーんとくるシーンもあって。コメディとシリアスのバランスについて、どのように考えてらっしゃいましたか。
浜崎監督:そこが難しいところなんですよね。僕は作品に幅がある方が面白くなると思ったんです。さっきまでシリアスだったのに、急に蘭丸が坂本に抱きつかれるシーンとか。ジェットコースターに乗ってるような感覚で。ある意味、どこまで幅を持たせられるのかの挑戦でした。キャラクターそれぞれにひと山あったので。
──特に、坂本とのシーンはすごく緩急がありましたよね。
浜崎監督:それは役者の方々が、すごくしっかり脚本を読まれて真面目にやってくれたから、面白さが生まれたと思います。馬鹿真面目にやっていこう、と。でも、蘭丸は李仁くんに対してだけは暴走しちゃって...。
──そこが笑ってしまうところですよね。
浜崎監督:そこが蘭丸の可愛いところでもあるので。李仁に対してだけはピュアなとこがあるから、そこが笑いになるなと思ってました。
──監督は吉沢さんが蘭丸の衣装を着て、バンパイアとして現れて演技してらっしゃるのを見た時はどのように感じられましたか。
浜崎監督:蘭丸は、衣装もメイクも相当悩んで、あの姿になってますから。耳のサイズ感や髪の長さまで。髪の毛にも逆さ吊りとかいろんなパターンがあって。原作ではこうだったけど、吉沢さんの身体を使って蘭丸を表現すると、これがベストだなと。もちろん、漫画には漫画の世界観があると思うんですが、実写にした時にベストだと感じる形を模索しました。
──漫画が原作の作品はともすれば、リアリティがなさすぎることもあると思いますが、実写化にあたって、どのようなことを意識してらっしゃいましたか。
吉沢:難しいですね。ビジュアル的な話をすると、もちろん、大前提として原作にどれだけ寄せられるかという部分はあるとしても、同じ格好をすればいいわけではないと思うんです。結局、そのビジュアルが僕自身に馴染んでないと意味がないので。
──そうですね。
吉沢:原作で髪はこの長さだから揃えようと思っても輪郭が違って、ダサく見えることもあって。できる限り見た目を原作に寄せつつ、それが僕の身体にちゃんと合うラインを見つけることは、いつも大事にしています。今回は、髪型にしても、ここは長くていいけど、ここはもうちょっと短い方がいいとか、細かい部分までメイクさんと調整しながら作らせてもらいましたし、衣装もこだわりました。ジャージは20着ぐらい着ましたよね?
浜崎監督:ジャージも着たし、Tシャツも着たし。蘭丸って普段どんな格好してるんだろう?と考えて。吉沢さんに何着も着てもらって、すり合わせをしました。ちょっとコウモリが入ってたり、銭湯だからジャージも多そうだな、バンパイアだから黒が多いだろうとか、いろんな服にトライしてもらいました。吉沢さんの身体を通して、これがベストだと決めていきました。
──衣装もそうですが、歌のシーンにもすごくこだわりを感じました。吉沢さんは歌のシーンはいかがでしたか。
吉沢:あの歌、難しいんです。
浜崎監督:あの歌は難しいと思います。でも、めちゃくちゃうまかった。吉沢さんの歌が最初なので、僕もどうかな?と思ったんですが、めっちゃ上手くて。吉沢さんは練習した感じも出されずにいきなり歌ってもらっても、めっちゃ上手かったので。相当練習されたんだろうなと思いますが、素晴らしかったです。
吉沢:いやいやいやいや。
浜崎監督:でも、これで吉沢さんが歌上手いのがバレちゃったなって。
──そうですよね(笑)。
浜崎監督:ヤバいなって。そっちもバレちゃったかと。
──まだ原作は続いてますし、続くのかな?という終わり方でしたが、おふたりはどのように思ってらっしゃいますか?
浜崎監督:もちろん、大歓迎ですよ。
──李仁くんが18になるまでの物語を観たいと思ってるのですが...。
吉沢:まだ、あと2年ありますから(笑)。
浜崎監督:確かに(笑)。
撮影/大﨑俊典
取材・文/華崎陽子
(2025年8月12日更新)
▼大阪ステーションシティシネマほか全国にて上映中
出演:吉沢亮
板垣李光人
原菜乃華 関口メンディー/満島真之介
堤真一
音尾琢真 映美くらら
笹野高史
眞栄田郷敦
原作:奥嶋ひろまさ『ババンババンバンバンパイア』(秋田書店「別冊少年チャンピオン」連載)
監督:浜崎慎治
主題歌:imase「いい湯だな 2025 imase × mabanua MIX 」 (Virgin Music / ユニバーサル ミュージック)
【公式サイト】
https://movies.shochiku.co.jp/bababa-eiga/
【ぴあアプリ】
https://lp.p.pia.jp/event/movie/335432/index.html
よしざわ・りょう●1994年2月1日、東京都生まれ。2009年芸能界入り。映画『リバーズ・エッジ』(18)で第42回日本アカデミー賞新人俳優賞、一人二役を演じた映画『キングダム』(19)で第62回ブルーリボン賞助演男優賞、第43回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞などを受賞。2020年に浜崎慎治監督作『一度死んでみた』に出演。2021年に大河ドラマ「青天を衝け」で主人公・渋沢栄一を演じる。翌年に月9ドラマ初出演・初主演となる「PICU 小児集中治療室」(22)に出演。2023年には6作品(『ファミリア』、『東京リベンジャーズ2』2部作、『キングダム 運命の炎』、『かぞく』、『クレイジークルーズ』)が公開された。2024年は『キングダム 大将軍の帰還』、『ぼくが生きてる、ふたつの世界』に出演。2025年は『国宝』でも主演を務めている。
はまさき・しんじ●1976年生まれ、鳥取県出身。CMディレクターとして、KDDI au「三太郎」シリーズ、家庭教師のトライ「教えてトライさん」、花王「洗濯愛してる会」、丸紅「できないことは、みんなでやろう。」などを手掛け、ACCグランプリ、ACCベストディレクター賞、広告電通賞優秀賞、ギャラクシー賞CM部門大賞など受賞多数。最近では、短編映画「半透明なふたり」がショートショートフィルムフェスティバルのコンペティション部門にて東京都知事賞など受賞多数。長編映画作品は吉沢亮も出演した『一度死んでみた』(20)に続き2作目。