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「これが自分のターニングポイントになる」(櫻井)
「この経験があれば、今後の人生やっていける」(齊藤)
「役作りがいらないくらい
内面を理解できるキャラクターだった」(原)
累計発行部数2,000万部を突破した大ヒット漫画を
原作愛溢れるスタッフ&キャストがドラマ&映画化
『【推しの子】』櫻井海音&齊藤なぎさ&原菜乃華インタビュー

累計発行部数2,000万部を突破した赤坂アカ&横槍メンゴの同名漫画をドラマ&映画化した『【推しの子】』。ドラマは、Prime Videoで世界独占配信中、映画『【推しの子】-The Final Act-』は、12月20日(金)より、T・ジョイ梅田ほか全国にて公開される。

産婦人科医から推しのアイドル・アイの息子として生まれ変わったアクアが、母親を殺した犯人を追う姿を中心に、アクアの双子の妹ルビーがアイドルを目指す姿や幼い頃のアクアとの出会いで人生が変わった有馬かなの姿を描く。

母であるアイの死の真相を暴くため芸能界に潜り込む主人公のアクアを櫻井海音が、アクアの双子の妹で、亡き母・アイのようなアイドルになることを夢見るルビーを齊藤なぎさ、幼い頃から子役として芸能活動し、ルビーと共にアイドル活動を始めることになる有馬かなを原菜乃華が演じるほか、齋藤飛鳥、あの、倉科カナ、吉田鋼太郎らが出演している。

そんな本作の公開に合わせ、アクアを演じた櫻井、ルビーを演じた齊藤、有馬かなを演じた原が作品について語った。

──『【推しの子】』に出演するにあたって、どのように感じられましたか。また、【推しの子】という作品を見てどのように感じていたのかお聞かせいただけますでしょうか。

櫻井海音(以下、櫻井):芸能界をここまでリアルに、繊細に描いている作品はまずないと思いました。この業界にいる身からしても、そのままというか、自分たちのことを描かれてるように感じるぐらいリアルで驚きました。それが【推しの子】の魅力だと感じてます。また、芸能界にいる、それぞれの職業の人が言いたかったことや、それぞれの立場で抱えている正義みたいなものを代弁してくれているような作品だと思います。

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──出演に当たってはどのように感じられましたか?

櫻井:オファーをいただいてクランクインするまでの期間は、世界的に人気の作品なのでプレッシャーもありました。撮影に入ってからは、現場が一体となっていたので、プレッシャーはひとりで抱えるものではなく、皆が同じ気持ちで背負っているという感覚になれて。そこからは自分が大好きな作品をどういう風に作っていくかという考え方になりました。

──齊藤さんはいかがでしょうか。

齊藤なぎさ(以下、齊藤):(倉科カナ演じる)ミヤコさんの「アイドルになった瞬間から、あなたは普通の女の子じゃなくなる」というすごく印象的な台詞があるんですが、本当にその通りだと思いました。私は13歳の頃からアイドルをやってましたが、普通の女の子としての生活は送れなかった。もちろん、充実した毎日で本当に楽しかったのですが、周りの子を羨ましいと思う瞬間もあって、そういう面が描かれているのもすごくリアルだと思いました。アイドルや誹謗中傷のことなど、私もすごく共感する部分が多かったので苦しくなりましたが、すごく面白くて共感してしまうので、見続けました。

──ルビーを演じることについては?

齊藤:ルビーちゃんの役にはプレッシャーも感じましたが、すごくやりたかったので、向き合って頑張ろうと思いました。

──原さんはいかがでしょうか。

原菜乃華(以下、原):私も、オファーをいただく前から見させていただいてました。有馬かなは、今までで1番共感できるキャラクターだったので、感情移入しすぎて辛くなってしまって、途中で見るのを一旦ストップしたぐらいでした。彼女の心情にすごく共感できて、役作りがいらないくらい内面を理解できるキャラクターでした。

──具体的にはどういうところでしょうか?

:お芝居にすごく執着があるところや、彼女が頑張る理由に共感しました。それに加えて、彼女の根本にある、認めてほしいという思いや、私にはこれしかないという気持ちなど、明るいだけではなく、ネガティブな気持ちを燃料にして動いているかなちゃんはすごく人間味のあるキャラクターだと感じました。

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──そんなかなを演じることについては?

:見ているだけでも辛くなるんだったら...という不安はもちろんありましたが、私だからこそ代弁できるんじゃないかと、自分を奮い立たせながら演じていました。これだけ人気の作品だからこそ、自分のお芝居でかなの魅力を半減させてしまいたくなかったので、すごく怖かったです。でも、見ている時からここまで感情移入できる役は初めてだったので、そんな風に思えるなら何とかなると自分を鼓舞しながら撮影に挑みました。かなの役は本当に難しかったので、自分でいいのかという思いはずっと持っていたかもしれません。

──プロデューサーから、それぞれの背景やキャラクターを考えてキャスティングされたとお聞きしました。オファーを受けた時の第一印象を教えていただけますでしょうか。

櫻井:オファーをいただいたのは、まだアニメも始まる前だったので、僕はプレッシャーよりも嬉しさが強かったです。この作品に出させていただけると決まった段階で、これが自分のターニングポイントになるだろうという感覚はありました。なのでこの作品には、人生がかかっているぐらいの気持ちで挑まなきゃいけないと思いました。

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──齊藤さんはいかがですか。

齊藤:驚きもありましたが、すごく嬉しくて、車の中で大きな声で叫びました。ルビーは私に似ている部分がとても多いキャラクターなので、私のことを見てくださってる方がキャスティングしてくださったんだと思いました。

──原さんは『ミステリと言う勿れ』の時に、それまで長かった髪の毛を切られて、今回も髪の毛が短い役ですが、有馬かなという役はいかがでしたか。

:『ミステリと言う勿れ』の後にオファーをいただきました。純粋にすごく嬉しかったですが、元天才子役という肩書がちょっと怖すぎて(笑)。さらに、お芝居が上手いという設定のキャラクターをやるのは初めてだったので、そのプレッシャーは半端じゃなかったですが、絶対にやりたいという気持ちもありました。

──芸能界にいる皆さんが【推しの子】を読んでリアルに感じた部分を教えていただけますでしょうか。

齊藤:私はアイドルをやっていたからこそ、そのままだと思いました。ライブ会場の裏側の様子なんて、本当にあのままなんです。椅子がたくさん並んでいる中でメイクして、売れた人たちから個室になっていくこととか、小さいところまで再現されていました。共感する部分がめちゃくちゃ多くて、いろんな世界の裏側をどうやったらあんなに詳しく描けるのだろう?と思いました。ここまで忠実に描かれている作品はないと思います。

──もう少し、他の作品はオブラートに包んでる気がします。櫻井さんはいかがですか。

櫻井:「(恋愛)リアリティーショーに台本はない。だが演出はある」という台詞があるんですが、その通りです。

齊藤:そうだよね。

──(笑)。

櫻井:ネットでよく「どうせこれ台本でしょ」って口コミを目にするじゃないですか。

──よく見かけますね。

櫻井:台本は本当にないです。恋愛リアリティーショーは、それぞれの自己プロデュース能力を試される場なので。それが【推しの子】ではそのまま描かれているから、すごい作品だなと思いました。ちなみに、原さんにとってあかねみたいな人はいるの?

:どうだろう?でも、同年代で役を争い続けることはあるじゃないですか。

──ありますね。

:だから、毎回オーディションで最終に上がってくるメンバーは絶対同じなんです。毎回、同じだから、「またか。もう勝てない」と思うことは何回もありました。そういう部分はすごくリアルでした。

──なるほど。

:【推しの子】がすごいのは、女優さんの気持ちを、まさに渦中にいる張本人の気持ちとして完璧にトレースしているように感じるところです。ここまで張本人の気持ちを理解した上で、さらに、その職業を生業として生きてきた人かのように描いているので、何人の漫画家さんや先生がいるんだろう?と思って。外から取材するだけでなく、いろんな人生を歩んでないと、ここまで深く理解することはできないんじゃないかと思いました。

──私は「大人がガキ守らなくてどうするんだよ」というアクアの台詞がすごく好きで。それぞれ心に刺さった台詞やエピソードを教えていただけますでしょうか。

:私が大好きなのは、「今日は甘口で」で、かながアクアと話してる時にアクアのお芝居のことを「アクアの演技、ずっと努力してきた人の演技って感じがして、私は好き。細かいテクが親切で丁寧っていうか(中略)それは普通の人には分からなくて、長く役者やってる私たち以外にはどうでもいい事なのかもしれないけど」というところが、すごくいいなと思いました。

──あのシーンも良かったですね。

:もうひとつ「こんな前も後ろも真っ暗な世界で一緒にもがいてたやつが居たんだって分かって、それだけで十分」という台詞は、自分にかけてもらったみたいに感じて。今までの人生を肯定してもらったような気がして泣いちゃいました。すごく温かい言葉だな、と。今までの自分の苦悩や他の人には伝わらない部分を、ここまで包み込んでくれる言葉があるんだと思いました。あの台詞が大好きです。

──なるほど。

oshinoko_sub2.jpg齊藤:私がすごく刺さったのは、「私たちは今を走ってるから、大人の時間で考えないでください」という台詞です。本当にそうなんですよ。もちろん長く続けられる人もいると思うんですが、今を生きてるアイドルに対して、大人のペースで考えちゃダメだと思って。私も、その言葉は自分にかけてもらったみたいに感じました。私が19歳でアイドルを辞めているからこそ、すごく刺さった言葉でした。自分で言いながらちょっと泣きそうになりました。

:私もルビーちゃんの台詞の中で一番好き。めちゃくちゃいい。

齊藤:いいよね。

:あの後のヒムラさんの...

齊藤:わかる!

:「いい曲書いてほしけりゃ、火種持ってこい」って。

齊藤:いいよね!あのシーン、ほんとにぐっと来るんですよ。

──櫻井さんはいかがでしょうか。

櫻井:アクアが「東京ブレイド」の時に、「使えるものは全て使う」と言うんですが、その感覚は、その通りだと思いました。僕は台詞というよりは、アクアの生き方そのものに影響を受けているような気がします。

──本作の撮影を経て、何か変化がありましたか?

齊藤:私は、この作品を経て顔つきが大人っぽくなったと言われることがすごく多くなりました。それは自分でも感じていて。半年の間に、こんなにいろんなことを経験するドラマや映画は、今までにもないし、今後もないんじゃないかと。歌もダンスも演技もして、いっぱい泣いて、劇中劇もして。この経験があれば、今後の人生やっていけるっていうぐらいの経験をしたからこそ、顔が大人っぽくなったんじゃないかと思います。

櫻井:こういう大きなプロジェクトで主演をやらせていただいて、作品づくりに対しての考え方や向き合い方が、変化したように感じています。自分の大好きな作品で、人生に1度あるかないか、ない確率の方が高いと思う経験をさせてもらって。そういうところに飛び込んだ感覚は忘れられないですね。もちろん、実写化に対しての批判的な声もあると思いますが、そういうことに対する対策と向き合い方を学んだというか。自分たちでプロセスを踏んで作り上げて、ちゃんと作品と向き合っていれば、あまり怖くないというか、そういう感覚は今回で強くなりました。

:言葉で言うのは難しいですが、今回の作品で、一緒に作り上げるということの意味がすごくわかった気がします。同年代の役者さんが多くて、すごく仲が良かったからこそ、この中で戦っていかなきゃいけないという気持ちや、人のお芝居を見て引っ張られて、私も負けないように頑張ろうという思いとは、少し違っていて。お互いを労い合う仲間のように、皆が歩幅を合わせてくれたような気がしたんです。

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キャストの皆さんのことを私はかっこいいと思っているし、尊敬していて。仲が良いとか好きというよりも、尊敬の念が入っている分、このチームに対してすごく愛情が深くなりました。一緒に頑張ろう、一緒に歩んでいこうという空気を初めて肌で実感したような気がします。特にB小町の活動では、歌もダンスも私は初めてだったので、おふたりに助けてもらいました。私はふたりのことをすごく尊敬していますし、大好きです。

取材・文/華崎陽子




(2024年12月11日更新)


Check

Movie Data


(C)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・東映 (C)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・2024 映画【推しの子】製作委員会

『【推しの子】』『【推しの子】-The Final Act-』

『【推しの子】』
Prime Videoにて世界独占配信中
『【推しの子】-The Final Act-』
▼12月20日(金)より、T・ジョイ梅田ほか全国にて公開
出演:櫻井海音 齋藤飛鳥 齊藤なぎさ 原菜乃華 茅島みずき あの
企画・プロデュース:井元隆佑
脚本:北川亜矢子
音楽:fox capture plan
演出(配信ドラマ):スミス、松本花奈
監督(映画):スミス

【ドラマ&映画公式サイト】
https://oshinoko-lapj.com/movie/


Profile

櫻井海音

さくらい・かいと●2001年東京生まれ。バンド“インナージャーニー”のドラムとして昨年まで音楽活動を行うなど幅広く活動し、連続テレビ小説「エール」(NHK/20)や「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS/21)への出演をきっかけに俳優としての活動を本格的にスタート。2022年、『噓喰い』で初となる映画、「鎌塚氏、羽を伸ばす」では舞台に初挑戦。2023年、「VIVANT」(TBS/23)やNetflixドラマ「君に届け」(23)に出演し、「アオハライド」(WOWOW/23)では主演を務める。また、「王様のブランチ」(TBS)へレギュラー出演するなど、ジャンル問わず幅広く活動の場を広げている。


齊藤なぎさ

さいとう・なぎさ●2003年神奈川生まれ。2017年に指原莉乃プロデュースのアイドルグループ「=LOVE」のメンバーとしてデビュー。2023年1月に卒業。在籍中、ドラマイズム「明日、私は誰かのカノジョ」(MBS/TBS/22)に、高橋優愛(ゆあてゃ)役で出演し話題となり、俳優としても注目を集めた。卒業後は『交換ウソ日記』(23)や「最高の生徒~余命1年のラストダンス~」(NTV/23)へ出演するなど、俳優・声優として活躍の場を広げている。2024年も『恋を知らない僕たちは』、『あたしの!』と映画2作品にメインキャストで出演している。


原菜乃華

はら・なのか●2003年東京都生まれ。2009年に芸能界デビュー。映画『罪の声』(20)の生島望役で注目され、以降「ナイト・ドクター」(CX/21)、「真犯人フラグ」(NTV/22)、「ナンバ MG5」(CX/22)など多くのドラマに出演。新海誠監督によるアニメーション映画『すずめの戸締まり』(22)では1,700人を超えるオーディションから主人公・岩戸鈴芽の声優に抜擢され、見事に演じた。近作に、『ミステリと言う勿れ』(23)の狩集汐路役、大河ドラマ「どうする家康」(NHK/23)の千姫役、『恋わずらいのエリー』(24)の市村恵莉子役などがあり、それぞれの作品で存在感を発揮している。