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共生の意味を観る者に問いかける『猿の惑星』完全新作が公開!
映画『猿の惑星/キングダム』プロキシマス・シーザー役
日本版声優・竹内力インタビュー

映画史に名を残したSF映画の金字塔『猿の惑星』が、『メイズ・ランナー』シリーズのウェス・ボール監督により新たな幕を開ける『猿の惑星/キングダム』が、TOHOシネマズ梅田ほか全国にて上映中。猛威をふるったウイルスによって激変した、今から300年後の世界を舞台に、知能を持った猿(以下、劇中で呼ばれるエイプに統一)と後退した人類の衝突を描く。

『To Leslie トゥ・レスリー』のオーウェン・ティーグやフレイヤ・アーランら若手俳優が主要キャストに抜擢され、主人公ノアの前に立ちはだかる、エイプが支配権を握る世界でエイプを統括しキングダムを築こうとする冷酷な独裁者プロキシマス・シーザーをケヴィン・デュランドが演じている。そんな本作の公開を前に、プロキシマス・シーザーの日本版声優を務めた竹内力が作品について語った。

──まずは、『猿の惑星』シリーズについてお聞かせいただけますでしょうか。第1作の衝撃は忘れられないですよね。

インパクトありましたね。今でもラストシーンの衝撃は忘れられない。これを超えるラストシーンはないんじゃないかな。

──そんな『猿の惑星』シリーズ最新作の敵役、プロキシマス・シーザーの日本版声優を演じることになった時はどのように感じられましたか。

全部は観ていませんが、『猿の惑星』シリーズも何作か観ていたので、そこに自分が携わることになるとは。光栄でしたし、ある意味これも衝撃的でした(笑)。

──プロキシマス・シーザーは知性が前に出るキャラクターでしたが、どのように演じようと思われましたか。

こういうキャラクターは俳優として演じた経験があったので、やりやすかったですね。それに、あれだけの猿たちを携える、強い個性の持ち主で高い能力を持ったエイプなので、やりがいがありました。

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──プロキシマス・シーザーの声はどのように作っていかれたのでしょうか。

最初はちょっとくぐもった感じでやりましたが、やりすぎると滑舌が悪くなって聞き取りづらくなるのが大変でした。かと言ってストレートに喋ると猿っぽくないので、そこを意識しながら演じました。

──台詞の言い方にもいろんなバリエーションがありましたが、どのように考えて演じられたのでしょうか。

実際にプロキシマス・シーザーを演じているケヴィン・デュランドさんの声を聞きながら声をあてたので、そんなに苦労せずにできました。字幕版と全く違う印象になるのは嫌なんです。自分が観る立場だったらということを常に考えてやりました。字幕版と吹替版の両方を観る人から「全然ちゃうやん」と思われたくないですから。

──竹内さんは普段、字幕と吹替のどちらで観ることが多いのでしょうか。

両方観ますが、最近は吹替の方が多くなったかな。吹替は、字幕を目で追わなくていいから集中できていいですよね。字幕の方を向いたら、展開されているお芝居や全体を見られなくなってしまうこともあるので。映像を端から端まで見られるから、最近は吹替の方を楽しむことが多いですね。

──そういう意味でも、吹替を演じる立場の重要性を感じてらっしゃったのでしょうか。

そうですね。そのキャラクターの声に合っていることが重要だと思っています。だから、声優のキャスティングはすごく重要です。ぜひ、また何かあれば私に(笑)。

──竹内さんは過去にも声優の経験がおありですが、身体を使って演技するのと声優はまた違う楽しさがあるのでしょうか。

声優の仕事は好きですね。好きなんだけど、なかなか声がかからなくて(笑)。スタジオ内だから暑くも寒くもないので(爆笑)。

──前半はノアの冒険という要素が強かったですが、本作を観てどのように感じられましたか?

色々と考えさせられるストーリーでしたね。ウイルスや戦争など様々な現在の問題をストーリーに盛り込み、我々人類へ問題提起している作品でもありますよね。それを人類の残した遺物を要所要所に織り込んで、世界最高峰のVFX映像により現実世界と錯覚してしまうようなリアルさで衝撃を受けました。

──竹内さんは敵役を演じることも多いと思いますが、どのようなことを意識して演じてらっしゃるのでしょうか。

役者で敵役をやっているときは、ただの悪役ではなく人間の深みを入れたい、言わば視聴者から見て魅力的なキャラクターに仕上げたいと思っています。分かりやすく言うと、主人公を立たせるために真逆に徹底的な憎まれ役に徹するという事を計算して演じています。まぁ、その中にもひとりの人物としての切なさや哀愁などを入れ込むんですけどね(笑)。今回は声優の仕事なので、ハリウッドの俳優の方が演じ挙げたキャラクターを俺が壊さないように出来るだけ彼の喋り方に寄せて吹き替えました。プロキシマス・シーザーは魅力的なキャラクターなので、演じていて楽しかったですね。

──魅力的なキャラクターだったからこそ、演じる甲斐があったと。

そうですね。ただ横暴なだけじゃなく、秘密を聞き出すために優しい声で機嫌を取りに行ったりする知性的な戦略家だけど、急にブチぎれて抑圧的な叫び声をあげたり、急に馬鹿笑いしたりと喜怒哀楽が凄まじいキャラクターだったので。

──本作は、ディストピア的な風景の中に廃虚のような場所がたくさん登場します。元の場所は何だったんだろう?と考えさせられましたが、竹内さんが特に印象に残ってる場所はどこでしょうか。

まずは、最初に登場したビル群が木に覆われているところですね。現実世界でもこういうことが起こり得るんじゃないかと思って、ぞっとしました。そして、プロキシマス・シーザーが住む船も、岸にぶつかって朽ち果てている中に猿たちがたくさんいて。そういうところは、最初の『猿の惑星』の衝撃にも近かったですね。観た人はそういうシーンにどんどん引き込まれていくと思うので、そういった映像を要所要所に入れ込んでいる監督の演出は素晴らしいと思います。

──そういうシーンにも、動物と人間の共生など、いろんなメッセージが込められていました。

そうですね。特に、檻に入った猿の絵が描かれた絵本をノアが見るシーンはすごくグッとくるものがあり、
考えさせられました。

──竹内さんはRIKIプロジェクトで映画に出資したり制作されたりしていますが、それは映画への思いがあるからでしょうか?

映画ももちろんですし、TVドラマや配信ドラマ、最近ではYouTubeやtikitokなど、形にとらわれず、たくさんの人々に楽しんでもらう"ものづくり"が、自分の生きがいでもあり、楽しみですからね。

──ご自身が出る、出ないは関係ないのでしょうか。

全く関係ないですね。出演も制作もそれぞれの良さがあるので、どちらも楽しんでやっています。でも、暑い時や寒い時の現場は辛いから、できればどちらも春と秋だけやりたいかな(笑)。

──竹内さんと言えば、やはり「難波金融伝 ミナミの帝王」が思い浮かびます。

キャラクター作りにはこだわりがあります。あのキャラクターも、出版当初の漫画とは随分変更しました。ファッションのデザイン、車を登場させる、眼鏡ではなくサングラスをかけて、などなど細部に渡って作り上げました。

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──それが、今の映画作りでも発揮されているんですね。本作も、そういう視点で観てらっしゃったのでしょうか。

この映画は、各々の個性が際立っていますよね。似たようなキャラクターじゃなくて。ノアを含む3人のエイプもすごく魅力的で。女の子とちょっと怖がりのエイプがいて。プロキシマス・シーザーの方も、強いゴリラと、耳の大きいエイプがいて。漫画で描いてもめっちゃ描きやすいし、分かりやすい。子どもが見てもわかりやすいようにしていますよね。やっぱり、俺はエンターテイメントが好きなので。

──そういう意味で本作は、説教臭さは全くないのに、どういうことだったんだろう?と考えさせる作品になっていました。

今、現実社会で起きている地球温暖化、異常気象、戦争、政治での争いごとなど、人類が人類を破滅へと向かわせている、言わば自分たち人間が住んでいる惑星である地球を壊し続けている現状に問いかけている作品だと思いました。

取材・文/華崎陽子




(2024年5月16日更新)


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Movie Data



(C) 2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

『猿の惑星/キングダム』

▼TOHOシネマズ梅田ほか全国にて上映中
出演:オーウェン・ティーグ、フレイヤ・アーラン、ケヴィン・デュランド
日本版声優:松岡禎丞(ノア)、小松未可子(ノヴァ)、楠見尚己(ラカ)、竹内力(プロキシマス・シーザー)
監督:ウェス・ボール

【公式サイト】
https://www.20thcenturystudios.jp/movies/kingdom-apes

【ぴあアプリ】
https://lp.p.pia.jp/event/movie/310867/index.html


Profile

竹内力

たけうち・りき●1964年1月4日、大分県生まれ。1986年に映画デビューし、『難波金融伝 ミナミの帝王』など、多くのヒット作品に出演。「難波金融伝 ミナミの帝王」、「仁義」、「岸和田少年愚連隊 カオルちゃん最強伝説」など長期シリーズとなった作品も多い。現在は、連続ドラマ「かっこいいスキヤキ」が各コンテンツで配信され、最新オリジナル主演「欲望の街」シリーズがU-NEXTにて配信中。代表作に『DEAD OR ALIVE 犯罪者』(1999)、『TOKYO TRIBE』(2014)など。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15)では、イモータン・ジョー役の日本版声優を務めた。