シネマとレストランが融合した新たなエンタテインメントを提案する大阪・大国町の「モンキーシネマレストラン」シェフで映画監督のかなた狼インタビュー - インタビュー＆レポート

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シネマとレストランが融合した新たなエンタテインメントを提案する
大阪・大国町の「モンキーシネマレストラン」
シェフで映画監督のかなた狼インタビュー

全12席の映画館とレストランが融合した新しいエンタメを提案する「モンキーシネマレストラン」が、2023年4月、大阪・大国町にオープンした。

いつでもどこでも映画を観られる時代だからこそ、独自にセレクトしたここでしか出会えない映画をスクリーンで鑑賞してもらいたい、そして、厳選された松阪牛を中心にした無国籍料理やお酒を、映画の余韻に包まれながらゆっくり楽しんでもらいたい、というコンセプトでスタートしたお店だ。

店内には海外の映画スターや映画監督の肖像画が飾られ、隠し扉を開けると映画館へとつながる通路が現れる仕掛けになっている。レストランのメニューは、モンキータコスやフライドチキンライスをはじめ、この店の一番人気メニューであるA5松阪牛を使ったモンキーステーキなど、アメリカンダイナーを思わせるメニューが並ぶ。

このお店のシェフが、『ニワトリ★スター』などを手掛けた映画監督でもある、かなた狼だ。幼い頃から映画が好きで、「昔、映画館の前で流されていた予告編が好きな映画のものだった時は2時間でも飽きることなく見ていた」ほど。一旦は日本料理の道に進んだものの、紆余曲折を経て、『殴者 NAGURIMONO』や『ハブと拳骨』の脚本を手掛けたことをきっかけに映画の道へ進んだそう。

そんなかなたが、ここ5年ぐらいの間の映画館を取り巻く状況の急激な変化やミニシアターの苦境を間近に見たことで、「映画作りの一環として劇場まで持つことが、僕らのような独立系の映画には大事なことなんじゃないか」と考えるようになったそう。

というのも、コロナ禍に『ニワトリ☆フェニックス』を公開し、その他にも海外配給が決まっていた作品がおじゃんになるなど、「映画館は"映画のゆりかご"だと言われますが、僕ら映画を作る側は生む方なので、無茶苦茶しんどいんです。劇場さんや役者さんは公開が終われば次の作品に移りますが、作った側は作品を抱きかかえたままなので、新たな道を探りたいと思った」と、この店を作った理由を熱く語った。

また、元々レストラン事業も手掛けていた会社だったこともあり、「新しい映画の在り方を模索する中で、ここでしか観られない作品や、上映機会の少ないインディーズ作品のサポートなどをする映画館を併設したレストランを思いついた」そう。

以前から、「大阪にこれだけ多くの外国人観光客が訪れているにも関わらず、日本映画に英語字幕を付けた映画を上映する映画館がないことを不思議に思っていた」というかなた。オープンしてから半年以上が経ち、かなた自身も驚きだったそうだが、ニューヨークの映画祭に呼ばれた際に作っていた『ニワトリ★スター』の英語字幕版を、レストラン上階の民泊に宿泊している外国人の方に見せたところ、「めちゃくちゃ喜んでくれた」そう。

その後もどこで聞きつけたのか、様々な国の方から「英語字幕の映画を観たい」と依頼があるそうだ。「それも、この店をオープンしないとわからなかったこと」と言い、さらには、ふたりで映画を観て食事をした年配のご夫婦が「こういう優雅さを忘れていた」とおっしゃったそうで、「映画を観た後に食事をしながらその映画の話をする感覚もコロナで失われてしまったのかもしれない」と感じたそう。

そのことから、この店のレストランには、「映画を観ることは映画について語り合う時間も含まれている」という、かなたの思いが込められ、「映画を観た後には、美味しいものを食べて飲んで語り合ってほしい」と語った。それも、『ニワトリ☆フェニックス』を撮影した三重県での地元の方との交流が縁で、松阪牛を直接仕入れることができたと言うから驚きだ。

かなたも元料理人という経歴から、レストランで腕を振るう機会もあり、その際には「映画を観たお客さんと映画について話すことを楽しみにしている」そう。「ずっと映画監督をしてるわけではないので(笑)。皿洗いもしますし(笑)。映画を観てもらうだけでなく、実際に会って話をする。結局はそんなアナログなことに原点回帰していくんじゃないかと思う」と語った。

今後は、『ニワトリ☆フェニックス』撮影時の裏側を映した新作ドキュメンタリー『GLIMPSE(グリンプス)』や、日本で上映されていない短編作品などの上映も手掛けるとともに、上映機会の少ないインディーズ作品のサポートもしていきたいとのこと。かなたも、自身初となるドキュメンタリー映画の準備を進めているそうだ。

現在、映画は週末に『神在月のこども』と『ニワトリ☆フェニックス(MCR Ver.)』を上映。平日も、要相談で上映可能とのこと。予約は公式サイトから。

取材・文／華崎陽子

（2023年11月27日更新）

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