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竹野内豊&山田孝之がW主演を務めたサスペンススリラー
『唄う六人の女』で、ふたりを翻弄するミステリアスな女性に扮した
アオイヤマダ&武田玲奈インタビュー

竹野内豊と山田孝之がW主演を務めるサスペンススリラー『唄う六人の女』が、10月27日(金)より、大阪ステーションシティシネマほか全国にて公開される。山道での車の事故をきっかけに、深い森の中でミステリアスな6人の女性たちに囚われた、正反対のふたりの男性の姿を描く。

『オー!マイキー』『ミロクローゼ』など、数多くの映像作品を手がけた石橋義正が監督を務め、水川あさみ、アオイヤマダ、武田玲奈、竹中直人らが共演している。そんな本作の公開を前に、ミステリアスな6人のうち、“濡れる女”を演じたアオイヤマダと“包み込む女”を演じた武田玲奈が作品について語った。

──アオイさんが演じた"濡れる女"というキャラクターについて、監督からはどのようなお話があったのでしょうか。

アオイ:実は、映画のお話をいただいた時は、私は別のキャラクターだったんです。でも、水の中で泳いでいる役をやりたいと思ったので、「どうしても私は水の中で踊りたいです」と、監督にお願いするお手紙を書かせていただいて。この役をやることになりました。

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──水の中で表現する役を演じてみたかった理由は何だったのでしょうか。

アオイ:一度、別のお仕事で水の中で表現する役をやらせていただいたことがあって。その時、とても苦戦したんです。やっぱり水の中って怖いし、死と向き合うから。生きたいと思いながら踊り続ける感覚は、陸の上では感じられない。私は、その怖さと隣り合わせで踊ることに魅力を感じて、もう1度やってみたいと思ってお願いしました。

──それほど、水の中で踊ることが魅力的だったんですね。

アオイ:水の中は重力がないので身体が動きやすい。でも、慣れているわけじゃないから壁がある。石橋義正監督のひとりのファンとして、彼の作品に関わらせてもらうからには、自分にとっての壁も乗り越えたいと思いました。

──身体が自由な気がするということでしょうか?

アオイ:小さい頃から川や海で、とにかく泳ぐことが大好きだったんです。撮影となると少し違いますが、水の中に入ることや泳ぐことはとても身近なことでした。

──なかなか、映像作品で水の中での身体表現を求められることはないですもんね。

アオイ:そうなんです! しかも、私は石橋義正監督の作品が大好きだったので。特に、「唄う六人の女」があった「バミリオン・プレジャー・ナイト」が。私の中では、水の中×石橋義正監督×「唄う六人の女」なんて!挑戦したい! という思いでした。

──水の中のシーンはどのように撮影されたのでしょうか。

アオイ:呼吸法などを教えていただきながら、5mぐらいの深いプールで撮りました。撮影が寒い時期で、寒いとどうしても呼吸が浅くなるんです。だから、水の中にいられる時間が短くなって、すぐに上がりたくなってしまうので、2、3日みっちり練習して撮影に臨みました。というのも、撮影になるとプールの中に黒幕を張るんですが、黒幕を張ると水に潜った時に天地がわからなくなるので、パニックになったことがあって。練習によって、そういう怖さがなくなって、安心して演技に集中できました。

──竹野内さんと水の中で共演するシーンもありました。

アオイ:正直に言うと、怖かったです。竹野内さんを引っ張る動作があったので、それを一生懸命やりすぎて、上にあがれなくなってしまって。そうしたら、竹野内さんが上に引っ張ってくださって。竹野内さんは溺れながら沈まなきゃいけないので、彼の方が絶対に苦しいのに、必死になって助けてくださいました。

──それは大変でしたね。最初にアオイさんがおっしゃったように、もしかしたらそこに死があるという状況で演技をする機会はなかなかないですね。

アオイ:物理的に呼吸ができなくなるので、怖いというか緊張する撮影でした。

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──武田さんが演じた"包み込む女"というキャラクターについて、監督からはどのようなお話があったのでしょうか。

武田:こうしてほしいというのはなくて、子どもたちと戯れる感じで、ただ、そこにいることを求められた感覚でした。監督から具体的な話はあまりなくて、果たして生き物なのか...と思いながら演じていました。人間ではないことはわかっていたので、私の中では想像上の生き物を演じるという感覚でした。

──なかなか立ち入ることのできない原生林で撮影されたと聞きましたが、緑の密度の濃い森でした。

アオイ:そんなところがあったことも知らなかったので驚きました。私のイメージする森とは全然違うと感じました。私は森の中には入っていないのですが、映像でも伝わってきましたし、映画の最初の方に生き物の映像が出てきますが、あれも全て実際に森の中にいた生き物だと聞いて、こんな生き物が見られるんだと感動しました。

──映画のオープニングにフクロウが出てきた時は驚きましたが、野生のフクロウっているんですよね。

アオイ:フクロウなんて、あまり現実味がなかったけど、共生してるんだよなと改めて感じました。私は生まれが長野なので、幼少期は自然が身近にあったんですが、15歳で東京に出てきてから、自然や水、緑や動物などが他人事になっていたことに気づきました。

この撮影で京都の美山や奈良に行った時に、久しぶりに自然と一緒にいるなと感じて、そうするとストレスに感じていたことが改めて浮き彫りになって。自然って必要なものなんだ、だから大切にしようと自然に思えました。

武田:私は自然がすごく好きなので、自然の中で撮影できて幸せでした。森の中には生き物たちもいましたし、緑も深くて。普段目にしないような。森の中ってこんなに暗かったっけ? と思いました。自然の偉大さが垣間見えたような気がしました。

アオイ:動物に見つめられるとハッとするんですよね。人間にはいろんなレイヤーが入っていますが、何の疑いもない真っすぐな目で見てくるから。私の知人は、熊と目があった瞬間に自分の人生を見つめなおしたそうです。そういえば、美山って電波が入らないんですよ。

──あっ、森の中だから!

武田:デジタルデトックスでした(笑)。

──そうですよね。ところで、この作品は字だけでイメージするのは難しかったと思います。脚本を読んだ時と出来上がった作品の印象が違ったのではないでしょうか。

アオイ:私は、石橋義正ワールドを期待しすぎて。脚本ではこう書いてあるけど、反抗的なものを作るんじゃないかと思っていたんですが、完成した作品を観たら、素直な気持ちになって、これ、本当に石橋監督が作ったの!? と思って(笑)。素直に自然のことを考えながら観ていました。

武田:台本を読んだ時に、現実パートは理解できたんですが、森の中の女たちがどんな風に描かれるのか全く想像がつきませんでした。石橋監督の前の作品を観て、編集が施されるのかな? と考えていました。撮っている最中もこれはどんな映像になるんだろう? と思っていました。

──森の中ではほとんど台詞がなかったと思いますが、監督からはどのようなお話があったのでしょうか。

アオイ:私は、最初の方は自由にやらせてもらって、監督も「いいね」と言ってくれていたんですが、階段を上って振り向くシーンは何回もテイクを重ねたんです。正解がわからなくて、監督は何を求めてるんだろう?と考えながらやっても、なかなかOKが出なくて。昔の「歌う六人の女」を見た時に目が印象的だったので、不快にさせるけど心地いいようなバランスを狙っていたのかな、と。だから、作りすぎても違うし、抜きすぎても違ったんだと思います。

──OKが出たカットはご自分でも手ごたえがあったのでしょうか?

アオイ:結局、わからなかったんです。でも、何が正解なんだろう? と考えている焦点の合わない感じが良かったのかもしれないと思っています。

──この映画に出演してどのようなことを感じられましたか?

武田:自然破壊の問題は、自分の知らないところで進んでいるんだと感じましたし、勉強になりました。生活の中に定期的に自然を取り入れたいと思っていたので、撮影中は自然をたくさん吸収できましたし、映画を見てまた行きたいなと思いました。自然は人間に必要なことなんだと実感しました。

アオイ:ほとんどの人が初めましてで、私は山田さんとも初めてだったんですが、バッタが手にとまって、バッタの話で盛り上がって距離が縮まりました。山や森は急に寒くなるので、それが話題になって、自然が私たちの距離を縮めてくれた気がします。普通にスタジオで撮影していると、そんなことないので。バッタが繋いでくれました(笑)。

武田:電波もないからみんなで話すことも多かったですよね。

アオイ:コミュニケーションをとることって、人間関係にとっては根本的に必要なことですよね。原点に帰ることができたのは大きかったと思います。

取材・文/華崎陽子




(2023年10月26日更新)


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Movie Data



(C)2023「唄う六人の女」製作委員会

『唄う六人の女』

▼10月27日(金)より、大阪ステーションシティシネマほか全国にて公開
出演:⽵野内豊 ⼭⽥孝之 / ⽔川あさみ アオイヤマダ 服部樹咲 萩原みのり 桃果 武⽥玲奈
⼤⻄信満 植⽊祥平 下京慶⼦ 鈴⽊聖奈 津⽥寛治 ⽩川和⼦ / ⽵中直⼈
監督・脚本・編集:⽯橋義正
脚本:⼤⾕洋介

【公式サイト】
https://www.six-singing-women.jp/

【ぴあアプリ】
https://lp.p.pia.jp/event/movie/238229/index.html


Profile

アオイヤマダ

●2000年生まれの表現者。90年代のクラブ、アートシーンやアンダーグラウンドカルチャーに影響を受けたことが活動の軸となる。メディアアート集団ダムタイプ「2020」等に出演、東京五輪2020閉会式にソロ出演後、ヴィム・ヴェンダース監督作『Perfect Days』(23)やNetflixシリーズ『First Love 初恋』(22)に俳優として出演している。生き様パフォーマンス集団『東京QQQ(トウキョウサンキュー)』のメンバーとしても活動中。


武⽥玲奈

たけだ・れな●1997年7月27日生まれ、福島県出身。2014年Popteenレギュラーモデルとして芸能活動スタート。映画『暗殺教室』(2015)にて女優デビュー。2023年福島県いわき市の観光や食の魅力を発信する「いわきツーリズム推進特命部長」任命された。主な出演作にドラマ「おいハンサム!!」(22/THK・CX)、「あなたがしてくれなくても」(23/CX)やCM「ハートに炎を。BOAT IS HEART」、主演作『真・鮫島事件』(20)等、活躍の幅を広げている。現在放送中のeスポーツ番組「eGG」(20/NTV)ではMCを務めている。