ホーム > インタビュー&レポート > くるり・オリジナルメンバーが地元で登壇 『くるりのえいが』先行上映会 in 京都 レポート
同じご飯を食べて、同じとこで寝て、
おはようって言ってレコーディングをする
東京での完成披露上映会に続き、この日2回目となる地元京都における舞台挨拶はもちろん完売。幸運な150人の観客が3人の登場を待っていた。ステージには司会進行役のFM COCOLO DJの野村雅夫が登場。早速メンバーを呼び込むと、映画を観終わったばかりの客席からは温かな拍手が贈られた。
『感覚は道標』に収録の『California coconuts』が流れる中、登壇した3人。岸田は「こんにちは。舞台挨拶ってなかなか慣れてないんですけど、見た目以上に緊張してます。かなり緊張してます。ご覧いただきありがとうございました」、佐藤は「来ていただいてありがとうございます。自分がMOVIX京都さんに来るのが、10年ちょっと前のトム・ハンクス主演の『クラウド アトラス』をメンバーで観に来たぶりなんですよね。その後に来るのが『くるりのえいが』を観てくれた人の前にいるのがすごく感慨深い感じでございます」とそれぞれ挨拶。そして森が「オリジナルメンバーの森信行です。僕がいた頃のくるりを知ってはる方はどれぐらいいらっしゃるんですかね」と問いかけると8割ほどの手が挙がり、森は「あ~、嬉しい」と笑顔を浮かべ、「僕がいた頃のくるりを知らない方も結構いらっしゃるということで、そういうのも含めて色々楽しんでいただけたらと思います」と述べた。
撮影で印象的だったエピソードを聞かれると、岸田は「作る1つ1つが、ほんま瞬間瞬間がそうやったというのは、映画を観ていただいた皆さんもわかってくれはるかなと思ってるんですけども、自分的には、途中エビフライが出てきたのご存知ですか。あれ、結構大きかったんです。大きいのが1人3尾ついてたんですわ。あの日はエビフライと湯豆腐。メインが2つ出てくるんです。それですかね」と回答。さらに「バンドもののドキュメンタリーとかたまに興味深く観るんですけど、食べ物があまり美味しくなさそうに映ってる場合が多いんですよ」と述べて「美味しそうやったでしょ。あのね、美味しかったです」と満足そうに笑顔を見せる。佐藤も「朝ご飯を10時過ぎぐらいに食べて、夜ご飯を7時ぐらいに食べて、夜は夜でアテを食べながら飲むんですけど、ちゃんと朝、お腹減るんですよ。自分的には"今日は何のお味噌汁やろ?"というのが1番の楽しみで。絶対赤だしで作ってくれはるんですけど、そこに伊豆でしか食べれないような、今日の朝採れたメカブとか入ってて。ワカメとメカブがご馳走になる伊豆、最高でした」とスタジオでの食の素晴らしさに触れていた。
そんな合宿形式でレコーディングが行われたことについて岸田は「よく"同じ釜の飯を食う"という言葉もありますけど、久しぶりに集まって、同じご飯を食べて、同じとこで寝て、おはようって言ってレコーディングするって、あまり日常的じゃないというかね。そういう感覚やったから、それも意外と音に反映したんやなというのは思いました」と述べ、森は「ちょっとクサい言い方になるかもしれないですけど、そういう感動を共有するみたいな。例えばちょっとリフレッシュするって伊豆の海に行って、"うわ~、風気持ちええな~"とか、"海綺麗やな"、"暑いな"、"ご飯が美味しいな"という感覚を皆で共有できるのがチームワークに繋がる気がしていて。そんな感じも映画の中に入ってる感じがします」と、合宿(がアルバム制作に及ぼした影響)は「大きかった」と口を揃えていた。
繰り返し見ていただけると色んな発見がある映画。
長く付き合ってください
3人でのセッションについて聞かれると、岸田は「普段1人でコンピューターや楽譜に向き合って作る時もありますし、 佐藤さんとそれを交換しながら作る時もありますし、それこそ緊急事態宣言が出ていた時は、全部リモートで音楽制作もやってたいた」と述べ「こういう機会に3人で集まって、昔の仲間やからというのももちろん大きいですけど、ずっと顔突き合わしてやってるのが、非常に貴重というか、懐かしくもあるんやけど、それよりもやっぱり、人と集まって音楽を聴くのが楽しいなという気持ちでした」と喜びを滲ませた。
そして久しぶりに岸田と佐藤の前でドラムを叩いた時の想いを聞かれた森は「実は音博にはもう2回出て、今年で3回目。ライブで一緒に演奏はしてるんですけど、レコーディングや、3人でモノを作っていくことはまた違うもの」として、「インスピレーションの仕掛け合い。こう来たらこう出て、こう出たらこう来てみたいな。そういうやり取りはやっぱりすごく楽しかったです。僕がいなくなってからのくるりも、また違う形で進化していってるところもありますし。だから僕が久しぶりに入って、"ああ、一緒やな"と思うところもあれば、すごく成熟しているくるりの新しい形も見れたりして。僕にとってそれは、ものすごく新鮮な体験でした」とレコーディングを振り返った。
佐藤は森について「やっぱり瞬発力のすごい人。4小節のイントロっぽいギターリフが流れてきただけで自分の中で道筋を作って、疑いなく"これ正解なんです"というふうに出てきてくれはる。だから曲が進んでいく。そういう感覚はありました。当時は絶対話したことがなかったような、ドラムに対してどういう気持ちで臨んでるかという話を聞けたり。レコーディングの意義に関しては、今回曲が生まれた瞬間からレコーディングまでがめちゃめちゃ短かったり、"構成どんなんやったっけ"と思いながらやるぐらいの感覚でやってたので、"じゃあ録ってみよう"となった曲の良さを、皆が忘れないうちにできたのが、1番良かったことなのかなとは思います。それを持ち帰って、個人個人でこうしようとかやっちゃってたら、少しずつベクトルがズレて、元にあった良さがなくなっちゃったりするんですよね」と、ライブ感やスピード感が重要だったことを示唆した。
『感覚は道標』の反響について、岸田は「ネットやSNSでも色んな声を見て、"なるほどね"と"ありがとうございます"はいっぱいある」と述べ、「曲ってちょっとずつ育っていくもんやと思うんで、最初にすごく祝福していただいた感じ」と嬉しそうな表情を浮かべていた。
劇中、京都のライヴハウス・拾得の50周年公演ライブに出演したシーンについて岸田は「いっぱいいっぱいではありましたけど、楽しんで演奏したと記憶してます」、佐藤は「平均BPMが20ぐらい上がってたんじゃないか」と全速力で演奏したと回顧。この日の客席には、その拾得のライブに行ったという人も散見され、しばし思い出を共有して温かい空気に包まれた。
今後の活動について森は「映画の中でできたものが、オギャーって生まれた瞬間。その瞬間がこの映画には映ってますので、それはまず楽しんでいただいて。実はアルバムに入ってるものは、そこからまたちょっと成長して青年ぐらいになってるんですよね。次はツアーで大人になった曲が見れるかもしれない」と楽曲の成長について述べると岸田は「グレないようにせなあかんな」と冗談を挟む。森は「そういうふうに育っていく感じも多分面白いと思うんですよね。なのでぜひツアーに足を運んでいただけたらと思います」と瞳を輝かせた。佐藤は「良い森さんとの付き合い方をしていけたらいいかなと思っております。ツアーは森さんも参加してくれるので。過去に『チミの名は。』というツアーの時も一緒にできたんですけど、それ以上に楽しいツアーになればいいなと思っております」と意気込みを見せる。
と、ここで森がツアー名を発表。『ハードにキマる!つやなしハッピージェル』について岸田が思わず「どういう意味なんですか」とツッコみ、「これはそうですね。あ、ちょっとやめとこう」(森)というやり取りも見られた。
今後について、岸田は「たまに考えるんですよ。今後どういうふうにしていこうかなとか、どういうのをやったらええかなとか」と述べて「ケセラセラでございます。ほんまに何とかなるんやろうなと。『感覚は道標』というアルバムを作って芽生えたものっていくつかあると思いますし、さっき、もっくん(森)も言うてはりましたけど、オギャーから成長していくわけですから、その成長の過程で、作者である自分たちが得ていくものもあると思うので、それを見守りながら育てながらという感じで、"ケセラセラ"ですかね」と述べ、最後に「私自身気に入った映画って、1回しか観ないものもありますし、繰り返し観るものもあるんですけども、この映画、映画とは言いましても音楽作品でもありますので、繰り返し見ていただけると色んな発見があるんちゃうかなと、僭越ながら思っております。長く付き合ってやってください」と想いを伝え、舞台挨拶を締め括った。
映画『くるりのえいが』は、10月13日(金)より3週間限定で全国の劇場にて上映&デジタル配信中。また、アルバム『感覚は道標』発売記念ツアー『ハードにキマる!つやなし無造作ハッピージェル』は、12月16日(土)の愛知 Zepp Nagoyaを皮切りに、12月17日(日)に大阪 Zepp Osaka Bayside、12月22日(金)・23日(土)に東京 Zepp Diver Cityで開催される。映画を観た上でのツアーは、響き方もきっと変わる。ぜひ映画を繰り返し堪能してからライブに足を運んでほしい。
Text by ERI KUBOTA
(2023年10月16日更新)
▼10月13日(金)より、全国劇場3週間限定公開&デジタル配信開始
出演:くるり
岸田繁 佐藤征史 森信行
音楽:くるり
主題歌:くるり「In Your Life」
監督:佐渡岳利
プロデューサー:飯田雅裕
【公式サイト】
https://qurulinoeiga.jp/
「感覚は道標」発売記念ツアー「ハードにキマる!つやなし無造作ハッピージェル」
【愛知公演】
▼12月16日(土) Zepp Nagoya
【大阪公演】
▼12月17日(日) Zepp Osaka Bayside
【東京公演】
▼12月22日(金)・23日(土) Zepp Diver City