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“恐怖の村”シリーズの清水崇監督作で
なにわ男子の西畑大吾がホラー映画初主演!
映画『忌怪島/きかいじま』清水崇監督インタビュー

『犬鳴村』など“恐怖の村”シリーズの清水崇が新たに手掛けたホラー映画『忌怪島/きかいじま』が、6月16日(金)より、T・ジョイ梅田ほか全国にて公開される。非科学的なことは信じない天才的な脳科学者が、ある島で連続する不可解な死とその謎に挑む姿を描く。

なにわ男子の西畑大吾がホラー映画初主演を果たすほか、山本美月、生駒里奈、平岡祐太らが不審死の謎に迫るメンバーとして共演し、『かがみの孤城』での好演も光る當真あみが、笹野高史とともに“イマジョ”の逸話が残る島の住人を演じている。そんな本作の公開を前に、清水崇監督が作品について語った。

──舞台を「島」にすることやVRとホラーを融合するアイデアはどこから生まれたのでしょうか。

単純に村に飽きて、そろそろ違う領域にいきたいな、と(笑)。『犬鳴村』からご一緒していたプロデューサーの紀伊さんと、村シリーズを毎年ひとつ作って三部作揃ったので、「次は「島」かな?」という話はしていたんです。村シリーズは村の因習などがベースになっていたこともあって、どよーんとしていたので、島はちょっとポップにしようかと。VRや脳科学は、元々僕がやってみたいと思っていた要素のひとつでした。

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──西畑さんが主演に決まった経緯は?

この映画の製作が決まって、早い段階で紀伊さんから「なにわ男子の西畑くんどう思う?」と提案があったんです。僕はアイドルにすごく疎いんですが、たまたま、その数ヶ月前に西畑くんとは「モニタリング」というバラエティ番組の心霊ドッキリでご一緒していて。

──本作の前にそんな縁があったんですね。

ドッキリが見事に成功して、タネ明かしの時に僕がプロデュースした仕掛けだと明かしたら西畑くんが「何やってるんですか!? ちゃんとした映画撮って僕も映画に出してください」と。それはもちろん、リップサービスだったと思いますが、僕も「機会があったら是非」と軽口をたたいていたんです。僕も西畑くんもまさかこんなにすぐ映画で一緒になるとは思わなくて、最初はお互いにびっくりしました(笑)。

──本作に登場する"イマジョ"の話はどのように作っていかれたのでしょうか。

いろいろな島にまつわる都市伝説や噂を調べていく中で、奄美大島の中でも一部の地域で語られている"イマジョ"にたどり着きました。"イマジョ"の話は今でもその地域では高齢者の方たちからすると口にしてはいけないレベルの話らしいんです。劇中で流れる"イマジョ"の歌も、地元の作曲家にOKをもらったんですが、いざ作曲してもらおうと思ったら、家族から「縁起でもない。そんな仕事受けちゃ駄目だ」と言われた、と断られてしまって。結局、劇伴をやってもらっている山下さんにお願いして、方言に置き換えて作りました。

劇中の島は架空の島ですし(冒頭のフェリーシーンで"境島(さかいじま)"と言ってます)、イマジョの在り様や過去もかなり映画用にアレンジしてます。

──実際に島へ行ってロケハンされたのでしょうか。

下見でいろんな島に行きました。撮影は主に奄美大島ですが、架空の島の設定で、いろんな島の要素を入れています。

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──ロケハンに行かれた中から生まれたことはあったのでしょうか。

たくさんありますね。ユタさんの家は海に面した海岸沿いにあるんです。ユタさん(シャーマンとも言われる民間霊媒師)は必ず玄関の前に鳥居を立てているので、海からも通り沿いからも鳥居が見えて。それは、冒頭の西畑くん演じる友彦が島の様子を見かけたシーンに活かしています。島の中は民家が密集しているのに、日中に出かけたら不思議と誰とも出くわさない。人が住んでいるのかな? と思うぐらいなのに、生活臭はあって。それも、友彦と山本美月さん演じる環が迷うシーンに反映しています。それとVRの中の、アバターの人間さえいなければ誰もいない世界を掛け合わせました。

──確かに、島の中で友彦と環が迷うシーンは、VRの世界ともとることができました。

最初に友彦がVRのゴーグルを付けているシーンが出てきて、それを外したらフェリーの中だから、お客さんも「もしかしたらまだ騙されてるんじゃない?」と冒頭にミスリードを仕掛けています(笑)。物語の入口で2回ぐらいひっくり返していますし、ちょっと混乱させたい思いはありました。

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──私も疑ってました。

実際、科学者の中には、僕たちが現実だと思っている世界は誰かひとりの頭の中だったり、全く別に作られた記憶だったりしない可能性はないと説いている方もいます。そういう発想は昔からあるんですよね。本作では...今で言うと、それがVRの仮想空間なんだろうなと解釈を置き換えました。実は、『マトリックス』みたいに機械に繋がれている方が幸せかもしれない。結局、脳がどう捉えているかだけ...と考えればそうですよね。

──『犬鳴村』以降、ホラー映画がジャンル映画としてだけではなく確かな市民権を得たように感じています。

それって実は微妙で。僕はホラーをバカにしやがって、下に見やがってとずっと思ってきましたが、その方が健康的なんじゃないかと(笑)。どこかで差別や偏見を持たれているぐらいの方が、かつてのホラー映画には近づきがたい怖さがあったと思うんです。市民権を得過ぎて、誰にでも受け入れられるようになったらなったで、入口で構える怖さがなくなっちゃうんです。

──確かに、そうかもしれません...。

「決してひとりで観ないでください」というキャッチコピーで『サスペリア』が上映されていたように、こんなのひとりで観に行ったらとんでもないことになっちゃうんじゃないかとか、こんな恐ろし気な映画を観たら自分の人生が変わっちゃうんじゃないかとか。まだ情報が今みたいに蔓延していなくて、どうせ作りものでしょという感覚も薄かった20年前の方が観る前から怖かったんですよね。

──めちゃくちゃ怖かったです。

ところが、『リング』や『呪怨』が流行って、海外の映画も山ほど入ってくるようになると、結局CGでしょ、作りものでしょと子どもですらわかるようになってきて。『ゾンビ』なんて、とてもじゃないけど恐ろしかった。人が人を食べる映画なんて観ちゃ駄目とか、そんなの作る人なんてという傾向が当時は社会的にもあったんです。でも、今はゲームや可愛いアニメにもなって、ゾンビ、ゾンビって子どもが真似したりはしゃいだりしてますよね。

──そうですね。

そうなってくると、元々の怖さがなくなっちゃうというか。そこは微妙だと感じています。この映画を俳優さんたちが告知してくださるのは嬉しいんですが、この前"イマジョ"がランウェイを歩いているのを見て。ポップになって知ってもらって映画に繋がるのは嬉しいんですが、市民権を得過ぎるとホラー自体が怖くなくなっていくんです。そこには作る側としてのジレンマがありますね。

──ホラー映画が人気を得るのは嬉しいけれど、怖くなくなっていくのは確かにジレンマですね。

ただ、おっしゃっていただいたように、ホラーが一部のマニアが観るものではなくなってきているのは嬉しいです。だからこそ、ジャニーズの西畑くんも出てくれましたし、広がってほしいとは思っています。ただ、ジレンマは毎作毎に抱えていますね。

──海外のホラー映画も、ヒットするとすぐに続編が作られるなど、世界的にホラー映画が流行っているようにも感じます。

たぶん、ホラーがなくなることはないと思います。ラブストーリーがなくならないのと同じで。僕からすると、恋愛ものの方がよく飽きもせず、キラキラ爽やかで、ちょっと泣けて、みたいなのを作るよなって思います(笑)。困ったらすぐ難病をネタにするし...そっちの方が僕には怖いです。病気で感動を誘うって考えが。

ホラーが苦手な人からすると、僕みたいなのはなんでずっとホラーを作ってられるの? と思われてるだろうけど(笑)。安全圏で怖さまでもキャーキャー言って楽しめるのは人間の特権で、他の動物には一切ないですから。わざわざ怖がって楽しむなんて。そういう意味では相当贅沢な分野だと思います。

──確かに、ホラー映画はわざわざ怖いものを観て楽しんでるとも言えますね。

アクションや怖さって、笑いと違って言葉を超えて世界に伝わりやすいんです。多少、物語や流れがわからなくても、怖さやアクションは観ていられるというか、全く言葉がわからない映画でも、きっとこういうことだと想像しながら観ていられるんです。

──確かに、ホラー映画には言葉がわからなくても伝わるものがあると思います。そう考えると、具体的に言葉では表現されていませんが、本作の閉鎖的な場所での因習にまつわる描写には、閉鎖的な社会への批判も込められているように思います。

あるんでしょうね、たぶん。日本人は基本的に真面目だから、暗いんです。さすがに大人になってそうでもなくなりましたが、僕も根っこには暗くてうじうじした部分があると思うし、周りの人を見ていても、欧米人に比べると根が暗い人が多いと感じます。特に日本人は、自分の世界に入ってしまうと自分で蓋をしてしまうので。それが謙虚さとして現れるなど、いいところでもありますが、その民族性が外に出づらい要因だと思っています。

──なるほど。

読めもしない文字の映画のエンドクレジットを最後まで真面目に観てるのって日本人くらいですよ(笑)。僕は映画好きだから、言葉がわからなくても余韻に浸りたいですし、エンドロールの後にエピローグや監督の思いがあるんじゃないかと思って観ますが、本当につまらなかったらエンドロールの途中で出ます。だからこそ、そう思われないようにしたいと思って作っています(笑)。

──ホラー映画の中には結局、ただの怪奇現象でした、みたいな終わり方のものもあります。

それだけじゃ見ごたえが...。『13日の金曜日』も、過去にある出来事があって、それにまつわる母親の思いがあって、そこで生まれたジェイソンが...という物語はありますが、1作目だけですよね(笑)。Part2以降はただ人が死んでいくだけ。でも、刺激が欲しい若者にはあれでいいんですよ。SEXと殺人とショックが続くのがポップだし、年頃の子が求める刺激に応えているんだと思います。僕もあれを入口にしてホラーを観られるようになったので。

──そういうホラー映画もあっていい、と。

でも、20歳を過ぎるとただ若者が死んでいくだけじゃ納得できなくなって、30歳、40歳、50歳になると心情を描いてほしい、観たいと思うようになりますよね。それは僕も年とともに変わっていると思います。若い頃は、原因なんかそっちのけでただ怖いことが起こる映画があってもいいんじゃないかと思ってたこともありました。でも今は怖いだけで作れと言われても、それでいいの? と大人になってしまっている自分がいます。

──監督の作品は、怖いのはもちろんですが、こんな風にも考えられる、あんな風にも考えられるというように物事が展開していきます。

僕も年をとってきてるのはあるかもしれません。ひとつの面だけで人や社会を見ることはできませんし。30歳を過ぎると、誰でも「結局一番怖いのは人間だよね」と言いがちなんですよ。それっぽいし(笑)。自分は大人で、物事をわかっていると誇示するように。でも僕は、それはそれでつまらなくて、苦手な言葉です。

──それはそれでつまらないというのは?

結局、人間が怖いのはもちろんなんですが、その上での恨みつらみ、思いだけが突っ走っていくというのが、超常現象や心霊現象に繋がっていくと思うので。どっちも切り離せないものなので、ただ現実的な側面から「結局一番怖いのは人間だよね」というひと言で片づける大人って、なんて浅はかでつまらないんだろう...そう上から目線で言いたいだけでは? と思ってしまうんです。そういうプロデューサーをいっぱい見てきてるんで。なら、ホラー作りたいとか思ってないんじゃ? って(笑)。

──監督はそのひと言をよく言われるんですね(笑)。

みんな言いがちなんです。僕が子どもの頃に、大人たちがすごく怖がっていた『犬神家の一族』を観たんです。あれは結局人間の仕業で、名探偵と言われている金田一さんは犯人が誰なのかわかっていて、その話を皆の前でくどくどしている間に、犯人が服毒自殺してしまう。彼は「しまったぁ!」って言うんですけど、そんなの名探偵でも何でもないですよね。

──確かに。

皆の前で偉そうに自分の推理を披露する前に、警察に言って自殺させないようにして、こっそり捕まえるのが名探偵ですから。結局、全部人間の仕業だったというオチが、なんてつまらないと思っちゃったんです。子どもの時に。むしろ、大人より冷静に観てしまって。そんな風にひねくれた子どもだったので、大人になってから、全部人間の仕業でしたで終わるのは、サスペンスとしてはいいですが、ホラー映画としてはちょっと怖さや面白味に欠けるし、それだけじゃない不可思議さを残したいと思っています。

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──人間以上に怖い、人間の思いのこもった不可思議な出来事がある、と。

あると思いますね。それは怖いことじゃなくても、本当に偶然、僕と西畑くんがバラエティ番組で知り合って、半年後に主演俳優と監督として映画を作るとか。それも何かの引き合わせかもしれない。運命的な縁は今まで何度もありますし、皆さんあると思うんです。偶然にしてはおかしいぐらいよく会うとか。それが恋愛になったり仕事になったり。そういうことを普段から感知して、ポジティブに自分の運に引き込んでいることも超常現象的な、人間が解明しきれていないことだと思います。

──ちなみに、次は考えてらっしゃるのでしょうか。島のシリーズ化は?

そろそろ考えておいてほしいとは言われています(笑)。ただ、シリーズにするとは誰も言ってないので。それは僕から東映さんにお願いしたんです。発表する時に勝手にシリーズって書かないでくださいねって。他の監督にも振るんだったらいいけど、それで僕の数年が固定されるので。次の島、次の島って(笑)。続くのは有難いことなんですけど、村シリーズの年に1本は結構きつかったので。原作ものだったら別ですが、全部オリジナルですから。だから、ちょっとわからないですね。

──そうなんですね。

そこは、この作品が公開されて3日もすれば具体的になってくるんじゃないでしょうか(笑)。それが一番怖い大人の世界ですよ(笑)。数字次第で言ってることが変わるなんて、僕にとってはそれが一番怖い人間の姿です(笑)。そんなプレッシャーにも打ち勝ちながら、都度都度上回った面白さで打ち返していきたいとは思っています!!

取材・文/華崎陽子




(2023年6月14日更新)


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Movie Data




(C) 2023「忌怪島/きかいじま」製作委員会

『忌怪島/きかいじま』

▼6月16日(金)より、T・ジョイ梅田ほか全国にて公開
出演:西畑大吾(なにわ男子)
生駒里奈、平岡祐太、水石亜飛夢、川添野愛
大場泰正、祷キララ、吉田妙子、大谷凛香・笹野高史
當真あみ、なだぎ武、伊藤歩 / 山本美月
脚本:いながききよたか、清水崇
監督:清水崇

【公式サイト】
https://kikaijima-movie2023.jp/

【ぴあアプリ】
https://lp.p.pia.jp/event/movie/262555/index.html


Profile

清水崇

しみず・たかし●1972年7月27日、群馬県生まれ。大学で演劇を専攻し、演出家・大橋也寸、脚本家・石堂淑朗に師事。同郷の小栗康平監督作『眠る男』(1996)の見習いスタッフで業界入り。小道具、助監督を経て、自主制作した3分間の映像を機に黒沢清,高橋洋監督の推薦を受け、1998年、関西テレビの短編枠で商業デビュー。東映Vシネマで原案・脚本・監督した『呪怨』シリーズ(99)が口コミで話題になり、劇場版(2001/02)を経て、サム・ライミ監督によるプロデュースの元、USリメイク版“The Grudge”:邦題『THE JUON/呪怨』(04)でハリウッドデビュー。日本人初の全米興行成績№1を獲得。続く“The Grudge 2”:邦題『呪怨パンデミック』(06)も全米№1に。その他『輪廻』(05)、『魔女の宅急便』(14)などホラーやスリラーを中心に、ファンタジーやコメディ、ミステリー、SFなどに取り組む。また、『キョンシー』(13/香港)、『バイオハザード:ヴェンデッタ』(17)など国内外でプロデューサーも兼任。理論物理学の最先端“ひも理論”にエンタメ要素を用いた3Dドームによる科学映画『9次元からきた男』(16)が現在も日本科学未来館にて上映中。14人の監督と組んで短編50作の総合監修を務めた、スマホ専用のタテ型ホラーコンテンツ「スマホラー」なども手掛けた。近作に『ホムンクルス』(21)、〈恐怖の村〉シリーズの『犬鳴村』(20)、『樹海村』(21)、『牛首村』(22)がある。『ミンナのウタ』が8月11日(金)に公開予定。