インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > 「初めて脚本を読んだ時は泣き崩れてしまいました」(水田) 「自分のことを書いているんじゃないかと思った」(大原) 『映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)』 水田わさび&大原めぐみインタビュー


「初めて脚本を読んだ時は泣き崩れてしまいました」(水田)
「自分のことを書いているんじゃないかと思った」(大原)
『映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)』
水田わさび&大原めぐみインタビュー

『映画ドラえもん』のシリーズ第42弾『映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)』(原作:藤子・F・不二雄)が、TOHOシネマズ梅田ほか全国にて上映中。誰もがパーフェクトになれる楽園に隠された謎を、ドラえもんたちが解き明かしていく様を描く。『コンフィデンスマンJP』シリーズを手掛けた古沢良太が脚本を、TVアニメ「ドラえもん」をはじめ、多くの作品の演出を手がけている堂山卓見が監督を務め、声の出演は水田わさび、大原めぐみ、かかずゆみ、木村昴、関智一の他、物語の鍵となるゲストキャラクターのソーニャをKing & Princeの永瀬廉が担当している。

謎の三日月型の島が空に浮かんでいるのを見つけたのび太は、「あれこそ僕がさがしていたユートピアだ!」と言い張り、ドラえもんたちと一緒にひみつ道具の飛行船タイムツェッペリンで探しに行くことに。そこは誰もがパーフェクトになれる夢のような楽園“パラダピア”だった…。パーフェクトネコ型ロボット・ソーニャと出会い仲良くなるが、この楽園には大きな秘密が隠されていた…。

そんな本作の公開に合わせ、ドラえもんの声優を務める水田わさびとのび太の声優を務める大原めぐみが作品について語った。

──古沢良太さんらしい、伏線をきちんと回収する物語でした。脚本を初めて読んだ時はどのように感じられましたか?

水田わさび(以下、水田):私は、脚本を読みながら泣き崩れてしまったところをスタッフさんに見られてしまって。脚本は人の目に触れてはいけないものだから家や電車の中では読めないので、仕事の空き時間に読んでしまったんです。スタッフさんから「わさびさん収録できます? 大丈夫ですか?」と心配されるくらいの状態になりました。

実はつい最近、古沢さんご本人から「水田さんの、ちょっとおっちょこちょいで、みんなとバタバタしているドラえもんのお芝居だから今回の本が書けたんです」と言ってもらって。その時はまた泣いてしまいました。そもそも古沢さんは、『ALWAYS 三丁目の夕日』で大好きになった脚本家さんなので、脚本を開いてすぐに「古沢さんだ!」と。読む前から期待していました。

大原めぐみ(以下、大原):それはすごいですね。

水田:私が演じるドラえもんはどちらかというと、一緒にバタバタしている感じを意識して演じてきたので、その言葉を聞いた時は感動しました。「演技を見てこの本を書いたんです」と言われたのは初めてだったので、めっちゃ嬉しかったです。

大原:初耳でした。びっくりしました。役者冥利につきますね。

──大原さんは脚本を読んでどのように感じられましたか?

大原:自分のことを書いているんじゃないかと思うくらいでした。元々、私はのび太君に性格が似ていて。劣等感もすごくあるし、完璧なものを求める気持ちも、それに対して憧れる気持ちもすごくあったので、読んでいる最中にたくさん心が動きました。

──脚本家さんによってキャラクターの解釈が違うことも劇場版の楽しみのひとつですよね。

水田:今回は、まさにF先生(藤子・F・不二雄)をリスペクトしたシナリオだと思いました。『ドラえもん』という作品を通して自分の世界観を描こうとしたというよりは、F先生と『ドラえもん』の世界をリスペクトしているからこそ、生まれた作品なんじゃないかと思いました。それに加えて、ゲストキャラを同じ猫型ロボットにすることによって、ドラえもんのアイデンティティが証明されたように感じました。

doraeiga2023_sub3.jpg

──大原さんはソーニャとドラえもんの描き方についてはどのように感じられましたか?

大原:完璧なソーニャがいて、ちょっとドジなところがあるドラえもんがいて、対比がしっかり描かれているなと感じました。今回の作品では、ドラえもんがのび太君と同じような立ち位置になっていると思いました。ロボットの世界では、ドラえもんにもちょっとのび太君的な要素があるんですよね。

──本作の中盤でソーニャが言う「お互い相手をダメだと言っているのに、まるでそのダメなところが好きなように見える」という台詞には思わず涙がこぼれました。

水田:ドラえもんとのび太君の姿を見てソーニャが徐々にふたりに心を開いていく様子は、めっちゃうまいこと描いているなと思いました。身内を褒めているみたいですが(笑)。

大原:あのソーニャの台詞は確信を突いていますよね。ソーニャが客観的に見たものが真実なんです。ダメなところもお互い受け入れあって、全部受け止めた上でのドラえもんとのび太君の関係性であることを、言葉で表現しているのがすごいと思います。私もあのシーンはグッときました。

doraeiga2023_sub.jpg

──ソーニャを演じた永瀬廉さんの声はソーニャのイメージにぴったりでした。

水田:ほら、やっぱり。

大原:聡明な感じがぴったりですよね。台本を読んでイメージしたまんまの声でした。

水田:どうやってキャスティングしているんだろう。今度からこっそり会議を覗こうかな(笑)。どうやって決めてるんだろう、この神キャスティング。永瀬さんの声は本当にソーニャにぴったりだったと思います。

──映画ならではのひみつ道具も楽しみのひとつだと思いますが、今回の飛行服は本当に欲しい! と思いました。

大原:これは欲しいですよね。

水田:飛行服も絶妙な色のバランスで。あれだけで、これはスネ夫、これはのび太くん、これはしずかちゃん、これはジャイアンって、4人のキャラクターがちゃんとわかるってすごいと思いました。

doraeiga2023_sub2.jpg

──ドラえもんが飛行服を着るシーンも面白かったですね。

大原:可愛いですよね。

水田:何年かぶりに誰かの結婚式に行った時に、お父さんの服が閉まらなくて開けたまま行くみたいな(笑)。そういう設定ですよね。

大原:(笑)。めっちゃ面白い。まさにその通り!

──完璧じゃないところが可愛いんですよね。

水田:今回のタイムツェッペリンもそうですが、完璧じゃないところがいいんです。完璧だったら映画は15分ぐらいで終わっちゃうから(笑)。そういうところも楽しんでもらいたいです。

──確かにそうですね(笑)。

水田:ひみつ道具を完璧に使いこなしたら、ユートピアもあっさり見つかってますから(笑)。

──タイム新聞もすごいと思いました。何年かしたら実現しないかな?と思ったり。

水田:あの時だけ、急にふたりが賢く見えません?(笑)。

大原:新聞読むの!? って言いたくなりますよね。

水田:映画館のスクリーンだったら、難しい漢字を読んでいるのもわかると思います。そういう細かいところにスタッフさんのこだわりが込められているので。私たちも2回目観た時に初めて、スタッフさんの遊び心を確認できるんです。ここでこの作品とリンクさせていたのか! とか、ここで遊んでたのか! と。ドラえもんが道具を探す時に出していた道具の中にあれがあった! とか。そういうことを大きなスクリーンで確認するのも劇場版の楽しみのひとつです。

──コロナ禍によって、ずっと春に公開されていたドラえもんの映画が夏に公開されたり、1年あいてしまったりと変化がありましたが、おふたりはどのように感じてらっしゃいましたか?

水田:めっちゃ辛かったです。映画が公開されることって普通じゃないんだと思いました。映画が公開されて、皆さんに観ていただくことってこんなに特別なことだったんだと。めっちゃ悔しかったです。

──年に1回映画が公開されるというのは、やはり特別なことですよね。

大原:そうですね。こういうことがあったからこそ有難みを感じられました。そういう気づきを与えてもらったのは、コロナがあったからこそだと思います。映画を公開できることへの感謝の想いはより深くなりました。

──劇場版というのはおふたりにとってどんな存在なのでしょうか?

大原:テレビアニメーションだと10分ちょっとのものを2本、30分の間に放送しているので、起承転結の切り替えが早いんです。でも、映画は100分ちょっとあるので、心の動きやキャラクターの性格も劇場だからこそ、こんなところもあるんだ! とより掘り下げたものが垣間見えると思います。

水田:日本にアニメ作品がたくさんある中でも、映画を毎年1本公開させてもらえる作品はそうないですから。こんなに有難いことはないです。年に1回大冒険をさせてもらえて、ゲストを迎え入れることができて、こんな有難いことはないので、自然にテンションが上がってしまいます。

──本作では、のび太のぶれない個性が物語の鍵にもなっていました。

大原: 確かに、のび太君はぶれないという最強の個性の持ち主ですから(笑)。ぶれる時もありますが、結局変わらないというところに落ち着くんです(笑)。ちょっとだけ頑張れるエネルギーがあるのがのび太君の持ち味だと思います。

水田:感心してましたもんね、三賢人たちが(笑)。

大原:(のび太君だけ)全然変わらないから。

水田:変わらないことが才能かのように崇められていましたもんね。

大原:これは只者じゃないって(笑)。

水田:やっぱりのび太君すごいよ。

──のび太君がすごいのも、ある意味映画ならではですよね(笑)。

水田:映画ならではと言うと、瞳の色や形にもすごくこだわっています。顔の描写も、大きなスクリーンだからこそ気づくことがたくさんあると思います。目の奥の奥まで、細かい描写とこだわりを見てほしいです。

取材・文/華崎陽子




(2023年3月 7日更新)


Check

Movie Data



(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2023

『映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)』

▼TOHOシネマズ梅田ほか全国にて上映中
声の出演:ドラえもん:水田わさび のび太:大原めぐみ
しずか:かかずゆみ ジャイアン:木村昴 スネ夫:関智一
マリンバ:井上麻里奈 ハンナ:水瀬いのり
未来デパートの配達員:山里亮太(南海キャンディーズ) パラダピアの先生:藤本美貴
ソーニャ:永瀬廉(King & Prince)
原作:藤子・F・不二雄
監督:堂山卓見
脚本:古沢良太
主題歌:NiziU「Paradise」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
原作:藤子・F・不二雄
監督:堂山卓見
脚本:古沢良太
主題歌:NiziU「Paradise」(ソニー・ミュージックレーベルズ)

【公式サイト】
https://doraeiga.com/2023/

【ぴあアプリ】
https://lp.p.pia.jp/event/movie/245711/index.html


Profile

水田わさび

みずた・わさび●1974年、三重県生まれ。劇団すごろくに所属し声優を志す。以来数多くのテレビアニメに声優として参加し、2005年から“ドラえもん”の声優を務める。チームドラえもんの座長として、持ち前の“元気”で4人を引っ張っていく。


大原めぐみ

おおはら・めぐみ●1975年、東京都生まれ。声優デビュー作でのび太役という大役をつかむ。のび太の優しくてカッコいい側面と、勇気を出して成長していく様を丁寧に声で表現し、欠かすことができない、誰もが認める存在。