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「こういう日々を乗り越えられたから今があると
改めて感じられました」漠然とした不安が蔓延するコロナ禍で
生きる世代の異なる人々を描く群像劇
映画『散歩時間~その日を待ちながら~』大友花恋インタビュー

新型コロナウイルスの感染拡大で不安が漠然と広がり、制限されることも多かった2020年を舞台に、変化や制限の中で生きる人々を描いた群像劇『散歩時間~その日を待ちながら~』が12月9日(金)より、シネマート心斎橋、10日(土)より、十三・第七藝術劇場、16日(金)より、京都シネマにて公開される。しし座流星群がピークを迎える2020年の11月中旬、10代から40代の人々が過ごす一夜を描く。

『名前』の戸田彬弘が監督を務め、『あゝ、荒野』の前原滉、『君の膵臓をたべたい』の大友花恋が新婚夫婦を、柳ゆり菜、中島歩、篠田諒が夫婦を祝うために集まった元バイト仲間を演じている。そんな本作の公開を前に、結婚したばかりなのに、夫の振る舞いに戸惑いを抱えるゆかりを演じた大友花恋が作品について語った。

──まずは、脚本を読んだ時の印象を教えていただけますでしょうか。

実は、初めて読ませていただいたのはオーディションの前で。誰を演じることになるのかもわからないまま読み進めていました。

──それは、なかなかないことですよね? 大友さんが、柳ゆり菜さん演じる真紀子やめがねさん演じるちひろを演じていた可能性もあった、と。

そうです。登場人物の中でも、私はゆかりに一番近しいものを感じていたので、ゆかり役を演じることになって嬉しかったです。

──ゆかりに近しいものを感じたというのは、たとえばどういう部分でしょうか?

私も自己主張が得意ではなく、受け身になってしまうことが多いので、ゆかりのそういう感覚は理解できるなと思いました。

──ゆかりと大友さんは同じぐらいの年齢だと思いますが、結婚生活はどのように思い描いて演じられましたか?

結婚に対するイメージは沸きにくかったのですが、亮介役の前原(滉)さんとご一緒するのは3回目で。初めてご一緒したドラマでは、私はまだ高校生役で前原さんはスーツ姿と全く世代が違う役でした。次が「あなたの番です」でマンションの管理人役と住民役でした。結婚生活を具体的に考えられなくても、前原さんとは共演経験があり、安心感があったので、夫婦役を演じるのにハードルが高いとは感じませんでした。

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──夫婦役にはすんなり入れたんですね。

前原さんとは役のことや自分自身の話もたくさんしました。この映画の本読みで最初に会った時に「遂に結婚だね(笑)」と言ってくださったので、「遂に夫婦役ですね」と言って盛り上がりました。

──3回目ともなると前原さんとの共演には縁を感じますね。

感慨深いです。私はどうしてもゆかり目線で見てしまうので、台本を読んでいると、亮介はなんでゆかりの気持ちをわかってくれないんだろう? と思ってしまいましたが、前原さんが亮介を演じると優しさや軽さみたいなものが感じられて、さすがだな、頼りになるなと思いながらお芝居していました。

──前原さんには嫌味な感じがないですよね。

亮介は本当にいい人なのに、どこか惜しいという絶妙な感じは、前原さんだからこそ出せたのだと思います。

──絶妙な残念感がありますよね、亮介には(笑)。

そうなんです。ゆかりのことを思ってくれているのはわかるんだけど...という絶妙さがありますよね。

──その前原さん演じる亮介と参加するパーティーシーンの撮影はいかがでしたか?

パーティーのシーンは、それぞれの役が演じている人それぞれにどこか少し重なる部分があって。私自身も、私だけが皆さんと少し年齢が離れていたこともあって、すぐに皆さんのテンションやノリに混ざりにいけない、ゆかりと同じような感覚でした。人数も多い上に食事のシーンもあって、もちろん緊張も感じていましたが、その緊張も含めてあの空気感にはぴったり合っていたように思います。

──人と会うのも久しぶりな上に、ゆかりにとっては初対面の人に結婚を祝ってもらうパーティーに参加するという、なかなかハードルの高いシチュエーションでした。

大切な人の知り合いとの対面だったので、すごく緊張するだろうなと思いました。もしかしたら長い付き合いになるかもしれないし、大切な人の大切な人だからこそ、自分も大切にしたいし嫌われたくないというゆかりの思いはすごくわかりました。完成した作品を観て、マスクを取る瞬間のゆかりの表情があまりにも固い笑顔だったので、私自身も本当に緊張していたんだなと思いました。

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──パーティーのシーンは台本がありながらも、台詞に対する反応などはアドリブだったとお聞きしました。

段取りの時に、台本通りになぞって進めながらも、監督が「ここでこう言ってみる?」と提案してくださって、「私たちはこう返そうか」とその場その場で話し合いながら、雰囲気を含めて作っていきました。

──あのパーティーのシーンは自然さが出ないとゆとりが感じられないですもんね。

自由にできる分、ゆとりがあって、自分たちらしさも出すことができましたが、その分役に対する責任が重くなるので、油断しないようにしていました。ほぼ順番通りに撮影できたので、最初の皆で集まるシーンから私たちに委ねてもらえたことは、より役と自分自身を近づけられるきっかけになったと思います。

──撮影場所になっていた、懐かしさを感じるような民家は、無機質な感じがなく、人の息遣いを感じられる場所でしたが、それもひと役買っていたのではないでしょうか?

すごく素敵なお家で、5日間ぐらいでまとめて撮影しました。皆で同じ時間を過ごして、夜になるとこの作品のように本当に星が綺麗に見えるので、毎日星空を見上げながら今日もお疲れ様と言って帰っていました。現場へ向かう間にゆかりになって、帰り道は自分に戻っていく時間になったので、少し遠く離れたあのお家はすごくいい雰囲気でした。

──本作はコロナ禍を舞台にしていますが、大友さん自身もコロナ禍でどのようなことを考えてらっしゃいましたか?

一度全てが止まってしまったので、2ヶ月ぐらいずっと家の中で自分自身と向き合う時間がありました。ちょうど二十歳になったばかりで、これからもっと新しい挑戦ができると思っていたタイミングで全てがストップしたので、コロナがなかったらもっと自由にいろんなお仕事ができていたかもしれないし、いろんな人と会えていたかもしれないといろいろ考えさせられる期間でした。

──すごくよくわかります。

でも、この作品の撮影中も完成した作品を観た時も感じましたが、こういう日々を乗り越えられたから今があるんだと改めて思いました。そう思うと、自分を見つめ直すいい時間だったのだと思えるようになりました。

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──大友さんはパーティーシーンの共演者以外とはお会いするタイミングはなかったと思いますが、完成した作品で他のエピソードを観てどのように感じられましたか?

中学生のシーンは見ているだけでキュンとしてしまって、甘酸っぱくて素敵なエピソードでした。プールに忍び込んでふたりきりで星を見るなんて、とてもロマンチックで。いろいろなイベントごとが中止になってしまった学生さんにきっと届くんじゃないかと思いました。タクシーのお話では、最初は少し嫌な感じの乗客として乗ってきた男性から「俺の店つぶれちゃったんだよね」という言葉を聞くことによって、観ている側は人それぞれに様々な事情があることに気づくんですよね。

──あのタクシーの乗客の話は考えさせられましたね。

私たちは、その人が見せてくれている一面しか知らないけれど、誰もが悩みを抱えながら自分の人生を生きているのだと、あのエピソードから感じました。

──乗客を演じてらっしゃった池田良さんは、また絶妙なさじ加減の演技でしたね。

「俺の店つぶれちゃったんだよね」というあのひと言だけで、この人の背中を温かくしてあげたいと思わせてくれますよね。今回、劇中の登場人物のこぼれるようなひと言がすとんとくる瞬間がたくさんありました。それは、皆さんのお芝居の力もあるし、脚本の力もあるし、監督の演出の力もあって、全てが合わさってそうなっているのだと思いますが、ひと言ひと言が誰かの心を軽くしてくれたらいいな、と思いました。

──コロナ禍を舞台にしていますが、全く重くなることなく軽やかな物語になっているように感じました。監督からはどのようなお話があったのでしょうか?

本読みで集まった時、監督が「コロナがあって大変だったね、という話にはしたくない。あの期間があったから今の私たちがいると思ってもらえる作品にしたい」と最初におっしゃっていました。それが全てだと思ったので、その場で台本に書き入れました。

──個人的には、それぞれが違う場所で空を見上げているシーンはすごくじーんときましたが、大友さんが心に残っているシーンはどこでしょうか?

空を見上げるシーンは、撮影中も完成した作品を観た時も、こういう素敵なシーンを撮ることができたので、この先も全部なんとかなるかもしれないな、と亮介のように楽観的に思うことができました。私にとっての最後の場面が空を見上げるシーンだったのですが、日の高いうちにリハーサルをして、日が落ちたらすぐに撮影という段取りだったので、撮影チームの皆さんと綺麗な夕陽を見ることができました。

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──そうなんですね。

亮介とゆかりはしし座流星群を見上げていますが、私と前原さんは綺麗な夕陽をスタッフの皆さんと見ることができて、この作品はきっとうまくいくな、これから先もうまくいくな、とあの時感じました。

取材・文/華崎陽子




(2022年12月 7日更新)


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Movie Data



(C) 2022「散歩時間~その日を待ちながら~」製作委員会

『散歩時間~その日を待ちながら~』

▼12月9日(金)より、シネマート心斎橋
▼12月10日(土)より、十三・第七藝術劇場
▼12月16日(金)より、京都シネマ
出演:前原滉、大友花恋
柳ゆり菜、中島歩、篠田諒、めがね、山時聡真、佐々木悠華、アベラヒデノブ / 高橋努
脚本:ガク カワサキ
原案・監督・編集:戸田彬弘

【公式サイト】
https://sanpojikan.com/

【ぴあアプリ】
https://lp.p.pia.jp/event/movie/250500/index.html


Profile

大友花恋

おおとも・かれん●1999年10月9日生まれ、群馬県出身。2012年に女優デビュー。バラエティー番組や雑誌「Seventeen」専属モデルを歴代最長で務めるなど、活動は多岐にわたる。近年の主な出演作品は、映画『君の膵臓をたべたい』(17/月川翔)、ドラマ「チア☆ダン」「あなたの番です」「新米姉妹のふたりごはん」「初情事まであと1時間」第8話など。