「主演を任せられるだけでなく、
主演ではなくても爪痕を残せるような俳優になりたい」
『胸が鳴るのは君のせい』で映画初主演を務めた
美 少年/ジャニーズ Jr.のメンバー、浮所飛貴インタビュー
「ベツコミ」で連載され、累計発行部数250万部を突破した同名少女コミックを実写映画化した『胸が鳴るのは君のせい』が、6月4日(金)より、梅田ブルク7ほか全国で公開される。クールな転校生・有馬隼人と、彼に思いを寄せる女子高生・篠原つかさの恋模様を描く。
美 少年/ジャニーズ Jr.のメンバー、浮所飛貴が映画初主演を務め、TVドラマなどで活躍する注目の若手女優・白石聖がヒロインを演じている。高校1年の3学期に転校してきたクールな有馬が、予想もしないタイミングで自分だけに優しくしてくれることに胸が高鳴るつかさ。勇気を出して告白するも「いい友だちだと思っている」と振られてしまうが、その後も友だちとして優しく接してくれる有馬への気持ちを諦めきれないつかさと、徐々につかさのことが気になっていく有馬の姿を映し出している。夏の海やお祭り、文化祭など、高校時代のハイライトのような出来事の中で、それぞれの思いが交錯する様を青春映画らしい瑞々しさとともに映し出している。そんな本作の公開を前に、主人公の有馬隼人を演じた浮所飛貴が作品について語った。
――浮所さんにとって本作は映画初主演の作品になりましたが、映画初主演作が『胸が鳴るのは君のせい』だと聞いた時や、脚本を読んだ時はどのように感じましたか?
お話をいただいた時は、すごくワクワクして、頑張ろう、やってやろうという気持ちが強かったです。少女漫画原作のラブストーリーなので、普通だと恥ずかしくなってしまうようなシーンも多かったですが、僕は全く恥じずに、有馬君になりきれていたと思います。きっと有馬君はそういうことを恥ずかしがる人間ではないと思いますし、演技をする上で自分の気持ちの中に恥ずかしいという感情が1 mm でもあったら、それがスクリーンに映ってしまうんじゃないかと考えていたので、自信を持って演じられたと思います。
――映画に出演したいという気持ちは前々からお持ちだったんですか?
演技を始める前から、ずっと映画に出演したいと思っていました。ずっと映画を観る側だったので、映画の世界はとても遠い存在で、偉大なものだと感じていました。いざ映画の主演を務めさせていただいて、ひとつの大きな自分の夢が叶いましたし、自分の人生においてとても重要な出来事になったと思います。浮所の年表の中に確実に刻まれると思います(笑)。
――映画に出たいと思ったきっかけになった映画は?
小さい頃からたくさん映画を観てきましたが、ジャニーズに入ってからは意識的に観ることも多く、平野紫耀くんが出ていた『honey』は特に印象に残っています。本当にかっこよかったですし、あの映画を見て勝手に喧嘩が強くなった気持ちになりましたし、髪型を真似したりするほど、影響されました。赤髪の不良を平野紫耀くんが演じていたんですが、こんなに近い先輩が主演をやっていることがすごく刺激になって、僕もやりたいという気持ちがさらに強くなりました。そもそも僕が平野紫耀君の顔が好きなことが前提としてあるんですが、演じていた役になりきっていましたし、アクションシーンもかっこいいんです。特に、雨がすごく降っている中で、喧嘩で口元が傷だらけになった平野くん演じる主人公に、ヒロインの女の子が蜂の柄の絆創膏を渡してくれるシーンは今でも鮮明に覚えています。
――キャンプや夏の海、花火大会や文化祭など高校時代のハイライトのような出来事がたくさん登場しますが、浮所さんはどのように感じながら演じてらっしゃいましたか?
中学、高校とずっと男子校で過ごしてきたので、この映画に出演させてもらって、こんな華やかな世界があるんだとびっくりしました(笑)。疑似体験させてもらった感覚です。僕の中の同級生の女の子のイメージは、小学校6年生で止まっているので、制服を着ている女の子を間近で見たこともなかったんです。そういう意味でも、キャストも同年代だったので、今回の撮影はとても楽しかったです。本当に高校生活を送っているかのような感覚で毎日撮影現場に行っていましたし、撮影期間はずっと青春していた感覚で、キャストの皆さんともめちゃくちゃ仲良くなりました。有馬君としてなので、自分ではないんですが、青春を感じることができたのは大きな経験になりました。
――浮所さんが演じられた有馬は、クールかと思いきや心優しい面を見せるのに、つかさの告白には「いい友だちだと思っている」と断ってしまいます。彼のキャラクターをどのように捉えて演じられましたか?
有馬君は罪な男ですよね。大切な人のことをちゃんと守ってあげられるところはかっこいいと思いますが、そんな風にしておきながらも、つかさからの告白に対して、「仲の良い友達だと思っている」と言ってしまうのは可哀そうだと思いました。有馬君には、ちょっと鈍感なところがあると思います。振っちゃうのか~とは思いましたが、それも新しいラブストーリーだと思いました。振ってから始まるラブストーリーって、僕が知る限り観たことがなかったので珍しいと思いましたし、そこがこの作品の面白いところだと思います。
――有馬には鈍感なところもあると思いますし、天然と言うか、少し思わせ振りなところもあるように感じました。
少しではなく、めちゃくちゃ思わせ振りだと思っていました(笑)。有馬君はつかさにしかちょっかいをかけないですし、思わせ振りだと思っていました。天然・鈍感という言葉でしか表現できないと思いながらも、そこも有馬君の良さだと感じています。
――本作は、人気コミックの映画化作品ですが、実写化に当たって、特に意識したことはありますか?
とても人気のある原作で、僕の周りでも原作を読んでいましたという声をたくさん聞きましたし、たくさんファンの方がいらっしゃるので、実際に僕が演じるからには、原作のファンの方にもいいなと思ってもらえるような作品にしたいと思っていました。原作の有馬くんに近づけたいと思いましたし、有馬君の中に僕らしさを織り交ぜたいと思いながら演じていました。原作ファンの方達に、有馬君を演じたのが浮所でよかったと言っていただけて、原作も映画もどっちも好きだと言ってもらえるような作品になるといいなと思っていました。
――印象に残っている台詞や印象深いシーンを教えてください。
体育の授業のシーンで、有馬君がつかさに「つかさって名前、俺はいいと思うけど」と言う台詞があるんですが、その一言をさらっと言える有馬君はかっこいいなと思いました。本人に直接、名前を褒めることってなかなかハードルが高いことだと思うんです。それをさらっとこなしてしまう有馬くんも、その台詞もかっこいいなと思いました。機会があったら言ってみようと思います(笑)。男性女性問わずストレートに想いを伝えることや、恥ずかしがらずに相手のことを褒めるのはいいことだと思いますし、有馬君みたいな男を目指して頑張ろうと思います。思い入れのあるシーンは、つかさの髪の毛を束ねてあげるシーンですね。今まで観た映画でも観たことがなかったので、すごく新しいと思いました。あのシーンは原作にはなくて映画オリジナルのシーンなので、壁ドン顎クイの次に流行ってほしいです(笑)。
――本作は恋愛がメインに描かれていますが、浮所さんが考える恋愛の良いところは何だと思いますか?
恋愛は、褒め合うことや、時には傷つけ合うこともありますが、人間がすごく成長できるアクションの一つなんじゃないかと思っています。もし恋愛がこの世界になかったとしたら、好きという感情が生まれないと思うので、その好きという感情から生まれた両思いはすごく素敵だなと思います。彼氏や彼女といったパートナーの存在がいることで、お互いを高め合っていけると思いますし、たまには喧嘩をして傷つくことも、お互い嫉妬することもあると思いますが、そうやっていろんな感情や経験をすることができるのが恋愛だと思うので、恋愛って素敵だなと改めて感じました。
――浮所さん自身は、誰かに嫉妬することはありますか?
僕が恋愛することを妄想すると、嫉妬はする方だと思います。この映画みたいなことが起こったら、僕だったら嫉妬するだろうと思います。自分以外の男性と彼女が食事に行くことにも、きっと「なんで?」と思ってしまうと思います。食事に行くことを止めませんが、心の中では「なんで行っちゃうの?」と思っているんじゃないかな。この映画みたいなことが起こったら爆発してしまうと思います(笑)。それは彼女に怒るのではなく、自分が爆発してしまうと思います。恋愛以外の面で考えると、僕が嫉妬することはほとんどないです。僕は基本的に人と比べるのではなく、比べたり勝負するのはあくまでも自分だと思っているので、誰かの仕事を羨んだりすることも全くありませんし、自分が納得できる自分でいることが大事だと思っているので、常に自分と戦っています。
――今回は、映画初主演にチャレンジされましたが、初めてのことにチャレンジする時はどのようなことを心がけていますか?
構えすぎずに楽しむということは、仕事をする上で心がけていることです。今回の映画は普段のグループ活動とは違って、ひとりで経験させてもらったのですが、ひとりで経験することによって、ドキドキハラハラを感じながらも楽しくできますし、メンバーが一緒の時は安心できるのが良い面だと思いますが、ひとりで映画やドラマ、バラエティなどに出ることが僕にとって刺激的で、まるで高校生がひとりでアメリカに旅に出たような感覚です。ひとりで新しいことに足を踏み入れるということも大好きですね。
――本作の主題歌は美 少年の皆さんが歌ってらっしゃいます。
僕が初主演を務めた映画で、初めて映画の主題歌を担当させて頂いたことがとても嬉しかったです。メンバーも喜んでくれていましたし、メンバーも含めてこの映画が完成したような感覚です。佐藤(龍我)と藤井(直樹)が、まだ映画を観ていない時に、「この曲を初めて聞いた時に、映画の情景が思い浮かんだ。エンドロールが見えた」と言ってくれて、それぐらい映画にぴったりの曲なんだなと感じました。
――生徒指導の先生役で特別出演していたTOKIOの城島さんとは交流はありましたか?
現場では、話し込むほどの時間はなかったんですが、撮影のことや僕らの活動を気にかけてくださるような会話を交わしていました。ついこの間、事務所で城島さんとお会いした時も挨拶をしたら、覚えていてくださって「久しぶりやね。映画どう?」と言ってくださったことがすごく嬉しかったです。後輩に対して、こんなにも優しく話しかけてくださって、気遣ってくださる城島さんはすごく素敵な方だなと改めて感じました。城島さんが演じていた役も城島さんにぴったりだったと思います。
――本作は、登場人物が皆片思いをしているように、片思いしている人を応援する映画になっていると感じました。浮所さんは、そのような意識を持って演じてらっしゃいましたか?
片思いは誰しも経験したことがあると思いますし、振られても諦めずにずっと好きでいたら、何かしら起こると思うんです。そこで振られたからと諦めて話さなくなってしまったら終わりだと思います。諦めないことで何か起こるかもしれないというのは、この映画で感じたことでした。片思いをしている人がこの映画を観て、すごく共感できる部分はあると思いますし、背中を押してくれるような作品だと思います。
――本作の主演を経験して、どういう役者、どういう俳優になりたいと思うようになりましたか?
主演を任せられるような俳優でありたいというのは、今回の撮影を経験して改めて思いました。主演を張って恥ずかしくないような人間でいたいと思っています。それと同時に、主演ではなくても爪痕を残せるような俳優でいたいですし、印象に残るような演技をしたいと思っています。あとは何よりも男性にもかっこいいと思ってもらえるような存在になりたいです。この映画に出演して、演技が奥深いものだと改めて実感したことで、演技をすることがすごく楽しいと思うようになったので、より演技の道に進みたくなりました。今回学んだこともたくさんあったので、贅沢ですがもう1回主演で学園ものの映画に挑戦したいですし、演技を勉強しながら励んでいきたいと思っています。
取材・文/華崎陽子
(2021年6月 3日更新)