初共演ながら、映画から抜け出してきたかのような掛け合いで綴る
『森山中教習所』W主演を務めた野村周平&賀来賢人インタビュー
松本大洋の再来と評される新鋭漫画家・真造圭伍がわずか23歳で描いたデビュー作を豊島圭介監督が映画化した『森山中教習所』が、7月9日(土)より梅田ブルク7ほかにて公開される。たった一度言葉を交わしただけの高校の同級生、清高と轟木が、偶然の事故で再会し、ともに非公認の教習所に通ったひと夏を瑞々しく描いている。マイペースで能天気、まるで少年のまま大学生になったかのような清高を野村周平が、クールでポーカーフェイスなヤクザの轟木を賀来賢人が、それぞれ演じている。本作の公開にあたり、まるで原作からそのまま抜け出してきたかのような雰囲気を持ちながら、リアリティ溢れる青春映画として世界観を紡いでみせた野村周平&賀来賢人が、来阪した。
――原作の雰囲気そのままに野村さんと賀来さんが清高と轟木としてスクリーンに存在していました。原作を読んだ時はどのような印象を持たれましたか?
野村周平(以下、野村):原作を読んだ時は、日常的なことをすごくリアルに描いている漫画だと思いました。ただ、これを映画化するとなると、簡単そうで難しいなと。でも、台本を読んだらほとんど原作のままだったので、シーンごとの想像はつきやすかったです。
賀来賢人(以下、賀来):僕は原作を読んだ時に、すごく映画的だと思いました。でも、これをいざ生身の人間が表現するとなると難しいんじゃないかと思ったんですが、周りのキャストの方がすごく個性的で、違和感のないお芝居をしてくださったので、すっと入ることができました。ロケーションにもすごく助けられました。
――役作りで特別に意識されたことはありますか?
野村:僕は、とにかく楽しむことですね。どれだけ撮影が遅くなっても、笑顔で楽しんでやることは大事にしていました。清高という役を楽しまずに終わりたくなかったので。
賀来:なるべく無駄な動き方はしないように、歩き方や目線などは意識していました。ロボットのようになりすぎないように、どのぐらいまで笑うのかなど、その塩梅を監督と話しながらつかんでいきました。
――原作そのもののような教習所のロケーションでした。どのような雰囲気で撮影は進んだんでしょうか?
野村:森と田園風景が広がる中で、この作品のために作られた学校なの? と思うぐらいの廃校の中での撮影だったので、やりやすかったです。ただ、森の中にも関わらず半袖半ズボンで撮影していたので、変な虫に刺されたりしました。でも撮影中はずっと楽しかったです。麻生さんと水風船を投げ合うシーンなんか、俺が麻生さんと水風船で遊んでいただけですから(笑)。
賀来:豊島監督が、現場の空気を大事にする方なので、そういう雰囲気の中での撮影になっていて、やりやすかったです。
野村:スケジュールはタイトで、寝る時間もあまりなかったんですが、そういった中でやっていてもピリピリすることなく皆笑顔で撮影していましたし。それはロケーションに助けられたところはありますし、監督が現場の空気感をすごく大切にされていたこともあったと思います。ピリピリしたのは1回だけです(笑)。
――ちなみに、それはどのシーンですか?
野村:轟木がキレて暴れるシーンです。日が出ている内に撮り終わらなきゃいけなくて、時間かけちゃいけないのに、僕がアクションできなくなってしまって(笑)。アクションをやりたくてうずうずしていたのにいざやってみると、ミスが続いてしまって、普段は優しいアクション監督にも「なんでできないの」って言われてしまって、僕は負のスパイラルに入っていました。
賀来:僕は、あのアクションシーンでもヤバかったですね(笑)。身体が動かなくて。僕もピリピリしていたと言われていましたけど、実は、体力に限界がきてたんです(笑)。もう動きたくなくて…(笑)。
――賀来さんは、アクションシーンに加えて、重機を運転するシーンもありました。
賀来:大きな物を動かすって、やっぱり男のロマンですよね(笑)。
野村:僕は、賀来くんの後ろで見ているだけだったので、うらやましくて仕方なかったです。
賀来:後ろで鼻息荒かったもんね(笑)。
――先ほど、個性的なキャストの方たちにも助けられたとおっしゃっていましたが、それぞれの方の印象は?
野村:ダンカンさんはすごかったです。言ってもきっと書けないので言いませんが(笑)。不思議な方でしたね~。台詞が違うこともありましたし、アドリブもけっこうすごかったので、テンション上がりましたね。とにかくダンカンさんは面白かったです。
賀来:光石さんは色々話してくださる方で、優しく見守ってくださっていました。年が離れていても、同じ目線でお話ししてくださるので、すごくやりやすかったです。
野村:麻生さんは、すごく綺麗ですし、麻生さんが居るだけで、現場にいいにおいがしていました。普段は、時間が経ってくると現場って汗臭くなってくるんですが、今回はいいにおいがしました。麻生さんは、そこに居るだけで天使ですね(笑)。
――おふたりは今回が初共演ですが、それまでにプライベートで交流はあったんですか?
野村&賀来:なかったです。
――実際に共演してみて、お互いの印象は?
野村:賀来くんとはすごくいい距離感です。映画の中の清高と轟木がある程度の距離感を持ちながら進んでいくように、僕と賀来くんもプライベートでもそんな感じなんです。言葉にしなくてもなんとなく分かり合えるし、二人の間で争いも起きないですし、気を使わなくていい関係ですね。
賀来:ベタベタしない程よい距離感を保っている感じですね。撮影中も芝居の話は一切しなかったんですが、それでも映画の中の清高と轟木のように関係性が成立するんですよね。
――撮影があって、本作のキャンペーンなどで会う機会も増えて、お二人の関係性に変化はありましたか?
野村&賀来:変わらないですね。
野村:大人と子どもみたいな感じです。僕の暴走を止めてくれるんです(笑)。
賀来:止めてもないけどね(笑)。
野村:抑止力みたいなところはあります。
賀来:セーブしてるってこと?
野村:あんまりしてないかもしれない。。。(笑)
――本作は、もう二度とは戻れないひと夏を描いた作品ですが、おふたりにとって印象的な夏の思い出は?
野村:小学生の時は海沿いにあるおばあちゃんの家に行っていましたね。手づかみでちっちゃな魚を捕まえたっていう武勇伝があります(笑)。
賀来:神童だね(笑)。僕は、小学生の時は、夏はもちろんですが、ほぼ1年中縄跳びをしていましたね(笑)。理由はわからないんですけど。学校で縄跳び表みたいなのがあって、上位になると張り出されて、ちょっとした英雄みたいになれるんです。三重跳びとか、色んな技にチャレンジしてました。
――高校時代にほとんど関わりがなかった清高と轟木がひと夏を共に過ごすことで距離が縮まっていく…そういう関係に憧れはありますか?
野村:僕は、地方から東京に出てきたので、それこそなかなか会えない友だちはたくさんいますし、今思えば学生時代は楽しかったんだと思います。今は地元に帰っても、友だちは大阪や京都など色んなところに就職してしまいましたし。ちょうど、同学年の友だちが仕事をし始めて現実を見始めているんですよね。だから、素直に楽しむだけじゃないところが増えてきたので、こういう素直な青春映画を観ると、こういうのっていいなと思います。
賀来:僕は、小学校・中学校・高校と12年間ずっと同じメンバーなんです。だから、お互いの全ての状況を知ってるんですよね。今でも交流はありますが、毎回同じ話を同じテンションでして笑っています(笑)。
野村:たまに友だちに会うと、童心に帰って追いかけっことかしません?
賀来:俺はしない。
野村:俺だけかな~。水の掛け合いっことかしますよ。
賀来:でも、最近、友だちと全力で走ってないなって話になって、思いつきで、全力で100mぐらい走ったんです。最近本気で走ったことある?
野村:ないですね。
賀来:おかしな現象が起きるよ。脳では前のスピード感なんだけど、身体はかろうじてついてきてても、足だけが全くついてこないの。1回やってみて。すごいから。
野村:全然わかんないです(笑)。
賀来:僕の中で最近、一番ショックだった出来事です(笑)。
(2016年7月 1日更新)