「若い者同士で、盛り上げていきたいな」
13歳の監督デビューから5年の沈黙を破って描いた
仲村颯悟監督最新作『人魚に会える日。』
監督×Pic☆ture 座談会レポート
13歳で長編映画『やぎの冒険』を発表し、日本最年少映画監督デビューとして話題を呼んだ若き映画監督・仲村颯悟。彼が5年ぶりに手がけた第2作『人魚に会える日。』が、シネマート心斎橋にて4月1日(金)までレイトショー公開中。
本作は、仲村監督の故郷・沖縄が抱える基地問題というテーマに賛同した地元の大学生たちの協力とクラウドファウンディングで映画化が実現。製作から宣伝まで全てを学生が担っていることでも話題を呼んでいる。リアルな沖縄の姿を映し出すことで、賛否だけでは語れない基地問題を描き、一足先に公開された東京でも、初日のトークショーに女優の樹木希林が登壇するなどで大盛況を収め、追加上映が決定した注目作だ。
そこで、本作の宣伝にも協力している関西発祥の映画をコンセプトにしたアイドル「Pic☆ture」(ピクチャー)の鉢宮路さな、加美瀬のわる、桃ノ瀬なつきと仲村監督がそれぞれの視点から“映画”について、そして『人魚に会える日。』について語りあった。

――リアルな沖縄を描くことにこだわり、全編沖縄での撮影、キャストから撮影スタッフなどもすべて沖縄の方だったとのことですが、Pic☆tureのみなさんは沖縄についてどんな印象をお持ちですか?
桃ノ瀬:台風(の影響)がすごく大変なイメージがあります。撮影は夏ですよね?天候は大丈夫だったんでしょうか?
仲村監督:台風の被害は受けなかったんですが、沖縄はすごく天候が変わりやすいので、今回の撮影時もよく雨には降られました。雨が止むのを、学生スタッフとキャストのみんなで待って、撮影をしていました。Coccoさんの出演シーンで、雨がすごすぎた時には、みんなでCoccoさんを濡らさないように必死で守ったこともありました(笑)。
――Coccoさんと言えば、『KOTOKO』(2011年/塚本晋也監督)や、現在上映中の『リップヴァンウィンクルの花嫁』(2016年/岩井俊二監督)への出演と、ミュージシャンとしてだけでなく唯一無二の存在感を発揮して映画でも大活躍されていますよね。
針宮路:私、Coccoさん大好きなんです!Coccoさんのあの独特な雰囲気はこの映画の役柄でも本当に素敵でしたし、一番印象に残っています。私は、沖縄は海の印象が強いですが、監督のおすすめの場所を言うなら、やっぱり海ですか?
仲村監督:そうですね。海ですね。
針宮路:この映画の映像、とってもキレイですよね。海も景色も。私は森の中のシーンがとってもキレイだと思いました。その前の空がピンク色になっているシーンもすごく素敵でした!
加美瀬:劇中に出てくる場所は、観光で行けるような場所なんですか?
仲村監督:いや、地元の人にしか分からないような場所が多いかもしれません。今回ロケ地にはすごくこだわっていて、沖縄の北から南までを何度も往復して撮影しました。そういう意味で画的にも楽しんでもらえる映画になったと思います。
桃ノ瀬:内容はもちろん、映像も楽しめるねんな!一つ気になっていたのですが、主演の女の子は、沖縄の女優さんですか?あの子の目力が印象的です。
仲村監督:実は、この子もみなさんと同じアイドルなんですよ。沖縄では歌って踊っています。
針宮路:えー!そうなんですか!素朴な感じが印象的だったので、とってもびっくりしました。すごい演技力ですね。
――若者がこうして、映画という手段で自分の意見を表現していることに関して思うことはありますか?
桃ノ瀬:監督デビューは13、4歳ですよね?その年齢で映画を撮ろうと思い、実際に撮った監督の行動力が本当にすごいと思います。
仲村監督:僕は逆にみなさんがアイドルをされていることも、すごいなと思いますよ。この映画は製作から宣伝まで全部大学生がしています。だからPic☆tureのみんなとも一緒に、若い者同士で、盛り上げていきたいなって思いました。
加美瀬:自分で一からやるというところ、同世代でこのような活動をしていらっしゃるところ、本当に尊敬します。すべて学生で、製作を行ったからこそ大変だったエピソードはありますか?
仲村監督:本当に数え切れないほどあります。例えば、学生スタッフの音声の子(もちろん素人)が、音声の技術をプロの方に直接教えてもらってきたのですが、その後で即行、彼がリセットボタンを押してしまい、せっかくプロの方に設定していただいたのに、全てパーになってしまったとかありましたね(笑)。でも、そうやっていろんな失敗を繰り返しながらも日々勉強だと思い撮影することが出来て、今となれば良かったと思えます。一人でも多くの方が映画館に足を運んでくださればありがたいです。どうぞよろしくお願いいたします!!
様々なジャンル、様々な役者、様々な監督、その映画に関わる多くのスタッフ、そしてそこから多くの人の心を動かし、影響を与えることができる「映画」というカテゴリー。活躍の場は違えど、“映画”という壮大で、一言では語りきれない共通点を持つ若者の代表である、仲村監督とPic☆tute。『人魚に会える日。』をきっかけに、映画はもちろん、関西から映画を盛り上げるために日々活動しているPic☆tureの活動にも注目していきたい。
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宣伝を担当した竹内詩乃(現役大学生)からひとこと
私は仲村監督のもとで、関西宣伝担当として公開まで動いてきましたが、より多くの方々に、リアルな沖縄の姿を見て欲しい、その一心で一生懸命に走り回る彼の姿が非常に印象的でした。仲村監督やPic☆tureのように、若者が自分の意見を、それぞれの方法で、しっかりと大人たちに伝えることが、今後の日本を変える一つの手段となっていくと思う。

現代の若者は、自分の意見を持つことを恐れ、例え持っていたとしても、SNS上で、匿名で発信するのみ。このご時世、日本は数え切れないほどたくさんの問題を抱えている。そういう一つ一つの問題に、若者がきちんと向き合って、大人と社会に伝えていくことや、若者同士でシェアすることが、今後もっと必要になるのではないだろうか。
若者にだって、世の中のためにできることは沢山ある。
仲村颯悟監督が命を削って作った、『人魚に会える日。』 同世代の方に特に見ていただきたい作品です。
(2016年3月27日更新)
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