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綺麗で可愛くてパーフェクト!
だけど、素の石原さとみは男っぽい?
大沢たかお、石原さとみ、三池崇史監督が出席した
映画『風に立つライオン』記者会見レポート

 1987年にさだまさしが発表した楽曲「風に立つライオン」。この楽曲に惚れ込んだ俳優の大沢たかおが小説化・映画化を熱望し、大沢たかお主演、大沢と『藁の楯』でタッグを組んだ三池崇史監督によってついに誕生した映画『風に立つライオン』が3月14日(土)よりTOHOシネマズ梅田ほかにて公開される。アフリカのケニアで医療に従事している男が、心に傷を負った元少年兵と心をかよわせる様を、美しく壮大な風景を交えて、ひとりの日本人医師が繋ぐ“希望のバトン”を描き出す。そこで、本作の公開を記念して、主人公・島田航一郎を演じた大沢たかお、航一郎と同じくケニアで医療に携わる看護師・草野和歌子を演じた石原さとみ、そして三池崇史監督が来阪、記者会見を行った。

――公開を直前にいまのお気持ちをお聞かせいただけますか?
 
三池崇史監督(以下、三池監督):八尾中出身の監督としては(笑)、繋いだバトンを落とさないように出来る限りの力で走って、ひとりでも多くの人に観ていただければと思っています。
 
大沢たかお(以下、大沢):さださんから監督に渡ったバトンをみなさんに届けられればいいなと思います。
 
石原さとみ(以下、石原):撮影が終わったのが(昨年の)12月で、公開が3月。本当にあっという間で撮影時の記憶が鮮明に残っている状態ですが、多くの人に観てもらって感想を聞きたいと心から思っています。
 
――歌から小説、そして映画に。映画で撮りたかったものとは何ですか?
 
三池監督:映画で何ができるんだろう? という挑戦なんだと思います。泣ける映画が昨今トレンドになっていますが「可哀想だから泣いてあげる」というような、観る側が高みからその悲劇に同情し、劇場を出ると「泣けたね」と笑いながら泣けたことを喜ぶような映画にはしないように心がけました。主人公の島田航一郎にはモデルがいて、そして震災が起きたことで小説化する意義が生まれた。ここが「(泣き)ポイントです」という、映画によくある“ものさし”をできるだけ省略して、あまり操作しない。女性、男性、年齢、職業などによって感じ方はぜんぜん違うと思うので、観る人それぞれに島田航一郎を感じていただきたい。そして、希望を感じて劇場を出ていただきたいです。
 
――ケニアでの撮影はいかがでしたか?
 
三池監督:ケニアは日本の映画製作に関して未知の場所でした。映画製作のシステムが整っている南アフリカで撮る方がリスクは低いだろうし、日本の一般的な映画陣はそうすると思います。でも、この映画は普通の“ものさし”に当てはめてはいけない映画だと思っっていたので、まずは島田航一郎が行ったケニアから行くべきであると思いケニアで撮影しました。結果、我々がそれを成し得たというより、作品の持っている運命というか、招き入れてくれたという感じなんです。島田航一郎が「逃げずにとにかく行きなさい」と勇気を与えてくれ、それに応えられたような気がしています。
 
大沢:アフリカでの撮影は3度目なんですが、ケニアで生きてみなければ航一郎になれないと思っていました。実際に航一郎としても僕自身としてもそこに立って精一杯生きてみようというだけで芝居に関するプランみたいなものはまったく考えずにいた気がします。そういうところでも航一郎とダブってくる気がしたし、それによって自分の殻が剥がれていく感じもありました。そうやって航一郎の世界に入っていっていたたような気がしています。
 
石原:私はアフリカに行くのは初めてでした。行く前にいっぱい注射を打ったりしたので不安な面もありましたし、連ドラの撮影中でもあったので切り替えがちゃんとできるかなとか、頭の中がすごく忙しかったんですが、24時間のフライト中に気持ちを作っていくことができました。到着した初日からすぐに手術シーンの撮影で、すぐ和歌子になったような感じです。大沢さんや監督はもちろん、仲間がみんなが同じ方向を向いて一生懸命、必死に撮影して、わたしもそれにしがみついていくのが必死でした。振り返ってみるとケニアに来て、必死にしがみついていた和歌子と同じような気持ち、感情、言動になっていた。そんな中で生きられたような気がしました。
 
――大沢さん、石原さんのそれぞれの印象についてお聞かせ願えますか?
 
三池監督:大沢さんはストイックで熱いんだけど暑苦しくない、熱さを人に共用しなくて自分と戦っている。そういうところが島田航一郎とリンクしている。奇跡的な力を与えているなと思います。石原さんは、精神的なコンディションなんかも含めて厳しい条件だろうと思ってたんですけど、中に男が一匹住んでるんじゃないかってくらいタフでしたね。過酷な状況の医療施設に「こんな綺麗な看護婦はおらんぞ」というのは映画にとって致命傷になるんですよね。リアリティがなくなるから。でも石原さんは和歌子として存在し、和歌子として輝いているのが映画を観れば分かると思います。
 
大沢:石原さんは綺麗で可愛くてパーフェクト。今回初めてご一緒したんですが、ケニアでの撮影は女性にとって楽なものではなかったと思います。でも嫌な顔を全くせず、役に集中されていました。連ドラの撮影中で気持ち的にも大変なはずですが、とても勉強熱心に原作の研究もされていて。男ばかりの現場で「この人男かな?」と思うくらい堂々としていましたね(笑)。お芝居もオフでのみんなとの接し方も素晴らしくて、彼女が今とても人気があるのがよく分かります。
 
石原:わたしは大沢さんというより航一郎として見てしまっていた部分が多いんですが、本当に航一郎のような方なんです。明るくて楽しくて説得力のある言葉を発して下さる。本当に尊敬できる方で、和歌子として一緒にいる時間は本当に安心できて、どんなにハエが飛んでても集中を切らさずにお芝居できました。
 
――三池監督が『風に立つライオン』のような作品を手がけるのは意外と思う方もいるかもしれません。今までの作品と違うと思うところはありますか??
 
三池監督:取り組む姿勢が特別違ったということはないです。今までも自分のスタイルみたいなものはあまり気にしたことはないんです。バイオレンスであれば、追い込まれた人間が立ち上がっていく、そのためには半端じゃなく痛めつける場面があると立ち上がるところがより美しく撮れるということ。その登場人物によって決まっていくんです。自分の監督した作品であっても自分の生み出した作品とは思っておらず、監督という立場で作品に関わってスタッフみんなの持っている力、キャストの魅力を本番に集中させていくという作業をしたということ。そういう意味ではほかの映画との違いはありません。
 
――では、最後にメッセージを。
 
大沢:1987 年にさださんが曲を発表されて、2年前にそれが小説化された。そして今年、三池監督の手によってついに映画になりました。自分がこの作品を前に何かを言うことは何の意味もないしすべて空しく響くような気がします。とにかく観て感じてください。そして出来ればそのバトンをどんな形でもいいから受け取っていただければうれしいです。本当に僕はそれ以上の言葉がないんです。監督が以前インタビューでお話しされていて素敵だなと思った言葉があって「そのバトンを持って走るもよし、止まるもよし、戸惑うもよし、どんな形でもいいんです。出来れば落とさないようにしてほしい」という言葉が今僕の胸にすごく響いています。観た方にこのバトンを受け取って頂けたらと思います。どうぞよろしくお願いします。



(2015年3月11日更新)


Check
大沢たかお
石原さとみ
三池崇史 監督

Movie Data





©2015「風に立つライオン」製作委員会

『風に立つライオン』

●3月14日(土)より、
 TOHOシネマズ梅田ほかにて公開

出演:大沢たかお 石原さとみ/真木よう子
   萩原聖人 鈴木亮平 藤谷文子 
   中村久美 山崎 一 石橋蓮司
原作:さだまさし
   「風に立つライオン」(幻冬舎文庫)
監督:三池崇史
脚本:斉藤ひろし
音楽:遠藤浩二

【公式サイト】
http://kaze-lion.com/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/166778/