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ホーム > インタビュー&レポート > 「ふたりで白湯を飲んで(笑)」(石田) 撮影現場での高良と石田はおじいさんとおばあさんみたい!? 『悼む人』高良健吾、石田ゆり子、堤幸彦監督インタビュー& 主題歌『旅路』を担当した熊谷育美からの動画コメントも

「ふたりで白湯を飲んで(笑)」(石田)
撮影現場での高良と石田はおじいさんとおばあさんみたい!?
『悼む人』高良健吾、石田ゆり子、堤幸彦監督インタビュー&
主題歌『旅路』を担当した熊谷育美からの動画コメントも

 ベストセラー作家・天童荒太が書いた2008年の直木賞に輝いた小説を、原作に惚れ込んで舞台化も実現させた堤幸彦監督が映画化した『悼む人』が、2月14日(土)より梅田ブルク7ほかにて公開される。事故や事件で亡くなった縁もゆかりもない人たちを悼むために全国を旅をする青年・静人(高良健吾)を中心に、生と死、愛と憎しみ、罪と許しをテーマとしたドラマが描かれる。そこで、公開を前に来阪した高良健吾、石田ゆり子、堤幸彦監督にインタビューを行った。

――石田ゆり子さんは原作にほれ込んで自ら名乗りを上げたとお聞きしたんですが、原作はどのように出会われたのですか?

石田ゆり子(以下、石田):最初はタイトルに惹かれて手に取りました。『悼む人』ってタイトル、何だろう?って惹かれません?

 

――確かに最初は読み方も分かりませんし「何だろう?」ってなりますね。

石田:それで、上下巻に渡る長編だけど、読み始めるとすぐに引き込まれて。「これは絶対、映画になる。なるに違いない。まだ誰も手を挙げていないに違いない!」と思って、立候補したんです。

 

――立候補というのは原作者の天童荒太さんにということですか?

石田:そうなんです。「映像化する際には、是非参加させてください」という手紙を天童先生に出すという…。大胆不敵な行動に出たんです(笑)。

 

――石田さんが演じた倖世という女性は、とても複雑で難しい役だと思いますが。

石田:本当に難役なんですが、自分で手を上げたからには弱音は言ってられませんし、全身全霊で悔いのないように挑もうと思いました。それくらいの気持ちにならないと出来ない役なんですよね。

 

――では、高良さんに関してはどういうところがキャスティングのポイントになったのですか?

堤幸彦監督(以下、堤監督):高良くんの中に何か秘めているものを以前から感じていて、それが静人とぴったり重なって見えたんです。静人の“死者を悼むという行為”は、この映画のビジュアル的な肝ではないんですよね。そうなってはいけないんです。静人には彼なりの、旅の出発点とこの段階での帰着点、そして先に向かう未来がある。そこで、悼む行為が過剰になってはいけない。高良くん演じる静人の目線の配り方やスピードなんかにもそれが反映されていると思います。

 

――高良さんは脚本を読んでどう感じましたか?

高良健吾(以下、高良):どういう風にこの映画の中にいたらいいのかなとずっと思いながら脚本を読みました。静人のしていることって、見る人のとらえ方によって、イタくもなるし、押し付けがましくもなるかもしれないので、最初はどうしたらいいんだろうなという気持ちでした。

 

――そういった不安は何かで解消されたんですか?

高良:撮影に入ってから、静人の母が言う「あなたの目にはどう映りましたか?」という言葉がすごく響いて。静人はこういう人で、悼む行為ってどういうことなのか、そんなことは考えなくていい。静人を演じる上で、何かを変えようとか何かを救いたいとか、そういったことも考えませんでした。半径の狭いところにいればいい、自分の気持ちが外に向いてはいけないなと感じたんです。

 

――今までで演じてきた役の中でも、一番変わった役だったのではないですか?

高良:似たような人はこの世にたくさんいるだろうけど、まったく同じ人はいない。そう思うと楽で、特に今までも演じ分けみたいなことを気にしたことはないんです。ただ今年は、俳優という仕事を始めて10年目で。周年だからと言って何か変えることはないけど、自分の中で気合いを入れて挑戦しました。

 

――具体的にどんなところが挑戦だったんですか?

高良:芯の部分だけで表現できるのでは? という挑戦でした。静人はそういうことができる役柄だったので。答えはひとつではないし、そこで精一杯向き合ったらどうなるのか。今「やれ」と言われても出来ない演技を映画の中でしています。

 

――堤監督は、今回の映画化の前に本作を舞台化されています。そこまで監督をほれ込ませた原作の魅力を教えてください。

堤監督:今年で還暦を迎えるんですが、身内を含めて周りのいろんな方々の死に触れてきて、いつも「申し訳ないな」という気持ちになっているんです。親の墓参りに行っても謝ってばかりで。人が死ぬということに対して整理されないモヤモヤしたものがずっとありました。でも、この作品と出会い、死と向き合うことで、亡くなられた人のことを「覚えておくこと」が、僕にとっては必要だと感じたんです。監督をしましたが、この作品に関してはお客さん目線でもあるんです。死に対する不条理感みたいなものが、この作品を通過することで、少しずつ溶けて、清らかなものになっていく。そんな、原作を読んだときの気持ちをたくさんの人に伝えたい、広めたいんです。

 

――舞台と映画で何か違いはありますか?

堤監督:舞台は想像力で観るもの。舞台では、言葉の間にある何かを想像してほしいので、あえて線と光と影と最小限の写真で表現しました。でも、もっときちんと多くの方に伝えたい気持ちがあったので天童先生に映画化させてほしいとお願いしたんです。なので、映画では徹底的に具体化しました。あたかもそこに人が住んでいるような家、あたかもそこを旅しているような状態、日本人の心の中に深く刻まれている日本的な風景、山があり、雪があり、桜があり、温度が感じられるような風景。そして、性的なシーンや暴力的なシーンも多くあります。風も雨もあります。でも、そういうところから逃げずに真正面から取り組みました。死者に対する思いや、異性に対する愛情、家族の絆や母の愛、そういったものが映画を観ている人それぞれに浮かび上がる映画になればという思いで撮りました。

 

――悼むときにする、拝むのともまた違う独特の動きがとても印象的ですね。

堤監督:原作にあるんですが、強弱やスピード、まろやかさみたいなものは現場の隅で練習しました。

 

高良:水をすくうようにと原作にあるので、手の指は開かない方がいいですかね? とか話して練習しました(笑)。

 

石田:わたしが悼むシーンの撮影は最終日で、それまで高良くん演じる静人がする悼む行為を何度も実際に見ていたので、わたしは練習せずにやりました。でも、寝袋で寝ていた高良くんが、寝ながら教えてくれたこともありましたね(笑)。いざ、あの動きをやってみると、本当に「心の中にしまっておきます」というような、不思議な気持ちになりました。

 

――高良さんもそんな不思議な気持ちになりました?

高良:ぼくは、目の前に向き合っている命に100%向き合うだけで精一杯でした。悼むときに発する言葉も、本当は誰にも聞こえない言葉でいいはずなんですよね。外に発するものではないので。でも、それをどうするかが重要でした。

 

――今回、高良さんと石田さんは初共演ですが撮影の合間はどのように過ごされたんですか?

高良:空見たり、風景を見たり。淡々と過ごしていました(笑)。本当に一緒に旅をしたような感覚です。

 

石田:なんだか、すごくいい空気を吸わせてもらったという感じでした。わたしたち、ふたりとも口数が少ない役柄だし、実際も口数少ない方ですし、ふたりで白湯を飲んで(笑)。縁側のおじいさんとおばあさんみたいな感じでしたね(笑)。

 

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――最後に、これから映画をご覧になる方に一言お願いします。

堤監督:“死”は、どんな人でも近くにあるはずです。そこには、なかなか割り切れない気持ちもあると思います。僕自身もそうでした。過激なシーンもありますが、その先で、死に対する整理されない気持ちを少し溶かしてくれて、優しく癒してくれるような作品になっていると思います。自分で撮っていて気持ち悪いと思われるかもしれないけど、ぼく自身、涙を止められないシーンもあります。誰でもどこかの場面で映画に寄り添うことが出来る、そういう不思議な形で参加できる作品です。たくさんの方に観ていただきたいと思っています。よろしくお願いします!




(2015年2月13日更新)


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Movie Comment

『悼む人』主題歌『旅路』を担当した
熊谷育美からの動画コメント!

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Release

堤 幸彦監督作には4作目の参加となる
『悼む人』主題歌『旅路』を収録!

Mini Album
『PROCEED』
発売中 2000円(税別)
TAKUMI NOTE
TECG-21103

<収録曲>
01. 夢のつづきを
02. 未来描画<ミライスケッチ>
03. 生きて
04. 旅路 ※映画「悼む人」主題歌
05. 流星
06. ずっと、あなたと
07. 笑顔
08. 約束

Movie Data




©2015「悼む人」製作委員会/天童荒太

『悼む人』

●2月14日(土)より、
 梅田ブルク7ほかにて公開

出演:高良健吾 石田ゆり子
   井浦 新 貫地谷しほり 
   椎名桔平 / 大竹しのぶ
原作:天童荒太「悼む人」(文春文庫刊)  
監督:堤 幸彦  
脚本:大森寿美男  
音楽:中島ノブユキ

【公式サイト】
http://www.itamu.jp/

【特設ページ】『悼む人』ココが見どころ
http://cinema.pia.co.jp/news/165101/61209/