ホーム > インタビュー&レポート > 「生きていたらやりたいことって無限にある」 『想いのこし』木南晴夏インタビュー
――この映画の中には4つの物語が入っていて、木南さんが演じるのは1つ目。完成作品を観ての感想は?
それぞれのエピソードで1本の映画が撮れそうなくらいひとつひとつの話がとても濃くて、観る方それぞれの年齢や今の状況でいろいろなシーンに共感していただける作品になっていると思います。作品の持っている温かい想いが、観ていただく皆さんの心に響くのではないかなと思います。
――木南さんはどの物語がお好きでしたか?
実は、オファーを頂くだいぶ前に原作を読んでいたのですが、脚本では(松井愛莉さん演じる)ケイのお話が好きです。
――ケイは野球部のマネージャーとして最後の試合を見届けたいという未練があったんですよね。
(ケイは野球部のキャプテンに対して)淡い恋心は抱いていたけれど、ふたりに強い繋がりがあったわけではなくて。すごく綺麗な色の青春という感じがして、このお話はとても好きです。学生時代、部活をしていなかったので羨ましくなりました。マネージャーやりたかったなぁ(笑)。
――ケイの話は、やり残した“青春”を描いています。木南さんが演じたルカの話はやり残した“恋愛”の話ですね。ルカをどんな女性として演じましたか?
ルカという女性は、泣きたいときは泣くし、笑いたいときは笑う。感情放出型というか、素直に思ったことを表に出してしまうので、演じていて気持ち良かったです。自分自身と似ている部分もあるとは思うんですが、あそこまで素直に生きられる人ってなかなかいないと思うし、素直に生きるルカちゃんを羨ましく思いますね。叶えられなかった夢を叶えたいという一心で、ルカという人間を感じたままに動けたので楽しかったです。
――感情の起伏が激しいルカ。監督の演出はいかがでしたか?
泣くことを我慢しない、どこか子どもっぽさのある女性なので、結構どのシーンでもずっと泣いていたような記憶があります(笑)。監督からも、台本に“泣く”と書いていない場面でも「ルカちゃんここ泣いてね」という演出がありました。でも、ルカの状況を考えると、泣くことがむしろ気持ちいいくらいの感覚で自然と気持ちよく演じることができました。
――今回、亡くなった人を演じる上でいつもの演技と違うところってあったんでしょうか?
普段は目と目を合わせて会話しますよね。今回は、幽霊役なのでルカ達からは見えるけど相手には見えていない状態なので、目を合わせないでお芝居をしました。旦那さん(になるはずだった彼)とも、ずっと目を合わせられないんですけど、最後の結婚式のシーンで目を合わせるこができて「やっと通じ合うことができた」という感覚になって、そのときは本当にグッときました。
――未練が無くなれば成仏してこの世から消えていく。その目が合う場面は、別れは寂しいけれど幸せな場面でもありました。
結婚する予定だった女性に急に先立たれて精神的に弱くなっている旦那さん(になるはずだった人)を見守り、優しく明るく「ごめんね!」という気持ちで演じていました。強くいようと思ったわけではなく、目の前に弱っている人がいると強く明るくなってしまうんだろうなと。本当は離れたくない気持ちももちろんあるんですけど、この世に残る人にはこれからの人生があるから、ちゃんと「さよなら」が言える状況を作ってもらったという感じでした。
――自分は死んでしまったから、岡田将生さん演じるガジロウが代わりにウェディングドレスを着て結婚式をあげるという木南さん演じるルカにとってのクライマックス的な場面ですね。
あのシーンは、天井がすごく高くて荘厳で綺麗な教会で撮影が行われたんですが、とても神聖な気分になりました。岡田さんの花嫁姿は、本人は嫌がっていましたが(笑)、とても可愛くて好評でしたよ。みんなに「かわいいね」と言われていました。
――岡田さんはいろんなところで天然と言われていますがいかがでした?
天然かどうか分かりませんが、とにかくマジメな方です。ポールダンスに関しても、岡田さんはかなり体が硬かったので最初は大丈夫かなと心配になりましたが、すごく頑張って練習されていました。
――木南さんはバレエなどの経験がおありでダンス絡みの役柄も多く経験されていますが、今回のポールダンスをするに当たっては事前に特訓されたりしたんですか?
わたしは撮影に入る2ヶ月前から練習を開始しました。当然ポールに触ること自体初めてですし、最初は上に登ることさえできず「絶対に無理だ」と愕然としてしまったんですが、練習を重ねて徐々にひとつひとつ技ができるようになっていった時は、すごく達成感を感じましたね。ただ、プロのポールダンサー役としては練習期間が全然足りなかったと思いますし、もっと前から取り組めたら良かったなぁと感じています。
――ポールダンスを経験されて、ポールダンスの魅力ってどういうところにあると思われましたか?
妖艶さが目立っていると思いますが、実際に目の当たりにすると「命綱もなしにこんなことを人間が出来るんだぁ!」とまるでサーカスを見ているような驚きを感じると思います。そして、実際やってみると本当に苦しくて難しくてハードです。名前に“ダンス”と付いていますが、ひとつの競技みたいな感覚でアスリートがやるスポーツだなと思いました。とにかく腕の筋肉も足の筋肉も使うので毎日筋肉痛でした。
――広末さん、松井さん、木南さんの3人で練習されたりしたんですか?
いつも3人というのはさすがに難しいので、1人ずつ別々のこともありましたが、撮影に入る前からスケジュールがあえば、あうメンバーで練習しました。通常は、撮影現場でしか会わないことも多くありますが、今回の撮影はいいコミュニケーションが取れたなと思いました。
――映画にちなんで、もし明日死ぬとしたら今やりたいことって何ですか?
「今やってみたいこと」はスカイダイビングと富士登山なんですが、明日死ぬとしたらそのふたつにチャレンジするのはしんどいですね(笑)。そのふたつは死ぬ間際にしたいわけじゃないし。生きていたらやりたいことって無限にあるんですよね、ここ行きたいあそこ行きたいとかもたくさんある。でも、「明日この世からいなくなる」と言われたら、やりたいことって特になくて。「想いのこしたことは特にないと言える自分」がいるような気がしています。
――では、今後やってみたい役柄は?
時代劇を演じたことがないのでチャレンジしてみたいですね。馬に乗れる女性ってカッコイイなと思って、乗馬を習ったことがあるんです。殺陣はやったことがないので不安ですが、やったことがないことを未経験のままで終わらせず、一度はやってみたいタイプなので今後もどんどんいろいろな役にトライしていきたいです!
(2014年11月30日更新)
●梅田ブルク7ほかにて上映中
出演:岡田将生/広末涼子
木南晴夏/松井愛莉
巨勢竜也/鹿賀丈史/ほか
監督:平川雄一朗
脚本:岡本貴也/HARU
原作:岡本貴也
「彼女との上手な別れ方」(小学館)
【公式サイト】
http://omoinokoshi.com/
【ぴあ映画生活サイト】
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