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ホーム > インタビュー&レポート > 「サクラの存在がなかったら  あのキャラクターは生まれてこなかった」(安藤桃子監督) 安藤桃子監督、安藤サクラ、坂田利夫が出席した 『0.5ミリ』会見レポート

「サクラの存在がなかったら
 あのキャラクターは生まれてこなかった」(安藤桃子監督)
安藤桃子監督、安藤サクラ、坂田利夫が出席した
『0.5ミリ』会見レポート

 デビュー作『カケラ』で国内外から注目を集めた安藤桃子監督が自身の書き下ろし同名小説を映画化した長編第二作『0.5ミリ』がテアトル梅田にて大ヒット上映中。監督の実妹で人気実力派女優である安藤サクラを主演に迎えて描く本作は、ある事件に巻き込まれ「家なし・金なし・仕事なし」になってしまった介護ヘルパーのサワ(安藤サクラ)が、津川雅彦、坂田利夫らが演じる“わけあり老人”の元へ“おしかけヘルパー”となる物語。高齢化や格差といった現代日本の問題が見え隠れしながらも、サワと老人たちが前向きに生きる姿を笑いあり涙ありで映し出していく傑作だ。そこで、安藤桃子監督、安藤サクラ、坂田利夫が出席した会見レポートをお届けします。

――最初の挨拶をお願いします。
 
安藤桃子監督(以下、監督):この映画を観た方から「坂田師匠で泣くなんて!」という感想をかなり聞きました。今日、この3人が揃っていることが正直とても嬉しいです。
 
安藤サクラ(以下、サクラ):撮影中も師匠に心を奪われておりましたが、私の中で師匠が妖精の神様のような存在になりつつあったので再会した今、照れております。師匠のホーム(=大阪)で『0.5ミリ』を紹介できることがとても嬉しいです。
 
坂田利夫(以下、坂田):映画の現場はすべてが初体験。とにかく迷惑かけへんようにばっかり考えて緊張して、体がカチカチになりました。ロケ中、お客さんからの「坂田、一個もギャグやらへんやないか」という声も聞こえたんですけど(笑)、いい人ばかりの現場で楽しかったです。いい思い出ができました。また頼むわさっ。
 
――坂田さんを始め、津川雅彦さんや柄本明さんなど先輩方を数多く起用したことについて。
 
監督:今回どうしてもやりたいことがふたつあって、ひとつは安藤サクラさんと仕事がしたいという長年の思い。もうひとつは映画界の重鎮と呼ばれる方々と一緒に作品を作りたいということでした。海外は先輩方が主演として活躍されているけど日本は少ない。レジェンドな俳優さんたちと安藤サクラを同じ土俵で戦わせたらどんなものが見られるのか、見たことのない化学反応が起こるのではと思いました。それを自分自身が一番見たかったんでしょうね。
 
サクラ:今回演じたサワというキャラクターは、おじいちゃんたちを彼女のペースに巻き込んでいくという役柄だったので、最初は緊張しましたが、そこはもう腹をくくって(笑)、坂田師匠や津川さんらを「おじいちゃん」として見ようと思って現場に入りました。なかなか出来ないであろう世代を超えたセッションが出来て楽しかったです。私だけでなく姉や若いスタッフらが、世代を超えて作品を作っていく。すごく豊かな経験が出来たと思っています。
 
――介護をテーマにした理由は?
 
監督:在宅で祖母を家族で看取った8年間の体験を通して、“介護”というひとつの言葉で括られている社会に違和感を感じていました。介護、戦争、いじめ、就職難など、いろんな単語が蔓延っていますが、その中には数えきれない人のドラマや喜怒哀楽がある。そのひとつひとつに映画監督として向き合わなくてはいけないテーマがあるなと思いました。『0.5ミリ』は介護の体験が原点ではありますが、映画は人を楽しませるエンタテインメントだと信じている者としてひとうつの寓話として届けたいです。(女性なのでヒロインが正しいのですが、カッコよかったりするのであえて)ニューヒーロー・サワちゃんを誕生させたかったという思いがあります。師匠をキャスティングさせていただいたのは、人を笑わせる力って泣かせることよりも100倍、1000倍難しいことだと思っているから。
 
――サワとの出会いに最初は困惑する“わけあり老人”たちも、いつしかイキイキとしていく。時に母、時に恋人の顔を持つ、サワという魅力的なキャラクターはどのように生み出されたのですか?
 
監督:すごく身近なところとすごく離れたように感じる今の世の中の全体像の両方から生み出されたのかなと今改めて思っています。この先の世の中に一番必要な技を全部持っているキャラクターが生まれました。わたしが求めている人物像。でも、やっぱりサクラの存在がなかったらあのキャラクターは生まれてこなかったと思います。と言ってもサクラがサワのような性格ということでは全くなくて。サクラが生まれてきてから姉妹で過ごしてきた時間の中から生まれたというか…。
 
サクラ:わたしをどう突いたら何が出るか。ありとあらゆる手を使って、わたしが持っているすべてを引き出された感じです。さらに師匠ら色々な方との化学反応によってサワのキャラクターがどんどん広がっていく。サワ自身もサワちゃんをまだ分かっていない、本当にヒーローみたいなキャラクターを監督はすごくうまく作ったと思う。
 
監督:無限大の糊代(のりしろ)がある人物を作りたかったんですよね。それは女優・安藤サクラという人を見ていて感じていることと共通していて、妹としてよく知っているように思えても、まだまだ見たことのない表情だとか、ここからどんな新しい顔が見られるんだろうっていう糊代を感じる人が、奇しくも役者という仕事を選んでいる。こんなに面白いことないよね。こんなに楽しいおもちゃはない(笑)。
 
――サクラさん、坂田師匠と共演するまでと共演してみての印象は?
 
坂田:共演する前は「アホの坂田」やろ。
 
サクラ:すみません。そうですね(笑)。小さいころから大好きだったんです。
 
監督:小さいころから好きな人とこうやって共演できてすごいね。
 
サクラ:本当はサワのペースにおじいちゃんたちを巻き込んでいかなくてはいけないのに、師匠との共演シーンでは師匠が演じるおじいちゃんのペースにサワが巻き込まれてしまうことがよくありました。
 
――坂田師匠は、オファーを受けたときいかがでした?
 
坂田:いやもうびっくりしましたよ。映画なんて経験ないし、皆さんに迷惑かけるのちゃうかと思うてね。でもやっぱり憧れやから、恐怖感もあったけど、よし! いっぺん出てみようと。ひとつの経験やと思ってね。ほんで男らしく飛び込みました。
 
サクラ:師匠は実際にお会いしたら男らしくてちょっと驚きました。そういえば撮影中、師匠が私のことを間違えて「うちのかみさん」って言ったんですよ(笑)。それくらい役とこの映画に入り込んでいたのだと思います(笑)。
 
――監督は高知に移住されているんですよね? どんな魅力を感じられたんですか?
 
監督:ひと言で言えば、生命力。あと、みんながサワちゃん。おばあさんのサワちゃんもいれば若いサワちゃんもいる。コミュニケーションが取れる人々がいて、そこに生命力あふれる社会があって。海・川・山が揃っていて、日差しがすごく強くて、食材も豊か。苦しいことも知っているからこそ毎日ワッショイと生きている。日本人の民族としての原点のように感じたんです。自分が理想としていたサワちゃんというニューヒーローがたくさん住んでいる場所。今回の撮影でそれを感じたんです。
 
――坂田さんから見た安藤姉妹の印象は?
 
坂田:優しいね。でも監督はピリと厳しいなと思うときもありましたけどね。監督の言うとおり動かんと怒られるし、そらもう大変でしたけど、やっぱり撮影が終わったらサラッとした快感を味わいました。ほんでまたスタッフの親切が嬉しいですね。最後の方は近所のおばはん同士みたいになって楽しかったです。
 
 
 最後にこの日、安藤桃子監督の結婚と妊娠を知った坂田は「おめでとさ~ん!」と祝福のメッセージを贈り、和やかなムードで会見を終了した。



(2014年11月22日更新)


Check
左から、安藤桃子、安藤サクラ、坂田利夫

Movie Data




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『0.5ミリ』

●テアトル梅田にて上映中
 12月20日(土)より、元町映画館
 12月27日(土)より、京都シネマ
 にて公開

出演:安藤サクラ
   柄本明/坂田利夫/草笛光子/津川雅彦
監督・脚本:安藤桃子

【公式サイト】
http://www.05mm.ayapro.ne.jp/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/164658/