“仇役”の豪華2大俳優
中井貴一、阿部寛と若松節朗監督が登壇した
『柘榴坂の仇討』舞台挨拶レポート
映画『柘榴坂の仇討』の先行上映会が先月末に、大阪・なんばパークスシネマにて実施され、“仇役”の2大俳優である中井貴一と阿部寛が若松節朗監督と共に来阪、舞台挨拶を行った。
今年の1~2月にかけて、京都で撮影したという本作は、浅田次郎の手によるわずか38ページの短編小説を映画化した作品で、明治を舞台に、“桜田門外の変”で主君・井伊直弼の命を奪った“仇”を追い続ける武士と、隠れ続ける人生を送ってきたふたりの男の運命を描き出す。

中井は日本映画界における時代劇の衰退に触れつつ「心を描く時代劇をやろうと思われたプロデューサーに心から敬意を表しました。真正面から、時代は違っても共通する日本人の魂を描いた作品です」と手ごたえを感じている様子で本作を解説。また阿部も「こういう人間を描く作品を貴一さんと一緒にやれたことが財産になりました。日本人にとって素晴らしいものが(本作には)あると思います」と自信を覗かせた。そんなふたりの賞賛を受けて、若松監督は「常にひたむきな中井さん、いい意味で愚直な阿部さん、このふたりの名優と、とても良い温かい日本映画ができました。どうぞよろしくお願いします」と挨拶した。
中井と阿部の共演は『麒麟の翼~劇場版・新参者~』『ステキな金縛り』に続き今回で3度目だが、本格的なセリフのやりとりがあるのは今回が初めて。阿部は本作で演じた役柄について「僕は貴一さん演じる金吾に13年間追われている役です。なので、緊張感を出すためにも現場でなるべく顔を合わせないようにしようと思っていたんですが、初日にトイレで会ってしまって。しかもメイクもずっと隣で…」と苦笑い。それに対して、中井は「こんなに大きい人が見つからない訳ないですよね」と笑ってコメントした。
そんなふたりを現場で見ていた若松監督は「おふたりともこの作品とはまったく違うタイプのドラマや映画に出演されていましたが、現場に入るともうガラリ変わるんです! 緊張感たっぷりに我々スタッフにプレッシャーをかけてきて。そういうものがしっかり映像に出ていると思います」と胸を張った。

京都での撮影については、「1日終わるともう完全燃焼してしまって、全く外出できなかった」という中井だったが、一方で阿部は「僕は先斗町あたりでちょろちょろ美味しいもの頂いてましたよ」と告白。中井も若松監督も「そんなの初めて聞きましたよ」と驚いていた。
映画で時代劇に出演するのは本作が初めてだった広末涼子については、「実は以前、飛行機の中で見た映画に広末さんが出られていて、セツをやるならこの方だと思って、監督とプロデューサーにどうしても広末さんでお願いしたいと申し上げたんですよ」と中井の推薦だったことを明かし、「健気というか日本女性の強さというか、そういうものをピシッと広末さんが出してくださったなと思っています」と話した。
最後に、「“仇討”というタイトルですが、日本人が持っていた優しさ、情愛、目上の方を敬愛する気持ち、日本人は良かったなぁといういい部分をたくさん含んだ映画です。みなさん楽しんで頂ければと思います」(若松監督)。「今年50歳になったんですが、50代の出発点として、貴一さんとこの日本が誇れる作品、時代劇に出演できたことが誇りですし、宝物になりました。みなさんもこの作品を観て、何かを持って帰って頂いて、まわりの人に伝えて頂ければ嬉しいです」(阿部)。「俳優たちが京都という時代劇の街で誠心誠意、精一杯日本人の心を演じました。阿部さんもおっしゃいましたが、本当に何かを感じて帰って頂けたら幸せです。そして観終わってご飯でも食べる時に、この映画の話を1時間でもしてくださったら、それがキャスト・スタッフすべての幸せだと思います。今日はありがとうございました」(中井)。とメッセージを残し、舞台挨拶を締めくくった。
(2014年9月10日更新)
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