「自分の中にある普遍的な感覚みたいなものを抽出しようと」
橋本愛主演の映画『リトル・フォレスト』で
初めて映画音楽を手がけた宮内優里インタビュー
五十嵐大介の同名ロングセラーコミックを春夏秋冬の4部作にて実写映画化。女優・橋本愛が岩手県奥州市にて1年がかりの長期オールロケに挑んだ映画『リトル・フォレスト 夏・秋』が8月30日(土)より、『リトル・フォレスト 冬・春』が2015年2月14日(土)より大阪ステーションシティシネマほかにて公開される。
都会での暮らしに自分の居場所を見つけることができず、故郷に帰り、自然に囲まれた自給自足の生活で息を吹き返していく主人公・いち子(橋本愛)の姿を描き出す。大自然の美しさと厳しさ、旬の食材を生かした料理の数々が映画には数多く登場し、そこに耳心地のいいサウンドが乗ることで物語を一段と豊かに彩っていく。そこで、同作の音楽を手がけたアーティスト・宮内優里にインタビューを行った。
――宮内さんの紡ぎ出す音楽は、白いキャンバスがカラフルな絵に変わるような印象でどこか温かさと丸みを感じます。ライブなどで宮内さんがされている音を重ねていく音楽スタイル(右の動画参照)はどのように生まれたのでしょうか?
10年程前、生楽器とデジタルミュージックの混ざった音楽に興味を持つようになって、自分でも作ってみたいと思って始めました。短いフレーズをたくさん録音して構築していくのはコラージュのような要素もあり、通常の作曲作業とは少し違うのですが、自分の性格とか思考には合っているみたいで楽しみながら続けています。ライブの手法に関しては後々になってから始めたのですが、その作業を繰り返し練習して作業時間をギュッと縮めたような感じです。
――今回、映画『リトル・フォレスト』の音楽を手がけることになった経緯は?
森淳一監督とプロデューサーの守屋さんからご依頼を頂き、関わらせてもらうことになりました。以前お二人とはドラマのお仕事でご一緒させてもらったことがあります。
――そうだったんですか。オフォーを受けたときの率直なお気持ちはいかがでしたか?
映画音楽全編を担当するというのは初めてだったので緊張もありましたが、自分の音楽を必要としてくださったことが素直に嬉しかったです。
――まずどこから音楽のイメージを膨らませていったんですか?
オファーを頂いてすぐに原作の漫画を購入して読みました。正直、その時はあんまり音楽のイメージは意識しなかったです。漫画が面白くて、一読者として読んでしまいました。イメージは制作を開始して、手を動かしながら膨らんでいったような気がします。最初にイメージしたのはシンプルでゆったりとした温かい音楽でした。制作の開始はその少し後だったのですが、楽曲の半分くらいは撮影済みのシーンを見ながら作り、残り半分は監督のイメージを再現する形で作りました。
――季節ごとに4章に分かれている珍しいタイプの映画ですが、どのような音楽を目指して作られたのでしょうか?
とにかく、自分の引き出しを全部出してみようと思いました。映画音楽は初めてだったので、出来る限りの種類を用意してみようと。映画に自然と入っていけるような寄添う音楽を目指しました。
――普段の音楽制作と違う点はありましたか?
普段の音楽制作は今までの自分に無いものをいかに生み出せるかというところに挑戦していますが、今回は自分の中にある普遍的な感覚みたいなものを抽出しようとしました。
――映画音楽というものに以前から興味はあったんですか?
ありました。ぜひ挑戦したかったです。
――記憶に残っている映画音楽とかあります?
恥ずかしながらあまり映画は詳しく無いのですが、先日観た『舟を編む』の音楽は印象に残っています。映画に対する愛情を感じました。はっきりと色付けをするわけではなく、さりげなく物語に焦点を合わせる“虫めがね”のような役割をしていることにすごく共感したのを覚えています。
――渡邊崇さんですね。確かに素晴らしかったですね。出来上がった『リトル・フォレスト 夏・秋』本編を観られましたか?
観ました。とても良かったです。原作を読んだときの感覚がそのままに、映像になることでスムーズに心に入ってくるような気がしました。
――では、最後に今後の活動予定を教えてください。
ライブはちょこちょことありますが、特にはっきりとした予定はないです。オリジナル作品をしばらく作っていないので、じっくり作ろうかと思っています。
――楽しみにしてます! この度はありがとうございました!
(2014年8月23日更新)
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