テクノロジーに魂を吹き込み蘇った新しいゴジラ
「ゴジラの一鳴きはまるで歌舞伎のよう」
『GODZILLA ゴジラ』
渡辺謙が出席したセレモニー&会見レポート
日本が生んだ怪獣映画の大傑作『ゴジラ』がハリウッドの超一流スタッフ・キャストによってハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』として蘇り、いよいよ7月25日(金)よりTOHOシネマズ梅田ほかにて公開。大阪市北区中之島のフェスティバルホールで先日行われた大阪プレミア試写会オープニングセレモニーに本作に出演する渡辺謙がサプライズゲストとして登場した。

フェスティバルホール入口に作られた特設会場に軽やかな足取りで登場した渡辺は、世界で最後の公開国となる日本のファンに向けて「お待たせしました。『GODZILLA ゴジラ』は、とにかく2時間ずっとハラハラドキドキしていただける作品です。楽しんでください!」と挨拶。
フェスティバルホールの顔とも言える幅約8メートル、51段の赤絨毯が敷き詰められた大階段を、ゴジラの口に見立てた“GODZILLAカーペット”を見て「食べてまうぞ!というわけですな」と関西弁のイントネーションで話し、楽しげに笑った。
その後、総額1億5千万円の純金のゴジラ像もお披露目されたが、そこでも渡辺は「でもね、GODZILLAは世界で500億稼いでますからポケットマネーみたいなもんでしょ。この子、これから営業行くの? 元とらなあかんしね」と関西ならではのお金の話で集まった観客の笑いを誘った。
その後、場所を移して行われた記者会見では、
――オファーを受けたときの心境は?
震災以降、まず日本の皆様に届けたいという思いで映画やテレビドラマに出ていて、もう少し幅を広げようかなと思っていたところでこの『ゴジラ』への出演オファーをいただきました。町が破壊されたり、津波を連想させるシーンがあったり、人が逃げ惑ったり。そういうイメージは事前に出来ますから、果たしてそういう映画を今の日本の皆様に届けるべきなのかという逡巡はありました。
――では出演を決めた経緯は?
ギャレス・エドワーズ監督は、ゴジラがどういう経緯で生まれ、何を背負っているかということをよく理解していたんです。60年前、日本の映画人たちが核兵器が世界に拡散されることに警鐘を鳴らす意味でゴジラという映画は誕生した。我々は3年前に原発事故というものを受けて同じような放射能の危機というか恐怖を味わい、科学が進歩し文明が発展したとしても人間にとっての恐怖は変わらないということをこの映画で表現したいという思いが監督にもありました。僕もその意見に共感したので、最初に受けた逡巡みたいなものは大きくふり幅を変えてこの映画ならば出るべきではないかと思えたんです。
――今回演じられた芹沢猪四郎という役について、どういったところに気を配り表現されましたか?
ゴジラシリーズ1作目に登場する芹沢博士と、監督の本多猪四郎さんの名前を合わせた役名でオリジナルへの愛と敬意を感じました。昨今、科学者という存在が取り沙汰されていますが、科学者というのは人類のための進歩を目的に研究を続けるんだと思うんですが、一歩間違うと人類を破滅させてしまうかもしれない危険がある。核兵器にしてもそうだと思います。そういったジレンマや葛藤のようなものを科学者は持っていると思う。芹沢博士のバックグラウンドには父親が被爆しているということもあって研究のプロセスは始まったんだと思いますが、結果的に人類を破滅させてしまうかもしれない生物を成長させてしまった自責の念のようなものを彼は抱えたまま一連の出来事を見つめ続けなければいけない。ある種の揺らぎのようなものを持ちながら最終的には自然の力に科学がひれ伏してしまう。そういった全体の構造を考えながら演じさせていただきました。
――ゴジラの姿かたちも話題ですがそれを知ったのは?
初めてギャレスにあったときにすでに9分くらいのティーザー映像を作っていました。足だけやビルの間を歩くようなまだ全貌が見えないゴジラの映像をスクリーンにかけて見せてくれました。それを見たときにものすごいやる気を感じましたね。これは後から聞いたことなんですが、東宝のゴジラにできるだけ近づけたいと、すべてCGで作るのではなく、スーツアクターがモーションピクチャーを付けて動きを撮影してからCGを組み立てていったという非常に手間隙をかけたプロセスを踏んでいるんです。テクノロジーに魂を吹き込んでいく作業を彼らはやっていました。
――エンタテインメントとして渡辺さんが面白いと感じるところは?
もちろんゴジラの存在を想像して演じているんですが実際に出来上がった作品を観たときは単純に客として楽しめました。前半は人間ドラマが中心なんですが、ここぞというときにゴジラが全貌を見せる。あの一鳴きは外連味(けれんみ)があり、歌舞伎やプロレスのようで鳥肌が立ちました。絵的なものだけでなくや音響・音楽などいろいろな要素を含めたエンタテインメントであり映画らしい映画に仕上がったなと思います。
――ゴジラを初めて観る世代へも含めてメッセージを。
ゴジラには深いテーマ性があるんですが、単純に2時間ハラハラドキドキしていただくだけでいいと思うんです。僕自身がそうであったように、大人になってから「ゴジラって何だったんだろうな?」とか「ゴジラってこういうことを背負わされていたんだ」と気づいてくれればいい。そういう種を巻くだけでもいいと思うので、まずは楽しんでもらいたいです。ゴジラのバイブレーションを感じてください。
(2014年7月24日更新)
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