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ホーム > インタビュー&レポート > 「大人の手を借りず、子どもたちだけで問題を解決していく… 『グーニーズ』や『ネバーエンディング・ストーリー』辺りの ファンタジー映画の影響が出た作品になったかも」 『偉大なる、しゅららぼん』水落豊監督インタビュー

「大人の手を借りず、子どもたちだけで問題を解決していく…
『グーニーズ』や『ネバーエンディング・ストーリー』辺りの
ファンタジー映画の影響が出た作品になったかも」
『偉大なる、しゅららぼん』水落豊監督インタビュー

 『鴨川ホルモー』『プリンセス・トヨトミ』などが映像化されてきたベストセラー作家、万城目学の同名小説を映画化した『偉大なる、しゅららぼん』が3月8日(土)より、梅田ブルク7ほかにて上映中。琵琶湖畔に立派なお城を構え、先祖代々不思議なパワーを伝承してきた一族とそのライバルとの因縁が、思いもよらない大騒動に発展していく様を描く。赤い制服を身にまとった濱田岳、岡田将生らのコミカルな掛け合いにも注目したい1作だ! そこで本作で長編映画監督デビューとなった水落豊監督に話を訊いた。

――本作で長編監督デビューということですが、その経緯を簡単に教えていただけますか?
実は、この映画の前に濱田岳くんを主演に東野圭吾さん原作の『モテモテ・スプレー』という30分のコメディー短編を撮ったんですが、プロデューサーの山田雅子さんとは、そこでお会いしてるんです。そこで山田さんに「次、これいけるんじゃない? 出来る気がします」と声をかけていただき、その場で「是非お願いします」とお返事しました。
 
――それで原作を読まれて、どういうところに魅力を感じましたか? また、どういうところを大事にして今回、映画化されたんでしょうか?
今までこういった娯楽小説をあまり読んだことがなかったんですが、素直に「万城目さんの作品ってこんなに面白いんだ」と思いました。劇中で(濱田演じる)淡十郎がいろんなものを「美しい」「美しくない」と言うんですが、そこは映画化するときも大事にしたいと思いました。人間が本来持っているものは「美しい」、そうでないものは「美しくない」という価値観で彼は生きている。原作を読んだ時に深読みするといろんなメッセージがあって、とくにこれは重要だと思ったので、映画では誇張しています。
 
――今回の映画はとくに友情を中心に描かれていると感じましたが。
脚本の段階で「友情の話にしたい」というのが明確だったんです。僕はもともとCMディレクターなので、CMの場合その都度“お題”があるんですよね。なので、その“お題”に答えるのは全くストレスではなくて。映画をご覧になって友情物語だと感じていただけたら、その“お題”に応えられたのかなと思います。
 
――観客にとってCMは受身、だけど映画はお金を払って観るものでまったく違うものであるとも言えますが、CMでの仕事が今回活かされた部分はどういったところでしょう?
僕は作家性で売るタイプのCMディレクターではないので、いずれにせよ観る人たちのことを一番に考えますが、何か伝えたいことがあるときにどこを誇張するか。言いたいことが10あっても、伝わるのは1程度。どこに力を入れたら面白いかは今までも仕事としてやっていたので、今回の映画でも知らず知らずのうちに出きたのではと思います。
 
――その中でも特に力を入れたところはどこですか?
(笹野高史演じる)源治郎の終盤のシーンで「ホロッときた」という感想をよく聞きます。やっぱり緩急をつける上で「ここは泣ける」という場面があれば力を入れたい。だから、原作にはなかった昔の写真のエピソードを入れたりと工夫をしてみました。笹野さんが素晴らしいということもありますが、うまくいったなと思っています。
 
――笹野さん確かにさすがでした。キャスティングで言うと、本作では“ナチュラルボーンお殿様”な濱田さんがハマリ役ですね。
どんな役でも出来ますが、コメディーは特に能力を発揮してくれる。ベタなコメディアンやお笑い芸人のようなタイプではなく、ナチュラルにコメディーができて、それがすごく面白い。本当に稀有な役者さんです。もちろんシリアスも素晴らしいし、すごい才能だと思いますね。
 
――監督の希望でキャスティングされたんですか?
僕がお話をいただいた時点で、主演は濱田くんと岡田(将生)くんに決まっていました。キャスティングで言えば、原作を読まれた方で一番違和感を感じるかもしれないのが、深田恭子さん(淡十郎の姉・清子役)かもしれませんね。深田さんがやりそうにない役だし、僕は深田さんで良かったなと思っていますが。
 
――コミックとはイメージがまったく違いますもんね。濱田くんなんかはコミックの淡十郎にそっくりですが、映画化する上で小説とコミック、どちらも参考にされてるんでしょうか?
コミックの存在はもちろん知っていたんですが、実はあえて読まなかったんです。知らず知らずに引っ張られて真似したようになると嫌だったので。
 
――そうなんですか。濱田さんと岡田さんはプライベートでも映画の中の関係そのままだとお聞きしましたが。
本当に兄弟のような関係でした。滋賀での撮影期間中も濱田くんが1、2度、他の仕事で離れたら、岡田くんはすごく寂しそうにしてましたし。「どんだけ好きなんだ」ってくらい(笑)。プライベートでも主従関係があったので、彼らも演じやすかったんじゃないかな。撮影に入る前に少し話をしただけで、ふたりの関係が分かったので、その雰囲気を生かしたほうがいいなと思い撮影しました。
 
――淡十郎の“お供”という役柄が抜群に似合っていますが岡田さんのお芝居についてはいかがですか?
イケメンなので、コメディーだとどうなるのかという興味が僕自身にあったんですが、彼もこういう役を演じたかったらしいです。振り回されている涼介の可愛さを出したかったので、「多少オーバーでもいいから、いつものイケメンはどこかに捨ててきて」とお願いしました。でも岡田くんってプライベートでは涼介に結構近いんですよ。意外とオトボケな感じで(笑)。台詞はまったく噛まないのに、普段の会話は噛みまくりだったり(笑)。「ひこにゃん」のことを、冗談じゃなく「ひこちゃん」とか「ひこさん」と言ってたり(笑)。
 
――ハハハ! 可愛らしいですね。監督はCMのお仕事に就かれる以前から映画監督になりたいという思いはあったのでしょうか? 
子供の頃からたくさん映画を観ていたのもあって、大きな括りで映像に興味がありました。
 
――この映画に影響を与えている映画がありましたら教えてください。
80年代の作品を中心に好きな映画はたくさんありますが、この映画に関して言えば、大人の手を借りず、子どもたちだけで解決していくところとか、『グーニーズ』や『ネバーエンディング・ストーリー』辺りのファンタジー映画の影響が出た作品になったかもしれません。とにかく、滋賀がとても美しいところだったのであるがままを撮りたいと思ったことも大きくあります。綺麗なものを綺麗に撮りたい。まさに淡十郎のメッセージと同じですね。



(2014年3月 8日更新)


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水落豊 監督

Movie Data





(C)2014 映画「偉大なる、しゅららぼん」製作委員会 (C)万城目学/集英社

『偉大なる、しゅららぼん』

●梅田ブルク7ほかにて上映中

出演:濱田岳 岡田将生 
   深田恭子 渡辺大 貫地谷しほり
   佐野史郎 高田延彦 田口浩正 
   大野いと 柏木ひなた
   小柳友 津川雅彦 笹野高史 
   村上弘明

原作:万城目学「偉大なる、しゅららぼん」
   (集英社文庫刊)
監督:水落豊  
脚本:ふじきみつ彦
企画・プロデュース:山田雅子

【公式サイト】
http://shurara-bon.com/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/162192/