日韓合作アクション・サスペンス
『ゲノムハザード ある天才科学者の5日間』
西島秀俊&キム・ソンス監督が登壇した舞台挨拶レポート
記憶が“上書き”された主人公の奮闘を描いた日韓合作のサスペンスアクション『ゲノムハザード ある天才科学者の5日間』の公開を記念して大阪ステーションシテシネマにて26日、舞台挨拶が行われ、主演の西島秀俊とキム・ソンス監督が登壇した。西島の登場に会場からは「かっこいい…」と声に出す観客も。西島は予想以上に大きな劇場で満席となっている客席を見渡し「直接、お客様とこうやってお会いできて本当に幸せです」と感無量な様子で最初の挨拶を行った。

――西島さんは映画の中で2つの人格を演じています。演じわけは大変でしたか?
西島秀俊(以下、西島):そうですね。まず、癖や話し方、話すスピード、態度などふたつのキャラクターを作っていたんですが、ややこしいのが僕が演じた役は記憶が混ざっているんです。なので、それぞれを何%ぐらい出せばいいのか分からないシーンもあって、このセリフの時は何%、また戻って…などを1シーンごとに書き込んで監督に相談したり、持ち道具の方にもアイデアをもらったりして、みんなで作ってもらったという感じなんです。
――アクションシーンもすごいですが、ほとんどスタントなしで西島さんが演じられたんですよね。
西島:「できるだけ自分でやりたい」と監督にお願いして、やらせていただきました。結構危ないこともやりましたが、すごく楽しかったです。
――監督は、西島さんのアクションはいかがでしたか?
キム・ソンス監督(以下、監督):初めて西島さんにお会いした時は、果たしてこの作品を受け入れてくださるのかという心配はありましたが、意外にも「アクション大好きなんです」と言ってもらえたんです。ただ、“好き”というレベルではなくて、“マニア”レベルで(笑)。日本の監督は、もしかしたらそれをご存知ないのかなと思うほどでした。本作のアクションはほぼすべて、西島さん本人が演じています。カーアクションでは、運転席も道路の事情も全部、日本とは反対。しかも車はボロボロ。そんな状況なのに慣れる時間もなく、すぐに撮影に入ったんですが、西島さんはカーアクションも見事にこなして、驚きました。これは“生まれつき”もったものなんだと考えるしかなかったですね。
西島:ベタ褒めですね(照笑)。
――20箇所以上、居留地など神戸で撮影されてるんですよね。
西島:夜に道路を封鎖して撮ったり。でも結構、街中でもカーアクションを撮ったり、三宮を裸足でベタベタ歩いたり、無茶な撮影をたくさんさせていただいて、神戸の皆さんには感謝しております。夜は走ったり阪神電車に乗ったりするシーン、昼は他のシーンを撮っていたので、一日ずっと撮影していましたね。
――そう言えば映画の中では走るシーンが多く、何度も繰り返し撮る監督さんだとか。さすがに辛かったでしょう?
西島:そうなんですよ(笑)。夜は地面が光るように、実は濡らしてあったりして、結構危ないんですよね。ものすごく身体能力の高い人が、階段の後ろから本気で追いかけてくるので、危なくてしょうがなかった(笑)。
監督:西島さんが「やりたい」と言ったから、やらせてあげたのに…、なんで僕を悪者にするんですか(笑)。ここには西島さんのファンの方もたくさんいらっしゃると思いますが、私も西島さんのファンのひとりです。しかし、映画監督には俳優をいじめる時に感じる快感があるんです。皆さんには申し訳ないんですが、その快感を私は満喫できました(笑)。

西島:こういう監督が多いんですよ。なんなんですかね(苦笑)。
監督:でも、喜んでいたでしょう(笑)?
西島:ええ、辛い撮影は好きですけど(笑)。ボロボロになったり、辛い役が最近多いんですが、「こいつなら我慢するだろう」という噂が流れているんでしょうね(苦笑)。あいつは大丈夫だっていう。
――西島さんの身体能力が高いからこそなんでしょうね。話は変わりますが、西島さんは大阪にはよく来られるんですか?
西島:神戸と京都は撮影でよく来るんですが、大阪の撮影はあまりないので、是非呼んでいただきたいと思っています。
監督:今回大阪に初めてきましたが、すぐ近くの神戸で本作を撮影したので、初めてのような感じがしません。神戸では幸せな記憶がたくさんありますので、故郷に来たような感じです。「お好み焼き食べたいです(いきなり日本語で)」 大阪と言えばたこ焼きも有名なのを知っています。たこ焼きも大好きです。西島さんとたまにお酒を一緒に飲むんですが、僕がたこ焼きやお好み焼きが好きなのを知っていながら、全然おごってくれないんですよ!
西島:なんてことを言うんですか(笑)! 知らなかったですよ。後で買いますよ(笑)。「お好み焼き食べたい」って…。そんな日本語、どこで覚えたんだろう(笑)。
――そういえば撮影中の言葉はどうされていたんですか?
西島:通訳の方を介して話していたので、あまり不自由はなかったですね。監督の演出も後半は乱暴になってきて、「○○って映画の○○って俳優のあの顔みたいに」とか。ある映画や俳優をイメージして演じろと言われ、それでこちらも「はい」と(笑)。その○○はここでは言えませんけどね。
監督:西島さんはどんなに大変な撮影でも、現場で一度も「辛い」「疲れた」と言わなかった。西島さんを前にしているから言うわけではなく、本当に素晴らしい俳優さんなんです。プロ精神があって、映画人としても、ひとりの人としても素晴らしい方だと思っています。
(客席:拍手)

――では、最後に皆さんにメッセージを。
監督:日本で本作を公開することができ、とても幸せです。日本と韓国の映画人が「いい作品を作ろう」という純粋な気持ちで、一生懸命作った映画です。私たちのエネルギーが皆さんにも届くことを祈っています。「今日は本当にありがとうございました(日本語で)」
西島:かなり大変な撮影もありましたが、観ていただいたら分かる通り、キャストもスタッフも全力で取り組みました。公開されて、皆さんに楽しんでいただく機会ができて、心から嬉しく思っています。観た後からもいろんな謎が出てくる作品だと思うので、何度も劇場で観ていただき、謎を解明していただけたらと思います。本日はありがとうございました。
(2014年1月29日更新)
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