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「“女子あるある”がすごく詰まっていて、きっと
発見や懐かしんでもらえるところがある映画だと思う」(大谷)
『ジェリー・フィッシュ』
大谷澪、花井瑠美、金子修介監督インタビュー

 『自縄自縛の私』に続く「女による女のためのR-18文学賞」作品の映画化シリーズ第2弾『ジェリー・フィッシュ』が、シネマート心斎橋、T・ジョイ京都にて上映中。大学生作家である雛倉さりえが16歳のときに執筆した同名短篇小説を、ヒットメイカーの金子修介がメガホンを取り映像化。学校や家に馴染めない内向的な女子高生と同級生との脆く危うい同性愛のはじまりから結末までを、ベテランならではの手腕で92分の映画に作り上げた。主人公の夕紀を演じるのは本作が初主演となる大阪出身の大谷澪。そしてもうひとりの主役、彼女を包み込みながら時に心をかき乱す存在である叶子を本作で映画デビューを果たした花井瑠美が演じている。

 《R-18文学大賞》のコンセプトである「女性が持つ誰にも伝えられない感情、小説だからこそ語れる言葉」をどのように映画にしたのか。大阪を訪れた金子修介、大谷澪、花井瑠美の3人にインタビューを行った。

──金子監督は日活ロマンポルノで約30年前に監督デビュー、そこですでに同性愛を描いておられます。仕上がりは異なるとしても、本作を作る上で当時の経験を活かしたのでは? と感じますし、その後、女性を主役に多くのジャンルものを撮ってこられた監督の特性が表れた映画だとも思いました。
金子修介監督(以下、金子監督):無意識のうちにそうなったのかな。原作にある高校生のヴィヴィッドな台詞やふたりの小さな世界を映画として立体的にするための描き方は、かつてのロマンポルノの文法と共通していると受け取れるかもしれません。
 
──「恋愛の成就の可能性」という点ではメロドラマでもありますね。
金子監督:そうなんですよね。男女の恋愛ではなく同性愛なんだけど、独特の切なさがあって、それは意外と珍しい展開かと思います。
 
──以前、金子監督に取材させて頂いたときに女性をどう撮るか、そのこだわりについてかなりお話を伺ったんです。本作でも正面、斜め、下からなど様々なアングルからおふたりを捉えています。大谷さん、花井さんは「撮られている」という感覚は強かったでしょうか?
大谷澪(以下、大谷):演出について訊かれる機会も多いんですが、監督はすべてにおいて私たちに任せくれていましたので、特にこれといって指摘されたことは無いんです。だから「撮られている」という感覚もあまり無くて。ただ夕紀としてその場所に存在できた。それは金子監督が持つ不思議な力だなと感じました」
 
花井瑠美(以下、花井):私は撮影現場は初めてで、映画ってどう撮るんだろう? というところからのスタートでした。もし色々と経験して金子監督の現場に行ったとしたら「あれ? 何も言われない。…どうしよう?」と戸惑ったと思うんです。でも今回は自分の思い描く叶子に取り組んだので、知らない間に演技している感覚も無くなっていたんですね。今、澪ちゃんも言った通り、撮られていると感じることも無く撮影が終わって、出来上がった映画を観て「あ! 監督すごいな」と後々気づいて、そこで感動しましたね。
 
──監督が細かい指示を出さず、おふたりに任せた理由は?
金子監督:いきなり現場で作ったものではなく、リハーサルの期間が結構あったのでできたのかな。ふたりとも、演技している間はもう「お互いに好きで好きでしようがない」という空気になっていたので、それを撮ればいいというね。
 
──撮影前に殆どコンビネーションが取れていた訳ですね?
金子監督:そうですね。現場で何かが変わるということは無かったです。リハーサルの芝居と現場での芝居はやはりまったく違いますが、「こう撮りたい」と思っていたものは同じだったから、それをリアルに現場の空気に溶け込ませればよかった。
 
──ふたりが一緒にいるシーンは長回しも多いです。演じていてどうでしたか?
大谷:カット割りをしないということは台詞を覚えないといけないので、リスクでありプレッシャーでしたし、さらにこの作品は自分が主演。その意味でのプレッシャーもありました。演じる夕紀と私をつなぐヒントが台本しか無かったので、もう読み漁って、嫌でも台詞を覚えている状態だったんですよ。だから現場で突然「長回しで撮ります」と言われても、普段よりも焦りは無かったです。そうなると芝居をする者として、長回しの方が感情がつながっているので演じやすいんですよね。自然な空気が出ています。自分で観ていても入り込めるし、その空気を心地良く思ったので、あの撮り方は必要だったんだなとあとで分かりました。
 
──花井さんは21歳までの18年間、新体操の世界で活躍されていました。短くは無い一定の時間、テンションの持続が求められる点で、新体操と今回の撮影に通じる感覚もあったのでは?
花井:たしかに撮影が終わってからそういう実感も覚えたんですが、現場にいるときは考える余裕もなかったです。まず長回しがどのくらいなのか? カットがどこまでなのか? それを想像もできない状態で臨んでいました。かえってそれがよかったと振り返って感じるし、本番では、その前と違って緊張をしなかったんですね。ずっとカメラを回してくれているから、“抜け出せない”状況に追い込んでくれているというか、これは金子監督の作戦なのかな? と考えたりもしました(笑)。
 
──監督、そういう作戦だったんですか?
金子監督:…えっ? いや、カットを割るべきところはちゃんと割っているんですけども(笑)。だけど、感情がつながって見えた方がいいというシーンはそう撮っています。ふたりの関係はどうなんだろう? と観る人が緊張感を持続できるように。
 
──撮影スケジュールがタイトだったとも伺っています。それも良い方向へ作用したんでしょうか?
金子監督:もう少し撮影時間があればどうなったんだろう? と思ったりもしますけどね。でも、「これで撮るしかない」というところもあるし、現場のスケールと作品のスケールが一致しているのって、映画にとっては必要なことですよね。意外とね。
 
──様々なスケールの作品を長年手がけてきた金子監督ゆえに、その辺りのバランスは熟知しておられるかと思います。スケールというと、92分の中で、ふたりの感情や関係の推移以外に不要な枝になるものは取り除いた映画だとも感じました。
金子監督:そう。(作品でも見られる)水槽の中のクラゲのように美しく漂う、その感じだけ。でもしっかり芝居をしているクラゲという(笑)。
 
大谷・花井:(笑)
 
──大きなスクリーンに女性が綺麗に収まっていれば、映画の何パーセントかは成り立つといえるかもしれません。いささか乱暴な言い方ですが。
金子監督:ええ、勿論そうです。でもこのふたりは「自分たちは綺麗だ」と思っている訳じゃないからね(笑)。一生懸命に演技してくれている。それをこっちが「綺麗に撮る」ということですよね。
 
──どの角度から撮れば最も綺麗に写せるか? ここは金子監督のこだわり、腕のみせどころでもありますよね。最初にも触れましたが、今回は多様なポジションから撮っています。
金子監督:ふたりとも基本的にスタイルがいいので、それはまず活かしていますよね。全身から顔のアップまで様々なサイズ、角度から撮りました。
 
──そういえば、物語のオープニングのシークエンスは水族館の大きな水槽前、ラスト前のクライマックスは小さな部屋の中。広い空間から小さな空間への移行。これはあらかじめ意図されていたことでじょうか? 水族館の場面の順は原作とは違っています。
金子監督:意図したことではないですが、全体を通して「水槽の中のクラゲ」がモチーフになっているんですよね。美的に言えば、ふたりの小さな愛を追究していくと彼女たちにとってそれが世界のすべてになる。だから、小さな部屋を水槽として観る人がいてもいいですよね。
 
──バス停に3つベンチが並んでいて、ふたりが座る位置が序盤とそのあとでは変わります。そのことにも特に意図は無く?
金子監督:ちょっと変えてみようか? そんな軽い感じだったかなあ。
 
花井:でも、あとで心理学の本を読んでいたら、「人は守りたい相手を自分の左側に置く」と書いてあって、「これって夕紀と叶子の関係だ!」と思ったんですよ。
 
金子監督:でも、まあ感覚的なものです(笑)。
 
──なるほど(笑)。物語の方へ話を移すと、原作にある十代の少女の「同性や“死の匂い”への傾倒」というモチーフ自体はオーソドックスともいえます。監督はどう感じました?
金子監督:僕はかなり新鮮に感じました。「それだけといえばそれだけ」なストーリーですが、読んでドキドキしてしまいましたね。「自殺ごっこ」の描写は、「死んじゃったらどうしよう?」と思ったし、撮影中にも「誤って死なないように」と考えたり(笑)。
 
──主演のおふたりは、ご自身の10代の頃と照らし合わせるといかがでしょう?
大谷:大まかに言えば私と夕紀とは真逆ですが、気持ちはすごく分かる部分もあります。彼女は客観的に見れば幸せな女の子だと思うけど、思春期独特の孤独感と闘っていて、そこから抜け出す方法が見つからない。そこで出会った女の子に救われてゆくのには共感できます。この作品では対象がたまたま女の子だけど、一般的にはそれが男の子だったり、ペットだったりしますよね? 人によってその違いはあるでしょうけど、通じるものはある筈だから、私だけじゃなく他の方も共感できるんじゃないかなと思いながら演じていました。
 
花井:私は大学が女子大で体育大学だったので、周りに(同性愛者が)いなくはなかったんです。最初はびっくりしましたが、この映画で叶子役を経験してみて当時のことが理解できたというんでしょうか。恋愛は男性をたくさん好きになっていくうちに分かることも多いでしょうけど、女の子同士だから理解できることはやっぱりあって、歳をとると女の子の方が繊細で深い生きものだと感じるんですよ。
 
──今もまだまだお若いじゃないですか(笑)。
花井:はい(笑)。でも、そういう女性同士の感情って、若さゆえにどう上手く表現していいのか分からないだろうし、大人になると周りを気にしてできないことですよね。その意味で、感情をぶつけ合って素直に生きている姿を思い出させてくれる映画だなと感じました。一歩引いた目で見たら同性愛ということよりも、ピュアな気持ちを思い出したという感想も聞くんですよ。だから伝えたいのは同性愛だけじゃなくて、もっと幅広いものなんだって観れば観るほど思いますね。
 
──引いた目で過去を振り返るのは、まさにラストシーンの叶子ですね。
花井:うん、そうですね。
 
──役柄と離れた、普段のおふたりはどんな雰囲気でしょう?公式サイトのトーク(http://www.r18-jellyfish.com/sp/note.html)で大谷さんはオタク気質、花井さんはリア充だと語っている部分があって、それも気になっていたんです。
大谷:私はとにかくひとりが好きです。昔からひとり遊びが得意で、いっぱい妄想もして、それを楽しんでいるから家では独り言も多いです(笑)。ひとりが好きだから家にいるのが好きなんですよ。割と引きこもるというか、外へ出る機会が少ないから友達も少ないんですが、それでいいと思っているので(笑)。今は特に好きなものをずっと好きでいたいという自分のテーマのようなものを持っています。嫌いなものを取り入れたくない訳じゃないですが、嫌でもそれは入ってきますよね。したくないこと、「朝、起きたくない」というのもそうだし(笑)。もちろんそれと向き合いながら、でも自分の時間を持てたときは、自分の世界の中で好きなものと一緒にいたい。アニメなどが好きなので、家ではずっとその世界に浸っています。だから友達と一緒にいる時間って、1ヶ月の間に2日あるか無いかくらいなんですよ(笑)。
 
花井:私が一番会っているかも(笑)!?
 
大谷:本当に瑠美ちゃんとは最近よく会うんです。ここ数ヶ月は話す相手も瑠美ちゃんくらい。それがすごく楽しいから、自分の中ではリア充なんです(笑)! でも客観的に見ればオタクと言われるし、その気質を持っているのは間違いないと思います。
   
──最も好きなアニメ作品を教えてください。
大谷:ずっと一番なのは、セーラームーンなんですよ。DVDを全部持っているのに、それでもわざわざレンタルショップで借りてきて、何回も観ているのにいつも泣いてしまったり。私はセーラームーン世代で、幼稚園や小学生のときの記憶をすごく大事にしています。モーニング娘。など90年代の音楽も大好きで今もずっと聴いているし、その時代に携わってきたものを今も大切にしているから、セーラームーンを超えるものはたぶん無いです、もう(笑)。
 
──…話しぶりに少し圧倒されつつ聞いていました(笑)。花井さんはその逆で、リア充だというようなことを話しておられましたね。
花井:でも私、新体操をしていた頃とは性格が180度変わっているんですね。変化の途中は気づかなかったし見た目も同じですが、澪ちゃんの「友達が少ない匂い」はそもそも私も持っていて、オーディションのときに澪ちゃんからその気配を感じて「あ、これは!」と思って「友達少ないでしょ?」という話もしましたね。
 
──実は花井さんも内へ向かうタイプだった?
花井:もともと私、根暗な子が好きなんですよ。でも新体操ってまったく違うじゃないですか? 華やかだし、上下関係もあって色んな人と付き合っていく世界で18年以上生きてきて、そこでトップを獲るのが自分だと思っていたのが、やめた途端、「…あれ? 私、“こっちサイド”なの? って(笑)。今でも新体操をしていた頃の明るい私に戻れと言われればできるんですが、できれば“こっち側でひっそりと…”というタイプなんです。それに気づいたのが、ここ1年くらいなんですよね。
 
──1年前というと、『ジェリー・フィッシュ』の撮影の頃でしょうか?
花井:撮影を始めた頃から葛藤がありました。「私、どうなってるんだろう?」と思って、携帯電話のアドレス帳を一度大幅に整理しましたもん。すると極端に少なくなって(笑)。でも澪ちゃんのように「それでいいな」と思っているんです。
 
──今のふたりのお話を、金子監督は傍観者のようなまなざしで見ておられましたが…?
金子監督:…いやもう、呆然と見ているしかないよね(笑)。
 
──こうした日常の気質も含めて、おふたりはこれまでお仕事されてきた多くの女優の方たちとはだいぶ違いますか?
金子監督:今までにないタイプです、ふたりともに。澪ちゃんは自分でオタクだと言っていますが、スクリーンを通して見ると全然違うんだよね。芝居で開放されているというか、スクリーンでは親しみやすい子になっている。オタク的な背景を持っているからこそ、映画で開花するものが大きいのかもしれない。瑠美ちゃんもそういう“歴史”を経てこの作品にぶつかって来て、そこで澪ちゃんと肉体でぶつかり合っているから、それまでとは全然違う形でスパークしているんですよね。だから僕も今まで見たことのない芝居を見せてもらえました。
 
──その面も新鮮だったんですね。
金子監督:うん、だから「新人監督のつもりで撮りました」というようなことを取材でよく言っているんです(笑)。
 
──金子監督は来年で監督デビュー30年を迎えられますね。
金子監督:それでやっぱり手練れた部分もあるんでね(笑)。気持ちは新鮮だけど、語り口をどうすればお客さんに見えやすくなるかを考えるのは得意だから、今回もそこは踏まえて作りました。
 
──さっきお伝えした「不要な枝がない」というのはそういう意味だったんです。ふたりは劇中、最低限の過去を語りはしますが、必要以上に「自分語り」をしません。
金子監督:うん。見やすい形、映画の文法で提示していながら、ふたりは新鮮だというのがいいところかもしれないですね。さらに脇のキャスト、川田広樹さん、秋本奈緒美さん、竹中直人さんたちがゲストのような形で登場することで、逆にふたりの世界が真実のように見える作りになっている気もするんですよね。
 
──大人たちは必要以上に介入しない、ふたりの世界の輪郭を補強する程度の役割ですよね。川田さん演じるレンタルDVDショップの店長の存在は、多少は夕紀のキャラクター設定に影響していますが、彼女の両親役、竹中さんと秋本さんの話していることの“他愛のなさ”はいいですね。
金子監督:(ストーリーと)全然関係ないんだもんね(笑)。この両親から夕紀が生まれたという感じが全然しないでしょう? レンタルショップの店長も重要な役に見えるかもしれないけれど、本質的に関わっていないんだよね。店長と奥さんの関係はきちんとしたお芝居になっていますが、店長と由紀とは芝居のようで芝居でないところがあります。関係ないといえば、バス停でのふたりの会話も特に意味も無いことをペチャクチャ喋っている。でもあそこが面白かったりするじゃないですか(笑)。
 
──たしかに。コンパクトな映画にも関わらず、そこで時間を消費してしまっているという(笑)。普通はああいう会話がアドリブだったりします。本作では花井さんのアドリブの台詞があるそうですが、バス停の場面では?
花井:アドリブは最後に叶子の部屋で言う台詞ですね。感極まって言ってしまったという感じです。
 
──あの台詞の重要さに対して、大人たちの言葉の内容は本当にどうでもいいんですよね(笑)。
金子監督:レンタルDVDショップで、川田さんが『噂の二人』(ウィリアム・ワイラー監督作)のことを延々と喋るのも反則といえば反則。普通、映画であんなことは言わないですよね(笑)。でも“本歌取り”とも取れるんじゃないでしょうか。
 
──無駄ともいえる部分や大人のキャラクターの置き方が、作品の風通しを良くしているかもしれません。
金子監督:ふたりと他の登場人物との関わりが描けていないという見方もできるかもしれないけどね。でも無駄も面白いという。
 
──想像で補えますしね。その『ジェリー・フィッシュ』、おふたりが大阪公開を迎えて感じていることを最後に訊かせてください。
大谷:やっぱりレズビアン、同性愛が大きなテーマとしてあるので、取っつきにくいという方もたくさんいると思うんです。私が映画を観るときって、好きな俳優さんの芝居や演出が気になるし、そういう視点からこの作品を観ると、感性をすごく揺さぶられるというか…何か不思議な力を持っているし、女として大きな意味で「いいな」と感じるんです。一般的にはどう捉えられるんだろう? と思っていたんですが、公開されてから色んな人に感想をもらって、いい意見が多かったことに安心できたし、びっくりしている部分もあって。そうすると、取っつきにくさを“もったいない”と思えるようにもなってきたんですね。観るなら好きなタイプの映画をご覧になると思いますし、お金を出して劇場へ足を運んでいただくのには勇気も時間も必要ですが、その一歩で何かが変わるんじゃないかな? と思っています。
 
──テーマに縛られたくはない?
大谷:レズビアンという世界観は非現実的かもしれませんが、女性なら自分と重ね合わせられる部分がたくさんあります。男の人に対する恋愛感情や嫉妬だったり、“女子あるある”がすごく詰まった映画だと思うんですよ。同性に観てもらえれば、きっと発見や懐かしんでもらえるところがあるので、その取っつきにくさをどうしたら取り払えるんだろう? というのは最近すごく考えることですね。もし、これを読んで下さっている方がいたら、何かの縁だと思いますので、ちょっと勇気を出して是非観てほしいです。
 
──花井さんはどうですか?
花井:映画の道へ進みたいと思うようになるまでに、新体操で挫折してからの1年間がありました。そのリハビリ中に映画をたくさん観て、それに救われたのがきっかけだったんです。こうして公開されて何千人かの方に観てもらって、その中にひとりでも前に進もうと思ってくれる方がいるかもしれない。私もそうで、映画の力で人生が変わりました。公開されてからもすごく嬉しいことがあったんですよ。
 
──どんなことだったんでしょう?
花井:実際に女の子同士の恋愛を経験して、この映画を観た人から何通かすごい長文のメッセージが届いたんです。その中に、「中学生の頃から同性を好きなのに、それを表に出せない状態だったのが、勇気を持って相手に言うと想いが伝わった」という内容のものがあって、読んだときにもう涙が止まらなかったんです。人生を変えるくらいの映画の力を感じて、この作品のオーディションに行った私にはもう感無量でした。すごい場所で仕事をさせてもらえたんだなと感謝しているし、観てもらえば金子監督、澪ちゃん、私が伝えたいと思っているのと違う感じ方や、考えに変化が生まれる“期待の膨らむ映画”だとも改めて感じているので、たくさんの人に観てもらいたい! と素直に思っています。
 
──おふたりのコメントを受けて、監督はいかがでしょうか?
金子監督:ふたりともしっかりしていてくれてよかったです。
 
──…すっかり“お父さんモード”(笑)になられているので、監督として一言お願いできますか?
金子監督:ああ(笑)。そうですね…女性に観てもらいたいという考えがスタートにありましたが、人を好きになるさまをふたりが演じているのを観て、男性・女性ともにいろんなことを感じてくれているようです。何回でも異なる角度から観られるタイプの映画になったと思うんですね。ですから映画館に来ていただきたいです。
 
──ところで、公式サイトの三人のトークを読むと、金子監督がおふたりと「カラオケに行きたい!」という痛切な思いが伝わってきます。その後、実現したんでしょうか?
金子監督:…いや。それがまだなんです(笑)。
 
 
【追記】この取材を行ったのは、舞台挨拶が行われた大阪公開初日前夜。翌日も金子監督に会う機会に恵まれたので、取材後、カラオケに行ったのかを訊ねてみると「行けませんでした…」とのこと(実現を祈りたい…)。
 
 (取材・文 ラジオ関西『シネマキネマ』)



(2013年10月 2日更新)


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Movie Data




(C)2013「ジェリー・フィッシュ」製作委員会

R-18文学賞Vol.2
『ジェリー・フィッシュ』 (R18+)

●シネマート心斎橋、
 T・ジョイ京都にて上映中

【公式サイト】
http://r18-jellyfish.com/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/162616/