「“映画館”って、その映画を観たくてお金を払って人が
集まってくるという不思議な空間。その空間のスクリーンの向こうに
自分がいられるのは僕の中では大切なことだし、一番魅力的なこと
なので、やっぱりこれからも映画をやっていきたい」
『監禁探偵』三浦貴大インタビュー
人気推理作家の我孫子武丸の原作を、出演作の続く三浦貴大と夏菜を主演に迎えて映画化した異色の密室ミステリー『監禁探偵』がテアトル梅田、シネ・リーブル神戸にて上映中。殺人現場に遭遇してしまった男と謎の美女。女に犯人だと疑われた男は彼女を監禁し、部屋から一歩も出ることなく、携帯電話とネットを駆使して事件の真相に迫るが……。人気TVドラマ『深夜食堂』の及川拓郎が脚本と監督を手がけた本作で主演を務める三浦貴大に話を訊いた。
――本作は、先の読めないミステリー劇ですが、最初に脚本を読まれた時はどう思われましたか?
「想像もしなかった結末に驚きました。「こんな人いたっけ?」「この人は誰だったかな?」と思ったり(笑)。それでもう一度脚本を読み返してみると「こんな伏線があったのか!」と色々発見があって、自分がその伏線を作っていく作業が出来るということを、すごく面白そうだなと思いました。ただ、夏菜さんとのほぼふたり芝居なので出演している時間が長いというところに不安8割、楽しみなのは2割くらいでしたね(笑)」
――本作は、サウンドノベルゲーム『かまいたちの夜』のシナリオを担当した人気推理作家・我孫子武丸のコミックが原作とのことなんですが読まれましたか?
「撮影に入る前は読んでないです。原作モノは読まないようにしていて。以前、出演した作品でもともと原作を知っていたものがあったんですが、やっぱり原作のキャラクターに近づけようとしてしまうんですよね。それで、あまりよくないなと思って(笑)、最近は読まないようにしています」
――謎解きを扱った作品ならではの、分かっていることや隠していることを表現する演技のバランスが難しかったのでは?
「本当に難しかったです。そこはもう監督と相談しながらという感じでした。伏線を出すべき部分は監督に決めてもらい、どんな人物でこの後どうなるとかは考えず。ふとした時に表情に出てしまうことがあるので、その場の芝居をするように心掛けていました」
――今回、三浦さんが演じられた亮太という役は、どこか過去が謎めいています。映画の中で詳しく描かれているわけではありませんが、どんなイメージを持って演じられたのですか?
「亮太も(夏菜さん演じる)アカネもなんですが、監督から“役の履歴書”みたいなものを貰ったんです。本編とはまったく関係がない監督の頭の中の話ですが、こういう人物でこういう育ち方をしましたというような。そういうことは今まで自分で考えていたので「決まったものがあるのか!」と、新鮮でした。また、そこから想像が膨らむということもありますしね。ただ、亮太を演じる上で一番大事なのは人との距離感だと思っていました。ほんとに微妙な距離感なんですが、大体このくらいから先に入られると亮太は嫌なんだろうなとかを感じながら演じられればと思って。その辺りは僕と亮太の似ている部分でもあったので理解しやすかったし、すごく演じやすかったです」
――前作『桜並木の満開の下に』で舩橋淳監督に取材した時に、三浦さんのことを「目で感情が表現できて、佇まいそのものが映画的」と絶賛していました。普段から演技をする上で気を付けていることはありますか?
「そんなに気を付けていることはないですけど(照笑)、あまり芝居しないということですかね。僕は芝居が下手なので、芝居をすると成り立たないんです。だから、そこに居て台詞を喋るということにすべてを掛けるだけ。こういうキャラクターだからこういう喋り方をして、とかはあまり考えてないですね。気持ちだけ理解しておいて、その場にいて言うべきことを言う、ということに集中しています。俳優の中には見事にキャラクターを作って来られる方もいて、そういうのを観るのは大好きなんですけど、僕には出来ないので(笑)」
――及川監督の演出で印象に残っていることはありますか?
「実はあまり記憶がないんです(笑)。1年前に7日間くらいで撮影した作品ですが、狭いセットの中で本当に監禁されてたような状態で(笑)。そんな中で撮影していると僕も夏菜さんも自分で何をやってるのかよく分からなくなってきていました(笑)。そんな僕らに、心情は変わっていくがキャラクターとしての芯をブレさせず、細かいテンションの上がり下がりを監督は指導してくださいました。あと、密室劇で動けるスペースが少ない中で、どれだけ動きをつけられるのかなども細かく話しながら作っていきましたね。これは僕の想像なんですが、監督はカメラのアングルにもすごくこだわっていたと思います。狭い空間だからカメラのアングルを変えたらカットを割らないといけない。そのためには同じ演技を何度もしないといけないんですよね。狭くてカメラを置く場所もなく、夏菜さんが縛られているベッドをみんなで移動させたり、壁をはずしたり(笑)。大変でした」
――カメラのアングルと言えば、本作は夏菜さんのサービスショットが満載ですよね。
「監督が「エロいけどエロ過ぎない。見えそうで見えないのが一番いい」とおっしゃってたので、僕は「なるほどな」と思っていました(笑)。でも、同じ撮影現場にはいましたが、だいたい背を向けていたり扉の向こうにいたりする役だったので僕は何も見てないんです。だから出来上がった作品を観て「僕の後ろはこうなってたのか」と(笑)」
――映画の中で亮太はどこかアカネに転がされているような関係でしたが、実際の三浦さんと夏菜さんはどんな感じでしたか?
「すごい…転がせてくる人でした(笑)。こんなこと言うと、怒られそうですけど(笑)。7日間しかなかった撮影でしたが夏菜さんは昔から知っている地元の友達と喋っているような感じでいられて演じやすかったですし、本当にアカネと亮太の関係性に近いものがありましたね。映画の中で亮太はアカネよりも優位な立場に立とうとするけど、結局無理という感じ。撮影も後半になると普段の雰囲気をそのまま芝居に反映する感じになっていました(笑)。初共演な感じは全然しなかったです」
――これまで映画を中心に活動されていますが、そこにはこだわりが?
「昔からあまりテレビは見なくて、“映画館”が好きなんです。自分が観に行くのもモチロン好きだし。“映画館”って、その映画を観たくて、お金を払って人が集まってくるという不思議な空間ですよね。そんな空間のスクリーンの向こうに自分がいられるのは僕の中ではすごく大切なことだし、一番魅力的なことなので、やっぱりこれからも映画をやっていきたいなと思っています」
――どんな映画がお好きなんですか? またこれからはどんな作品に出てみたいですか?
「ロードムービーとか好きです。なんでもない映画というか…。こうだからこうなるみたいな、あまり理由があるものは好きじゃないかも。世の中には訳が分からないものっていっぱいありますよね。茨城かどこかに撮影に行った時に、人が入れない崖の上にベンチが置かれてあって(笑)。全然意味が分からないですよね(笑)。無駄だし理由もないけど、そこにあるっていう(笑)。そういう感じで、理由や答えのない作品って、自分の中で妄想が膨らむじゃないですか。言いたいことは結局なんだったんだろうとか、あの人は何を考えていたんだろうとか、そういうのが好きです(笑)。答えを出さないものが好きですね。ただ、モノを作りたい人って自分の中に伝えたいことを持っていると思うので意味がない作品って、なかなかない(笑)。でも、いつかそんな作品にも出られるといいなと思います」
(2013年6月 3日更新)
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三浦貴大●1985年、東京生まれ。父は三浦友和。母は元歌手の山口百恵。2010年、『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』でデビュー。 同年の日本アカデミー賞新人俳優賞、報知映画賞新人賞を受賞。主な出演作品は、『麒麟の翼~劇場版・新参者~』『わが母の記』『劇場版SPEC~天~』『あなたへ』『BUNGO~ささやかな欲望~』の「告白する紳士たち」『幸福の彼方』』『ふがいない僕は空を見た』『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』など話題作多数。2012年、第86回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞を
Movie Data
(C)2013『監禁探偵』製作委員会
『監禁探偵』
●6月1日(土)より、
テアトル梅田、シネ・リーブル神戸
にて公開
【公式サイト】
http://kankintantei.com/
【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/161601/
【STORY】
あるマンションの一室で、一人の女が刺殺された。その現場に遭遇した亮太は、同じく現場に居合わせた謎の美女アカネに犯人だと思われてしまう。仕方なく亮太は、アカネを監禁し、部屋にいながら真犯人を見つけようとするが、アカネが意外な提案を持ちかけ……。