インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > 「誰も私のことを見ないでほしいと感じることで、 自然と立ち振る舞いも、発声も変わりました」 『モンスター』高岡早紀会見レポート

「誰も私のことを見ないでほしいと感じることで、
自然と立ち振る舞いも、発声も変わりました」
『モンスター』高岡早紀会見レポート

人々からバケモノ扱いされ、醜い容姿を蔑まれるも整形手術を繰り返し、絶世の美女へと変貌した女が、過去への復讐と真実の愛を求めてさまよう姿を描く衝撃作『モンスター』が4月27日(土)より、大阪ステーションシティシネマほかにて公開。30万部を突破した百田尚樹のベストセラーを完全映画化するべく、高岡早紀が7年ぶりの映画主演を務め、醜い高校生時代から美女へと変貌した現在までのすべてを特殊メイクを施し自身で演じきる。そこで、公開を前に来阪した高岡早紀が会見を行った。

――今回の作品では、ひとりの女性でありながらもふたつのキャラクターを演じられたような感覚だったんでしょうか?

 
「そうですね。私的には(今回演じた和子は)高校生時代から徐々に整形して段階を踏んでいるので、撮影が終わった時にはふたつ以上の何人かの女性の人生を演じ終えたような感覚になりました」
 
――最初の整形手術(目)を終えた和子が「チクショー」と叫ぶシーンは、彼女の新しい表情がダイレクトに伝わってきて印象深かったです。
 
「私自身、どんなシーンになるのか全然想像出来ずに演じていましたが、あのシーンが印象に強く残った方は多いらしいです。瞼に厚いものを貼った特殊メイクをして、視界が狭くて本当に見えづらかったんですが、彼女はその視界で人生をずっと過ごしてきたんですよね。たった8万円の整形手術で、視界だけでなく、心に持っていた深い闇がちょっと薄れて、その爆発が「チクショー」という表現に繋がった。あのシーンは、憑き物が落ちたかのような感じですね」
 
――特殊メイクにはどれくらいの時間かかっているのですか? やはり視界が狭いことも含めて演技をするのは不自由でしたか?
 
「メイクは2時間です。そんなに驚くほどかかるわけではないんですが、ストレス溜まりまくりでした。溜まりまくりのところで(「チクショー」を連呼する)あのシーンがあったから良かったのかもしれないですね(笑)」
 
――特殊メイクだけではなく、立ち振る舞いなど役作りとして何か気をつけたところはありましたか?
 
「もし、和子になったら…。素直すぎる答えになるけど、メイクをしてそういう人生だと刷り込ませると、人から目立たないようにして、誰も私のことを見ないでほしいと感じることで、自然と立ち振る舞いも、発声もそういったものになりました。お母さんからも「裏口から入りなさい!」と言われるくらいだから…。ヒドイお母さんですよね」
 
――原作者の百田尚樹さんとは何かお話しされましたか?
 
「撮影中、和子のフルメイクをしている時に現場へご挨拶に来てくださったんですが、最初はこちらを見てくれなかったです…。でも、その後、和子の顔を見た時は本当に驚いて、2,3歩後ずさりしてましたね(笑)。「間違いないと思った」とおっしゃっていただきました」
 
――今回、女性監督ですが、男性監督とは違うと感じたところはありましたか?
 
「女性監督とは数えるくらいしか仕事していなくて、今回のようにガッツリと組むのは初めてでした。男性監督と違う大きな点は、多くの男性監督の場合、私が思う女性像を私側から強く提示することが出来るけれど、女性監督の場合は監督の思う女性感があり、監督の思う和子像を持ってるので、それでいつもに増して結構ディスカッションしてました」
 
――どういったディスカッションを?
 
「お互いのキャラクターのイメージが全く違うというわけではないんだけど、女性としての細かなことを話し合って作り上げました」
 
――女性監督をはじめ、スタッフも女性が多いようですね。
 
「特殊メイクの江川さんも女性です。彼女とは10年くらいの付き合いで『忠臣蔵外伝 四谷怪談』の時も散々苦労した中でお世話になり、今回も彼女だから任せられるところがあります。どんなメイクをされても彼女なら安心出来るんです」
 
――撮影の方も女性なんですね。光の感じが柔らかく、映像が綺麗でした。女性のカメラマンはまだ日本では少ないと思うのですが。
 
「そうですね。今回の大沢さんは女性カメラマン独特の、女性を撮る時のこだわりを凄く感じ、『KYOKO』という作品でご一緒したアメリカの女性カメラマンの撮影を思い出しました。実際、完成した作品を観ても独特の色使いで、ブルーにこだわっていたり…。優しいんですよね、色が」
 
――そういった映像の色味ももちろんですが、映画の中で印象的だったシーン、注目して欲しいところはありますか?
 
「お母さんに可愛がってもらえないシーンでしょうか。「本当におまえは!」と言って殴られる場面は本当に痛かったです。親から可愛がってもらってないというのがすごく伝わるシーンだと思います。そういうのがちゃんと見えなかったら、和子がどのような幼少時代を過ごして来たか、その後の人生も見え方が薄くなりますもんね。ちゃんと痛みを感じ、それが映画にも映っているということが和子の人生としてちゃんと表現出来ていると思います」
 
――今回、エンディング曲を歌われていますね。
 
「21年ぶりです(笑)。以前からずっと機会があれば歌を歌いたいと思っていました。今回、山下洋輔さんがピアノを弾いてくれたんですが、実は、私の父がジャズのライブハウスをやっていた繋がりで山下さんと父親が大親友だったんです。幼少からの付き合いなので、父が亡くなった後は山下さんが父親代わりのように…と、ご本人が言っているだけですが(笑)、可愛がっていただいてます。「いつか君はジャズを歌わないといけないよ」と言われていて、今回良いチャンスを頂いたので、直接私からお願いしてやらせていただきました。和子の悲しみとは全く逆で、洋輔さんの大きな愛に包まれたレコーディングでした。あの曲の詞は私が選んだんですが、和子の為にあるような詞で彼女の悲しみを愛で包んでくれるような。この映画のエンディングとしては良いなと思いました」
 
――映画を観た後、穏やかな気持ちで終われます。曲を聞いてこの映画は完結ですよね。
 
「そうですね。詞は物悲しいけど、和子がちょっと救われるでしょう」
 



(2013年4月26日更新)


Check
高岡早紀

Movie Data

(C)2013 「モンスター」製作委員会

『モンスター』

●4月27日(土)より、
大阪ステーションシティシネマほかにて公開

【公式サイト】
http://monster-movie.jp/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/161813/