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観客の想像を超えるであろうファンタジーテイストで描かれる異色作
7年間、主演の鋼牙を演じてきた小西が撮影を振り返る
『牙狼 GARO ~蒼哭ノ魔竜~』小西遼生インタビュー

 雨宮慶太監督によるアドベンチャー・ファンタジー人気特撮シリーズの劇場版第2作『牙狼 GARO ~蒼哭ノ魔竜~』が2月23日(土)より、梅田ブルク7ほかにて公開。小西遼生が扮する“牙狼”の称号を持つ魔戒騎士・冴島鋼牙が魔獣ホラーと死闘を繰り広げる姿を描き、特撮ファンを魅了した同シリーズ。その集大成ともいえる本作は“約束の地”と呼ばれる異空間を舞台に、愛用してきた武器(牙狼剣、魔法衣、魔導輪)を失った鋼牙の新たなバトルを描く。敵役のジュダムを演じるのは日本アカデミー賞女優の松坂慶子。役者人生初のワイヤーアクションに挑んだ彼女にも注目だ。そこで、劇場公開を前に来阪した主演の小西遼生にインタビューを行った。

 

――まず、シリーズ7年間、鋼牙を演じてどのように感じていらっしゃいますか?
 
「時間経過と共に一緒に歩んでるような感じですね。自分と鋼牙が一緒にいるみたいな気がしています。今までは戦う男の話だったんですが、今回の映画は戦いからは一歩離れた鋼牙の人間像が描かれているので、また自分の中で再発見することが多く「ここまで大きな奴になったかぁ」と思いましたね。」
 
――7年間同じ役を演じるにあたって制限されていたことはありますか?
 
「毎回その時の自分自身の血を通わせないと、この役を7年やる意味が無いと思っていましたので、毎回印象を変えたいと思っていたんです。純粋に必死でやるしかなかった第一期~成長~余裕~貫禄が出たらいいなと。そして、今回は自分の運命だけじゃなく大きな規模での命を背負い、より男らしさをイメージしました。なので制限することはなく幅を広げていくような感じでした。」
 
――大女優、松坂慶子さんのアクションはいかがですか?
 
「立ち回りは当日現場でつけられるんですが、自分の役で消化して見事に演じられていて「すごいな」と思いました。「踊りをやってたからそれに助けられた」というようなことをおっしゃっていましたけど、ワイヤーで吊られるのって自分で体の芯を作らないといけないし、経験がないと体が持っていかれたり難しいんですが、それを本当に見事にこなしておられました。」
 
――すごいですね。では、一緒に演じるのもスムーズに出来ましたか?
 
「監督が松坂さんに「鋼牙役の小西は相手のモノを受けるのが上手いから安心して演じてください」と事前に言っていたらしくて、松坂さんもすごく信頼して演じてくださったので緊張があまりなくて良かったですね。」
 
――アクションは『牙狼 GARO』シリーズに携わってから勉強されたんですか?
 
「そうです。でも、今までアクションとか一切やったことなかったので、勉強というより現場で叩き込まれた感じですね。ぼくの運動神経に関してはイチかバチかだったんじゃないかな(笑)。ぼくはどちらかというと体も硬いし不器用な方なんです。最初は本当に出来なかったので、人一倍頑張りました。アクションが出来るようになったのは、実戦経験をたくさん積ませてもらえたからです。」
 
――今回なんて作品を観る限り、ほぼグリーンバックでの撮影だっただろうと予想出来ましたけど、撮影は大変じゃなかったですか?
 
「現場にこの映画を観て感じるファンタジーさは無いですよ(笑)。緑と機械しかない無機質な感じですから(笑)。グリーンバック自体は『牙狼 GARO』シリーズで散々やってるので慣れてはいるんです。ロケーションがあって、そこにプラスアルファをグリーンバックで撮るということが今までは多くて、繋がり的に場所を想像しやすかったですし。だけど今回は、ほぼ全編グリーンバックで最初から最後まで世界観を自分で想像しなくてはいけない。グリーンバックでの撮影はその想像が大事でした。自分がキャンバスにどのように想像するかで芝居が変わってしまいますから。」
 
――なるほど。確かにそれは大変ですね。
 
「しかも、監督のイマジネーションをぼくも共有しないといけない。だけど雨宮監督のすごさはこの独創性だと思うんですよ。『牙狼 GARO』シリーズのキモになってるところがその世界観ですし。でも、独創性っていうのは人が想像できないから独創性って言うんですよね。ラフスケッチと監督の言葉だけで世界観を想像しなくてはいけないというのが本当に大変でした。あと、その世界の奥行きや高さのピントを合わせないといけない。そういうのって現場で演じると地味に難しいんです(笑)。でも面白いんですけどね(笑)。」
 
――ははは(笑)。あと、ずっと険しい顔してますが、それは辛くないですか?
 
「いや、今回は穏やかな方なんですよ(笑)。今回の特徴的な変化として、いわゆる今までの敵だったホラーはほとんど出てこないというのがあります。いつもだったら険しい顔して戦っていましたが、今回はカラフルでファニーな世界で、敵意は無く「歌え踊れ笑え」と言われ困惑する鋼牙が面白いと思います。だから意外と穏やかなんですよ。今までに比べたらね(笑)。あと、CGの世界って今までの『牙狼 GARO』シリーズにもありましたが、7年間で技術が発達して違和感なく溶け込んでるのもポイントだと思います。」
 
――現場でのエピソードはありますか?
 
「今回の映画は“モノ”をテーマにしてるから、監督から各パートへ「自分で考えてモノを作る」という提案があったんです。ぼくのアイデアも作品にふたつ入ってるんですよ! ひとつは「今まで仲間だった(指輪の)ザルバと戦うシーンとかお客さん観たいんじゃないですかね? オレも戦いたいです。」と言ったら採用してくれました。もうひとつはラストシーンです。これは詳しくは言えませんけど、敵意の無い相手と純粋に剣を交える楽しみが描かれています。あのシーンの鋼牙はいい顔してますし、自分でも楽しかったですね。そういった感じでCG部や美術部なども何かしらそれぞれのアイデアが盛り込まれています。要はみんなでひとつのモノを作るということを実感させたんですね。映画の中にたくさん妖精が出てくるんですが、ぼくが作った妖精も出てくるし、現場にいるスタッフがみんなそれぞれひとつの妖精を作りました。ひとりひとりの愛情がこもってる作品ですね。」
 
――では、現場は和気あいあいとしてそうですね。
 
「いや。『牙狼 GARO』シリーズはアットホームだと思われてるんですけどね……、すっごい仲いいですよ! 」
 
――ははは(笑)。あ、仲いいんですね。仲悪いと言うのかと思ってびっくりしました(笑)。
 
「仲はいいんですけどね、怒鳴り声も飛び交うし、寝る間もないスケジュールだったりで和気あいあいと楽しんでやってますといった感じではありません。ただ仲は本当に良くてみんなモノを作る喜びに溢れてる現場という感じで面白いですよ。」
 
――なんだか素敵ですね。本作で鋼牙は終了とのことですが、今後はどんな役に挑戦したいですか?
 
「いろんな役やりたいですけど、『牙狼 GARO』シリーズが2次元っぽい役なんで、逆に人間臭い役や悪役というか業の深い役にも挑戦したいですね。あとね、時代劇もやりたいんですよ。」
 
 
 観客の想像を超えるであろうファンタジーテイストで描かれる異色作に仕上がった本作に、小西の言葉の端々から自信とこだわりが見えた。長身で端正な顔立ちに『牙狼 GARO』シリーズで見せた凛々しい表情や立ち回りは、時代劇にもピッタリはまりそう。本作はもちろん、彼のこれからの活躍を期待せずにはいられない。



(2013年2月21日更新)


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小西遼生

Movie Data


(C)2012 雨宮慶太/東北新社

『牙狼 GARO ~蒼哭ノ魔竜~』

●2月23日(土)より、梅田ブルク7ほかにて公開

【公式サイト】
http://garo-project.jp/SOUKOKU/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/161091/