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肺の遺伝性難病を移植によって乗り越えた
奇跡の双子アナベルとイサベルの姿を追ったドキュメンタリー
『ミラクルツインズ』イサベル・百合子インタビュー

 

 生まれながらにして肺の難病を抱えながらも、決してあきらめることなく、新しい肺を手に入れて呼吸する力を手に入れた日系アメリカ人の双子アナベル・万里子とイサベル・百合子の姿を追ったドキュメンタリー『ミラクルツインズ』が、12月28日(金)まで第七藝術劇場にて、その後12月29日(土)~1月11日(金)まで京都みなみ会館にて公開される。どんな時も互いを励まし、手をとりあって生き抜こうとする姉妹とふたりの家族、そして関係者の証言をつなぎ合わせた感動のドラマが綴られている。本作の公開にあたり、イサベル・百合子が来阪した。

 

 まず、本作の撮影が始まったきっかけは?

 

「私たちが書いた「ミラクルツインズ」という本の出版記念ツアーで日本に来る予定が元々あったんです。その時に講演をする予定になっていたので、誰か撮影してくれる人を探していたら、たまたま私の夫が監督であるマーク・スモロウィッツと知り合って、彼が日本に来て撮影してくれることになったんです。それが2009年の10月でした。日本では10月が移植推進月間になっていたので、私たちが書いた本も10月に出版することになっていたんです。監督は、アメリカと日本の移植状況を比べることで映画を撮ることができると思っていたようです。監督は、人の気持ちを引き出すのがとても上手なので、移植の現実に寄ったドキュメンタリーではなく、様々な人のパーソナルストーリーが入った映画になっていると思います」

 

 では、そのように自身の体験本を書いたり、各地で講演を始めるようになったきっかけは?

 

「私の病状が末期の時に、あくまでも個人的なこととして自分の人生を残すために本を書いたんです。書くことによって私の気持ちも癒されました。それに加えて、病気を抱えている人にとっては希望が必要なんです。本によって、生きる意欲や強い気持ちがあれば、病気を乗り越えることができることを伝えたいと思いましたし、もちろん移植の素晴らしさも伝えたいと思いました」

 

 アメリカでは決して珍しいことではない移植手術だが、日本では脳死の観点からあまり行われることはない。そんな日本での移植手術の事情についてはー

 

「1998年頃に初めて、移植が難しいという日本の現実を知りました。私の母が日本人なので、日本人の文化や“死”の概念については理解していますが、世界中でどんどん移植が増えている中で、日本ではどうして移植が増えないのかという思いはあります。日本人がもっと臓器移植や脳死について本当に理解すれば、もっと移植は増えていくと思います」

 

 移植と言っても、アメリカでも順番待ちが当たり前で、タイミングが合わず、命を落としてしまう患者も。アナベルとイサベルも幼少期から闘病生活を送り、ようやく現在のように健康に過ごせるようになるまでには様々な困難を乗り越えてきたのだ。それには、双子に生まれたことが大きな励みになったようでー

 

「双子に生まれたことは、すごく恵まれていたと思います。双子だったからこそ、病気でもお互いが支えになりましたし、孤独感を感じたことはなかったです。でも、お互いに比較することはありました。この病気は重い病気なので、過酷な生活を強いられることもありましたが、双子として生まれたことも、辛いことを一緒に乗り越えていくのも運命だと感じていました。私たちは一卵性双生児なので、遺伝子は同じですが、経験したことは違います。健康状態も違いますし、私は早くに結婚しましたし、その時々でお互いに対して思うことはありました。でも、ふたりとも依存し合って生きていくのではなく、独立して生きなければいけないと思っていました」

 

 そのように闘病生活を送った経験から、イサベルは現在、病気の子どもを抱える親のフォローをするケースワーカーとして働いている。なぜ、今のような仕事をしようと思ったのだろうか。

 

「どうしても仕事をしたかったんです。仕事をすることが普通の生活だと思っていましたし、普通の生活がしたかったんです。私は、病気を抱えながら育ったこともあって、苦しいことがたくさんあるのが人生だと思うんです。それは、病気を抱えた人だけではなくて、健康な人もそうですよね。私が経験してきたことが全て今につながっていると思います」

 

 では、最後に病気になって感じたこと、得たこととはー

 

「いいこともありました。それは、毎日やりたいことをやるという決断をする生活をしていたことです。それは感謝しています。私にとって“後”は存在するかわからなかったので、“後でする”ということはできなかったんです。私は、病気になった経験から、愛と時間が一番大切だと痛感しました」

 

 どんなに苦しくても生きることを諦めず、前向きに生きる、苦しい中からも希望の光を見出す彼女たちの姿に勇気をもらえる、奇跡のドキュメンタリーだ。

 

(取材・文:華崎陽子)




(2012年12月20日更新)


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Movie Data



(C)Twin Triumph Productions, LLC

『ミラクルツインズ』

●12月28日(金)まで、
第七藝術劇場にて上映中
●12月29日(土)~1月11日(金)、
京都みなみ会館にて公開

【公式サイト】
http://www.uplink.co.jp/miracletwins/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/160325/