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「ああ!恋してえー!!と思わず叫んでしまうような、
過剰でこじれた恋愛喜劇を作りたい」
『恋に至る病』木村承子監督インタビュー

 恋愛の“理想”とは一体、何なのか? 我妻三輪子、斉藤陽一郎、佐津川愛美、染谷将太が風変わりな四角関係を演じる異色恋愛劇『恋に至る病』が、12月8日(土)より第七藝術劇場、12月15日(土)より神戸アートビレッジセンターにて公開。新鋭・木村承子が脚本と監督を務め、日本公開を前にベルリン映画祭、香港映画祭などで上映され、高い評価を集めている。高校生のツブラは、生徒の顔をまともに見ることすらできない生物教師マドカのことが大好きで、生物のノートに彼のクセとその意味をイラストで描きとめている。そんなツブラは“自分とマドカが溶け合ってひとつになれば丁度いい”という妄想を抱いており……。人気のテクノポップバンド、アーバンギャルドが主題歌『子どもの恋愛』だけでなく劇中音楽も担当していることも話題な作品だ。そこで、木村承子監督にインタビューを行った。

 
――まず、性器交換という今までに見たことのないショッキングな発想はどこから?
 
「独占欲を突き詰めるとどこまでいくのだろう? という疑問が、ずっと自分の中にあり作品にしたいと思っていました。資料を集めるうちに“女性の体は一生変化し続けて、すべてを飲み込むように出来ている”という言葉を発見し、この設定が生まれました。独占欲が果てまでいくと相手の人には一番見せられない部分(性器)すら自分の身体の中に飲み込んでしまいたいと思うだろう、そして自分の性器すら相手に明け渡したいと考えるに違いないという感じで思いつきを膨らませて脚本を書いていきました。」
 
――面白いですね。女子高生が先生に純粋な恋をすると言えば「高校教師」を連想しましたが、まったくテイストが違ってこの作品はとことん明るいですね。ポップな映画にしたいと最初から思っていたんですか? また、それはどうしてですか?
 
「ポップな作品にしたいと最初から思っていました。それは従来の恋愛ドラマみたいな美しくてスタイリッシュな恋なんて絶対に自分は出来ないだろうというコンプレックスの裏返しからです。シリアスに恋模様の美しさや切なさを語るんじゃなくて、滅茶苦茶で自分勝手な部分や暴走して恥ずかしい部分など普段かくしてしまうような恋愛の側面を明るく描きたいと思いこのような作品に仕上がりました。」
 
――では、出演者の名前がみんな“円”なのはどんな意味が?
 
「四人がそれぞれ抱えたコミュニケーション不全の問題を解決して、まるくひとつに繋がって欲しいという願いからつけました。」
 
――そんな意味が込められていたんですね。中でも、主人公ツブラの天真爛漫っぷりがキュートでしたが、あのキャラクターはどのように生まれましたか?
 
「“好き”という思いのみで暴走できる、思春期女子を煮詰めたような存在を作りたいという思いから生まれました。ツブラがここまでパワフルな存在になったのは我妻さんの魅力のおかげです。撮影中、役でマドカ先生に冷たくされると本人もかなりへこんでいて、そこまでツブラにのめり込んでくれたんだなーと感動しました。我妻さんご本人もとても元気でキュートな方で、本当にこの人にツブラ役を演じてもらって幸運だったと思いました。」
 
――では最後に、今後どのような映画を撮っていきたいとお考えですか?
 
「奇妙な恋愛物語をどんどん生産していきたいと思います。『恋に至る病』を撮り終わった時、次は恋愛モノじゃなく毛色が全く違うものを…と思ったのですが一向に筆が進まず、やっぱり一番興味があるものじゃないとダメなんだなーと思いました。お客さんが見終わった後「ああ!恋してえー!!」と思わず叫んでしまうような、過剰でこじれた恋愛喜劇を作りたいです。」
 
 毎年たくさんの新人監督による作品が生まれていく中で、『恋に至る病』という作品が放つ個性は群を抜いている。機材の発達によって映画を上手く綺麗に撮ることが容易になった今、求められるのは個性。新人監督・木村承子にはこれからも注目し、応援し続けたい! 『恋に至る病』はそう思わせる作品だ。それを是非、劇場で確かめていただきたい。



『恋に至る病』公開記念リレーインタビュー

 

●我妻三輪子インタビューはこちら
●染谷将太インタビューはこちら

(2012年12月 6日更新)


Check
木村承子 監督

Movie Data

(C)PFFパートナーズ

『恋に至る病』

●12月8日(土)より、十三・第七藝術劇場にて公開
●12月15日(土)より、神戸アートビレッジセンターにて公開

【公式サイト】
http://www.koiniitaruyamai.com/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/157634/