ホーム > インタビュー&レポート > あなたの今年1番面白かった映画になるはず! 女性はもちろん男性も楽しめる奇想天外なラブ・ファンタジー 『ミロクローゼ』石橋義正監督インタビュー
映画『狂わせたいの』や『バミリオン・プレジャーナイト』、『オー!マイキー』などのテレビ番組にて映像作家としても活躍する石橋義正監督が、人気・実力ともに兼ね備えた俳優、山田孝之を主演に迎えて描く奇想天外なラブ・ファンタジー『ミロクローゼ』が、12月1日(土)よりテアトル梅田、シネマート心斎橋、以降は京都シネマ、元町映画館にて順次公開される。神秘的な美女に恋をする子どものような外見の会社員、オブレネリ ブレネリギャー、草食系男子の悩みを一刀両断する青春相談員、熊谷ベッソン、何者かにさらわれた恋人を探す片目の浪人、タモンという愛のために生き、愛に迷い、愛のために突き進む3人の男すべてを山田が演じている。そんな本作の公開を前に石橋義正監督に話を訊いた。
――この作品は本当にオリジナリティに溢れていますね。
「最近、漫画やテレビドラマなどの映画化が多くなってきていて、それ自体を駄目だとは思いませんが、映画そのものとして成立する企画が少なくなっている状況をなんとか変えたいと思っていました。子供の頃から映画が好きでこの世界に入りましたし、映画から発信していくようなものを撮りたいんです。漫画の映画化って結局、漫画の方が面白いと言われることが多くて、商業的なこと以外で映画にする意味を感じられないんですよね。もし、商業的に成功させる目的であっても映画から始まり、その次の展開へ発展するようなものになるのがベストだと思っています。作り手がそういう動きをしていかないと何も変わらないんですよね。」
――そう思うと『ミロクローゼ』は細かいところまでかなり凝ってますし、色んな展開が出来そうですね。
「色々スピンオフが考えられますね。例えば、絵本から抜け出してきたようなイメージで作ったオブレネリ ブレネリギャーの話は、これを元に絵本を作りたいという気持ちもありました。また、青春相談員の熊谷ベッソンの話は、ラジオ番組などのミニコーナーでお悩み相談のようなものが出来たら面白いなと。ベッソンの風貌というのは山田孝之さんでなくてもこの格好をするだけで熊谷ベッソンになれるので、50人ぐらいベッソンが出てきたりとか、男だけではなく女ベッソン、子供ベッソンなど色々いたら面白いかも(笑)」
――女性人気がたぶん一番高いと思われるタモンの話はどんな広がりを見せる可能性がありますか?
「タモンの話は、さらわれた恋人ユリを捜し求める話を広げてドラマとして作っていくことは出来るなと思ってます」
――それは是非観たいです(笑)! お願いします。この3種類の話はどこから始まってどのように広がっていったんでしょうか?
「まず断片的なイメージがありました。なんでもない少年をヒーローのように語り部が語っていくような話が面白いなというアイデアがあったり、タモンの立ち回りをスローモーションのシーンで作りたいと最初に思ったんです。そういう断片的なシーンをいくつか集めてストーリーに組み立てていく。オムニバスのような形ではありますが、あえてそれぞれの話を直接的に結びつけず別々に描きながら、主人公の人物像をひとりの人間に感じられるように出来ないかと思ったんです。それも、山田孝之さんが3役演じてくれることになったので成立出来ました。ひとりの人間でも色々な側面があって、弱い面やいい加減な面、激しい面も違う人物のように描きながら最後にひとりの人間に感じられるような実験的な要素をこの映画で組み込んでみました」
――その最初に思い浮かんだというタモンの立ち回りのシーンは、長回しな上に横と奥が絶妙なタイミングですべて繋がっていて圧巻でした。あれはどのように撮影してるんでしょうか? また、そのシーンでタモンが歌舞伎のポーズをするのはどういう発想からですか?
「江戸時代に絵金(えきん)という歌舞伎絵の絵師がいて、毎年7月に土佐で絵金祭りというお祭りが開催されているんです。そこで、ずらりと並んだろうそくと絵金の躍動感ある屏風絵を観たときにこのシーンを思いつきました。その絵はワンシーンづつ別々なんですが、それをひとつの巻物みたいに繋げてスローモーションで撮りたいなと。それで、その絵は奥に別の時限、別のシーンがあるように描かれているように感じられ面白いと思ったので、横に繋がりながら、奥も見せていくようなシーンを撮りたいと思いました。すごい激しいアクションの間に”見得を切る”場面を入れるというのは、位置が少しでもずれると一番大事なショットが狂いますから、かなり大変なんですけどね。まず、写真でレイアウトを整えてからムービーコンテというCGで作ったコンテに起こします。それからアクション監督とどういう立ち回りにしようかと相談し、アクションチームに演じてもらう。そこから山田さんに振り写しをするというすごい段階があるんです。何回も撮り直しましたが、あれは一発勝負で全員で一斉にすごい早いスピードで動いてもらってスローモーションカメラで撮影しています。なんやかんやで2年ぐらい掛かってしまいました」
――そんな段階を踏んでるとはすごいですね! ひとり3役というオファーを受け、この脚本を読んだ後の山田さんの反応はどうでしたか?
「ひとり3役が出来るというのは役者としてすごくやりがいのあることなので是非やりたい。他の人にこの役を取られる前にやりたいというぐらいの意気込みでしたね」
――監督から見た山田さんの魅力とはどんなところでしょうか?
「キャスティングには男の色気がある人というのを重要に考えていました。最近はスマートで綺麗な若い俳優さんが多いですし、人気もありますけど、山田孝之さんはめずらしく男の色気があるところに魅力を感じ、オファーに至ったんです。共演者の原田美枝子さんも完成した作品を観て「この映画は男の色気が出てて良かった」とおっしゃってくださったので、彼の魅力が引き出せたかなと思っています。撮影に入ってから分かった彼の魅力は、出演しているというより映画を作っているという意識が強くて、作り手の感覚に近くコミュニケーションが取りやすいところですかね。実際、映画祭で観客を前にして「素晴らしい仕事に携わってるんだな」と言って喜んでいたので、それは作り手の感覚に近いんじゃないかなと思います」
――山田さん以外にも気になるキャストがたくさん出演されてますが、とても面白い役で名監督・鈴木清順さんが出演されていますね。いわゆる“清順美学”に影響を受けてらっしゃいますか?
「もろに受けてる意識は無いですけど『ツィゴイネルワイゼン』は、中学生の頃に観て、すごい衝撃を受けましたし、日本映画であって日本映画らしくない、そういう突き抜けた作品を作られることに関して、ものすごく尊敬しています。ご本人のキャラクターも、面白い存在感が際立っている方なので、今回出演して頂けたのは嬉しかったですね。しかも頭を思いっきり叩いてますからね(笑)。しばらく清順さんの頭に手のひらの形がついてたんですよ。清順さんも本当に痛かったと思います」
――では、どういったものに影響を受けたとお思いですか?
「まず、中学の頃よく見ていた『モンティパイソン』や『サタデーナイトライブ』でブラックユーモアの影響を受けたのは大きかったと思います。笑いはブラックな方が断然面白いという感覚は中学の時に身についたかなと思います。あと、小学3年くらいの時にSF映画のブームが『スターウォーズ』から始まって、その時期にたくさん映画を観るようになりました。そこから映画の仕事に就きたいと思っていたので、その辺の影響は大きいですね。映像の中にオリジナルの世界がリアルに作られているということに興味がわいて、自分もそういった架空の世界を作りたいという思いが大きくなっていきました。ビデオが無い時代だったので『スターウォーズ』は結局7回くらい観て、劇中の音楽と一緒に内容を覚えて帰っていたのが、音楽と映像のタイミングやリズムなどのトレーニングになっていたんじゃないかという気がしています」
――ブラックユーモアやSFに影響を受けながらも最終的には恋をテーマに持ってこられた理由はありますか?
「恋をすることで人に優しくなれる。特に男性はお母さんが自分の子供に対して思うような本当に無垢な愛に目覚める機会ってすごく少ない気がするんです。どうしても自我が強くなると自分中心の恋になってしまいます。相手のことを思いやれるようになって初めて、そこから大きな広い愛に変わっていく。きっかけは何でもいいんですけど、恋はたくさんして、本当の恋をする相手を見つけだすことが男性にとって大事なことではないかなと思うんですけど、あまり言いすぎると説教臭くなりますかね(笑)。男性はあまりラブストーリーを観ないですよね。だから今回はベッソンみたいなぶっとばしたキャラクターも入れながら男性も楽しめ、タモンの純粋さも感じてもらえたらなと思っています」
構想から公開まで8年掛けたという本作は、先に公開された東京での映画館出口調査「ぴあ満足度ランキング」にてトップに輝いた。「まったく違う3人の人物を演じる山田孝之が凄い!」「山田孝之の演技のふり幅が素晴らしい」など、山田の演技を絶賛する声があがる一方で、「奇想天外でいろいろな要素が盛り込まれていて独特の世界観を味わえた」「アニメや舞台を観ているような感覚になり、登場人物を間近に感じられる映像に圧倒された」「それぞれの必死な恋が描かれているので誰かしらに共感できる」「恋に悩んでいる人、失恋した男子が観ると心の穴がふさがると思う」などの声が聞かれ、高い支持を集めた。大阪では12月1日(土)の映画サービスデー公開! あなたの今年1番面白かった映画になるかもしれません。是非劇場でご覧ください。
(2012年11月30日更新)
●12月1日(土)より、
テアトル梅田、シネマート心斎橋にて公開
【公式サイト】
http://www.milocrorze.jp/
【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/158570/
◆テアトル梅田
【日時】12月1日(土) 16:35の回上映後
【登壇者(予定)】 石橋義正 監督
【料金】通常料金(全国共通券使用可)
12/1(土)は映画サービスデー1,000円!
◆シネマート心斎橋
【日時】12月1日(土) 20:45の回上映後
【登壇者(予定)】 石橋義正 監督
【料金】通常料金(全国共通券使用可)
12/1(土)は映画サービスデー1,000円!
※詳細、お問合せは各劇場へ。