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「騙されても清々しさがあって、全体的に優しさが漂っている映画です」
一世一代の大勝負に挑む5人の姿を描いた予測不可能なストーリー
『カラスの親指』阿部寛インタビュー

 

 映像化不可能と言われてきた道尾秀介のベストセラー小説を、阿部寛を主演に迎えて見事に映画化した『カラスの親指』が11月23日(金)より大阪ステーションシティシネマほかにて公開される。プロの詐欺師・タケを演じる阿部と、彼の相方・テツにタレントの村上ショージ、そして彼らの元に転がり込んできた美人姉妹に石原さとみと能年玲奈、青年役に小柳友が扮した個性豊かなキャストも話題となっている。物語は、ネタばれ厳禁な部分が多く詳しくは書けないが、他人同士である5人が集まった奇妙な共同生活と、タケが背負う暗い過去にケリをつけるため一世一代の大勝負に挑む、5人の姿を描いた予測不可能なストーリーだ。そこで、公開を前に主人公のテツを演じた阿部寛が来阪。インタビューに答えてくれた。

 

 今年だけでも『麒麟の翼』でのシリアスな刑事役、『テルマエ・ロマエ』でのコミカルな古代ローマ人役、そして現在放送中のテレビドラマ『ゴーイング マイ ホーム』でのどこか頼りない器の小さい男の役など話題作への出演が相次ぐ阿部。本作では悲しい過去を抱えながらも狙った獲物は逃がさないプロの詐欺師という役どころだが、演じてみた感想を聞くと――

 

「詐欺師の役は初めてでしたが、演技の中で、さらに詐欺師としての演技をするという二重の演技が面白かったですね。まるでひとつの作品の中で数人分を演じていたような感覚でした」

 

 と楽しんで演技が出来たと語ってくれた。また詐欺師としてではなく、ひとりの男であるタケというキャラクターについては――

 

「周りに個性の強いキャストの方がたくさん出ていますので、僕はどんと構えて受け入れる役目に徹した方が面白いと思いました。役柄的にも悲しい過去を持っていて、それを越えられないという負の力に引っ張られている。全体的に周りを吸収していくような役にしたいと思って演じました」

 

 他の出演作品を含め、阿部の演技で特に素晴らしいのは、こういった周りとの関係性から生まれる絶妙な間や、そこから生まれる独特の存在感なのかもしれない。そして本作で意外にも息の合った好演を見せる、詐欺師コンビのテツを演じた村上ショージについては――

 

「オファーを頂いた時は、僕がテツさんを演じたいと思いました。それぐらい魅力的な役なんですよね(笑)。でも、すぐにやっぱりショージさんがピッタリだと思いました。僕とは畑が違いますが、いい意味での緊張感を持たれている方で、しかも関西弁ではなく標準語での演技だったので大変だったと思います。普段のショージさんは、すごく面白いし本当に優しい方なんですけど、演技の中でも少し引けを感じている部分を見せてくれたりするので、それが“テツさんそのもの”という感じでした。また、タケとテツの距離感というのは、ショージさんが作ってくれていたと僕は思います。僕の役は比較的ショージさんの役を突っぱねる役なので、そこに寄ってきてくれるショージさんが、距離感を作ってくれていたんです。だから僕も安心して演じさせてもらえました」

 

 と本格的な演技は本作が初めてとなる村上ショージを絶賛。また他のキャストについても印象を聞いてみると――

 

「撮影の半年前の本読みの段階から、若い子達がみんなしっかり出来ていて、すごいと思いました。撮影の後半はキャストみんなで過ごす時間が増えて、若い子達は若い子達同士で、わいわいと話をしていて、誰かに気を遣わなくてもいい、それぞれ、思い思いの事を自然な形で、普通の家族のような雰囲気になっていました。。 (笑)」

 

 本作で描かれる世界観同様の、和気あいあいとした自然な雰囲気が想像できる微笑ましいエピソード。キャストはもちろんスタッフも一丸となって作り上げた本作の見どころでもあるラストシーンについては――

 

「ラストは名作映画『スティング』を彷彿とさせる、日本映画史に残るようなシーンになると確信しています。ひとつの物語が終わって、またラストシーンから違う物語が始まるような感覚で演じました」

 

 と自信たっぷり。阿部が語ってくれたように、冒頭から仕組まれた伏線と最後のどんでん返しには、誰もが騙されるはず。しかしそれは騙されるとは言え、やられた! という腹立たしい感覚ではない。「この映画は騙されても清々しさがあって、全体的に優しさが漂っているんです」と阿部が語る通り、観終わった後に少しほっこりするようなエンタテインメント作になっている。できるだけ、前情報を入れずにこの清々しい感覚を劇場で味わってほしい。




(2012年11月20日更新)


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Movie Data

(C)道尾秀介・講談社/2012『カラスの親指』フィルムパートナーズ

『カラスの親指』

●11月23日(金・祝)より、
大阪ステーションシティシネマほかにて公開

【公式サイト】
http://movies.foxjapan.com/crow/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/158035/