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山田孝之が深夜ドラマに引き続き、
機械のように冷静沈着な“ウシジマ”に扮し、
お金の本当の怖さを伝える映画『闇金ウシジマくん』
山田孝之&林遣都会見レポート

 2004年から週刊『ビックコミックスピリッツ』で連載されている真鍋昌平の人気コミック「闇金ウシジマくん」。2010年に深夜ドラマとして放送され、話題を呼んだ本作をさらにスケールアップして映画化した『闇金ウシジマくん』が、8月25日(土)より梅田ブルク7ほかにて公開される。TVドラマでも主演を務めた山田孝之が、本作でも主人公の闇金業者“カウカウ・ファイナンス”社長・ウシジマ役に迫真の演技で挑み、『莫逆家族 バクギャクファミーリア』(9月8日(土)公開)、『悪の教典』(11月10日(土)公開)など出演作の公開が相次ぐ林遣都が、金集めに奔走するイベントサークルの代表を務めるチャラ男・ジュンに扮している。本作の公開にあたり、山田孝之と林遣都が来阪した。

 

 まずは、深夜ドラマから主人公・ウシジマを演じている山田に映画化されたことについて聞いてみるとー

 

山田孝之(以下、山田):ドラマを撮っている時に、監督から「映画にしたい」とは聞いていて、僕も30分の深夜ドラマだと色んな制限が出てくるので、それを映画になれば新しい試みができるだろうし、そうなればいいと思っていました。それからしばらくして、原作の絵を見せられたんです。それは、ウシジマが1、2cmぐらいの大きさで描かれた絵だったんですが、「こういうものを撮るにはテレビではなくて、映画じゃないとできないから映画化を実現したいんです」と改めて言われて、映画への期待が高まっていきました。テレビでは30分ということで急いでしまう部分が多かったんですが、改めて映画になって、ウシジマが小さく映っているようなシーンなど、映画ならではのことがたくさんあって、映画になってよかったと思いました。

 

 同じ事務所に所属している山田と林。本作で共演してみて、お互いの印象はどのように感じたのだろうか。また、作品でも俳優としても先輩である山田は林にアドバイスなどはしていたのだろうか。

 

林遣都(以下、林):今回、僕が演じたジュンという役がけっこうハードな役だったので、撮影中も何回かご飯に連れて行ってもらったりして、色々山田さんを頼りにしていました。

 

山田:僕は、ドラマで“ウシジマ”を経験しているので、山口監督が「細かいから、頑張れ」とアドバイスしていました。

 

 山田に “細かい”と評された山口雅俊監督。深夜ドラマから企画・脚本・演出を務めている監督だが、映画版での演出はどのようなものだったのだろうか。

 

山田:一度ドラマで“ウシジマ”は完成しているので、そこでの信頼関係があったのかドラマの時は、顔の角度から目線の角度まですごく演出が細かかったんですが、今回はあまり演出された記憶はないですね。僕は、ドラマの時の感覚を呼び覚ますというか戻るような感覚で演じていました。

 

:僕には、基本的にはスパルタでしたね(笑)。僕が演じたジュンは、色んな感情を表に出すキャラクターだったので、「こういう気持ちで演じてほしい」というように、ストレートな演出をされていました。撮影のスケジュールもいい感じにハードで、ジュンの役柄もめちゃくちゃハードだったので、役作りというよりは、現場で監督と一緒に発見しながらジュンのキャラクターを作っていった感覚で、僕はジュンと同じように毎日必死でした(笑)。

 

 本作で山田が演じたウシジマは、10日で5割の法外な利息で金を貸し付ける闇金業者“カウカウ・ファイナンス”の社長であり、債権者には冷静沈着に非常な取立てを行う、全く笑わないキャラクター。深夜ドラマからウシジマ役を演じる山田は、どのようにウシジマを捉えて演じてきたのだろうか。

 

山田:ウシジマが笑わないことに対して違和感を覚えてはいないんですが、機械っぽいというか、そこに物体があるという感覚で演じることで、異質物のような感じを出したかったんです。基本的にウシジマは感情を表に出しているような時でも、人に向けて出しているのではなく、あくまで自分ひとりの世界の中でむき出しになっているだけだと思うんです。常に己の中にいる、ドライな機械っぽいというイメージで、アプローチしていきました。何か台詞を言う時や何かを言われた時のリアクションにしても、普段の役作りだとこの時はどういう感情なんだろうかと考えるんですが、ウシジマをやる時だけは、一切そういうことを考えずに、理屈を求めないところが今までと違う感覚でした。普通だったら、キャラクターを掘り下げていくんですが、掘り下げていけばいくほど人間っぽくなってしまうし、人間っぽくなることはウシジマにとって邪魔だと思ったんです。

 

 一方、林が演じたジュンは、携帯3台にアドレス3000件のネットワークを自慢しながらも、自分がビックになりたいあまり、必要以上に自分を大きくみせてしまい、イベントを開催する会場費の支払いに追われるチャラ男というキャラクター。林といえば、今まで『DIVE!!』(2008)や『風が強く吹いている』(2009)など、スポーツに打ち込む爽やかな青年を演じることが多く、ジュンとは似ても似つかない役が多かったが、今回はどのように役に取り組んだのだろうか。

 

:今回は、東京の人ごみの中での撮影も多かったので、都会に埋もれる若者像を感じながら演じることができました。どんどん埋もれていって、ダメになっていく感じがジュンを演じるうえで役にたったと思います。ジュンはすごく人の目を気にしていて、ビックになりたいという野心を持っていただけだったと思うんですが、将来に悩んで色んなことから逃げている若者と比べれば、かっこいいと思うんです。それに、何より頑張ってますし、そういうところは普通の若者とは違うと思って演じていました。

 

 最後に、深夜ドラマからウシジマを演じている山田に、ダークヒーローと言われ人気を博しているウシジマを山田自身はどのように思っているのか聞いてみるとー

 

山田:ウシジマは、ダークヒーローだと言われていますが、僕はウシジマのことはただの犯罪者だと思っています。闇金という暴利な利息でお金を貸していますし、暴力も振るうし、そういう人間なのに、さらっと“親子だから”と言ったりするひと言がすごく大事なんだろうし、そういうところがヒーローのように見られているんだと思うんです。ウシジマは、当たり前のことを言っているだけで、そこについてはまともな考えを持っているというだけです。実際にウシジマに会ったら、誰もヒーローなんて言えないと思いますよ。




(2012年8月25日更新)


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Movie Data


(C)2012 真鍋昌平・小学館/映画 「闇金ウシジマくん」製作委員会

『闇金ウシジマくん』

●8月25日(土)より、梅田ブルク7ほかにて公開

【公式サイト】
http://ymkn-ushijima-movie.com/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/157928/