ホーム > インタビュー&レポート > 4人の女性たちがそれぞれの悩みに向き合い、挑戦する姿に共感し、 涙するユーモアたっぷりのヒューマンドラマ 『ウタヒメ 彼女たちのスモーク・オン・ザ・ウォーター』 黒木瞳、木村多江、山崎静代ら来場会見レポート
五十嵐貴久による人気小説『1995年のスモーク・オン・ザ・ウォーター』を映画化した『ウタヒメ 彼女たちのスモーク・オン・ザ・ウォーター』がテアトル梅田ほかにて公開中だ。悩みを抱える女性4人が意気投合しロック・バンドを目指す姿をユーモラスな描写を交え描く。黒木瞳、真矢みき、木村多江、山崎静代という豪華キャストによるクライマックスのライブシーンには感動を覚えるはずだ。本作の公開に合わせ、主人公の家庭内の問題に悩む平凡な優等生主婦・美恵子を演じた黒木瞳、美恵子の昔の職場の後輩で今でも美恵子を慕うかおりに扮した木村多江、美恵子が働くコンビニを訪れる、ストレスから万引きを繰り返す主婦・雪見を演じた山崎静代、そして星田良子監督が来阪し、会見と舞台挨拶を行った。
本作は、黒木演じる郊外で暮らす平凡な主婦・美恵子が、男にお金を騙し取られた昔の職場の後輩・かおりにお金を貸したことから、コンビニで働きはじめ、そこで出会った山崎演じる万引き常習犯の主婦・雪見と、真矢扮するコンビニの常連で元ロッカーらしき謎の多い女・新子とともにロック・バンドを結成したものの、それぞれに悩みを抱える4人は、お互いへの不満が爆発し、バンドは空中分解してしまい…という物語。まずは、それぞれの挨拶から会見は始まった。
黒木瞳(以下、黒木): 1週間前に東京で公開され、本日より全国で公開されます。この日を本当に待っていました。大人の女性たちが楽しめる映画が出来たと思っております。よろしくお願いいたします。
木村多江(以下、木村):関西の人はすごく元気な方が多いので、この映画を観て盛り上がって勇気を持っていただけるんじゃないかと思います。たくさんの人に観ていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
山崎静代(以下、山崎):私は大阪出身なので、家族や友達など、地元の人たちにこの映画を観てもらえることがすごく嬉しいです。とても面白い映画なので、よろしくお願いいたします。
星田良子監督(以下、星田):温かくて、ちょっと笑えてほろっとするようなウェルメイドな作品になっていると思いますし、4人の女優さんが素晴らしい個性を発揮してくださっているので、その辺りを観てもらえると嬉しいです。決して難しい映画ではないので、気楽に来ていただいて、温かい気持ちでお帰りいただけるといいなと思っています。
と、それぞれがこの映画の魅力を語ってくれていたが、本作の見どころはなんと言っても豪華な女優陣の共演だろう。しかも、黒木は平凡な主婦、木村は男運の悪いアラフォー女性、山崎は気弱な主婦、真矢は謎を抱くロッカーファッションの女性と、それぞれに今まで私たちが見たことのない姿を披露してくれている。それが監督の狙いのようで…。
星田:作り手というのは、女優さんがイメージされているキャラクターを、ちょっとでも裏切りたいという気持ちがあるので、主婦の黒木さんにしても、どこかで見たことのある黒木さんとはちょっと違うと思うんです。木村さんも山崎さんも真矢さんもそうです。こんな顔って見たことないとか、こんなお芝居や設定、キャラクターって以外と見たことがあるようで新しい、というところを自分としては狙ったつもりです。
では、そんな今まで演じたことのないキャラクターを演じるに当たって、役柄に共感できる部分や、大変だったことはあったのだろうか。
黒木:私が演じた美恵子というのは、悩みを抱えている平凡な普通の主婦です。この映画の中で彼女は、初めて人と本音でぶつかり合って、友情を結び、バンドではじけるんです。そのギャップを出すことを意識しましたし、それが一番難しかったと思います。共感する部分は、美恵子の何かに挑戦する姿勢かもしれません。
木村:私はこういう役をやったことがないので、最初は本当に出来るのかが不安でした。かおりの、痛々しいけど嫌いになれない、その度合いを出すのが難しかったです。かおりは、ポンポンポンポン何でも言ってしまうかわりに、1歩を踏み出す時も思い切りがいいので、私もこんな風にポンと進める勇気があったら、どんなにいいだろうと思いました。それは憧れでもあり、共感する部分です。
山崎:主婦で旦那がいる設定が、まず未経験ですし、恋愛経験すらほとんどないですし(笑)。難しいところはそこでした。もし、パートナーと考えた時に相方だったらと想像したんですが、気持ち悪いなと思って、やめました(笑)。雪見に共感するところは、ストレスをため込むところです。私もため込んで爆発させてしまう性格なので、そういうところが似ていると思いました。
そこですかさず、「しずちゃんの相方である山ちゃんこと山里が映画を観たのかどうか」に質問が及ぶと、ちょうど会見の前に番組で共演していた黒木に「まだだとおっしゃってましたよ」と教えてもらうと、山崎は、「最近会ってないから知らないんです(笑)。今度会ったら感想を聞いてみます」と、ここでもまた爆笑を起こしていた。その流れから、東京で先行上映の舞台挨拶が行われていた11日に、催されていたボクシングの大会で山崎が優勝したことに話が及んだ。
黒木:撮影の時に、しずちゃんが「今日は私くさいです。にんにくを丸ごと1個、朝から食べてきたんです」と、ちゃんと自己管理をしているアスリートの顔を見せていて、えらいなぁと思っていました。だから、(優勝は)本当に姉のように嬉しいです。ただ、しずちゃんは力がものすごく強くて、どんと抱きしめられるところと、ぐわんと振り回されるシーンがあって、ほんとに軽くされただけだったのに、すごく飛ばされて、さすがに力が強いなぁと感心していました。
木村:しずちゃんは、撮影中にちょっといなくなったと思ったらボクシングの練習に行っていて、でも、戻ってくるとメイク中にこっくりこっくり居眠りをしていたて可愛いなぁと思っていました。そんなしずちゃんが、東京で先行上映をしていた11日に試合をしていたので、きっと今頃ドキドキして緊張してるんじゃないかなと思ったら、こっちも涙が出そうなぐらいドキドキしていました。その後で、勝ったことを聞いて、みんなで拍手して、心から祝福していました。映画もまた1歩を踏み出す勇気を描いた話なので、しずちゃんが実践してみんなに勇気を見せてくれたことが素晴らしいことだと思いましたし、感動しました。
黒木:だから、ぜひオリンピックに行ってほしいと思っています。
山崎:黒木さんと木村さんに、こんな風に応援してもらって、ますます頑張ろうと思いました。芸能界の先輩方からもこんな風におめでとうとか頑張ってって言ってもらえるのは、ものすごく嬉しいです。もちろん、山ちゃんの応援より嬉しいです(笑)。
そのように、山崎は撮影の合間を惜しんでボクシングの練習をしていたようだが、黒木、木村、山崎、真矢の4人は、本作の撮影に入る前から、仕事の合間を縫って楽器の練習をしていたそう。それが、感動のクライマックスのライブシーンへと繋がっているのだ。
黒木:撮影に入る前から仕事の合間に、みんなそれぞれがマンツーマンで先生について時間がある時に練習していました。だから、皆さんがどのぐらい上達なさっているのかわからないので、自分だけが上達してないんじゃないかと不安に駆られるところが辛かったですが、だからこそ余計に練習しなきゃと思っていました。楽器をいただいたのが2、3ヶ月前だったので、それから毎日楽器を触っていました。私は、ギターだったので、指の皮が剥けてヒリヒリしていたので、ゴムをつけて練習していました。最初はゴムがないと練習できなかったんですが、そのうち皮も強くなって(笑)。ゴムを外しても痛くなくなった時は驚きでしたね。
木村:私も3ヶ月前からキーボードをお借りして練習していたんですが、早いうちに皮がむけてしまって、痛いままずっとテーピングをしてたんですが、ダラダラダラっと流し弾きをするところがどうしても出来なくて。他の楽器と比べて、触れば音は出るので、音は弾けるんですが、実際に気持ちの入った音になるまではすごく時間がかかりました。本番に入っても、焦るばかりで、エアキーボードでイメージトレーニングをしたりしていました。不安がずっとつきまとっていて、撮影の最後の日がバンドの演奏の撮影だったので、そこまでずっとそのことが緊張に繋がっていました。
山崎:私も撮影の3ヶ月前ぐらいから、スタジオで先生にマンツーマンで教えてもらっていました。1回4時間ぐらいを週の半分程、時間の空いた時にスタジオに入って練習していました。元々私はリズム感がないので、手と足を全部バラバラに動かすことが大変でした。とにかく反復反復でしたね。いらないところが動いたり、手と足が同じようにしか動かせなかったので、家でもサンドバックをたたいたりして練習していました。リズム感はボクシングでも大事なので、ドラムの練習をしていた時の方がフットワークがよかったと思います。だから、ドラムの練習は、両方にいい影響がありました。
それぞれに苦労しながら楽器の弾き方を習得していったようだ。また、会見には参加できなかった真矢は舞台挨拶で、「私の担当の先生は、ノリがすごくて、楽器よりノリの良さをたくさん教えてもらった感じです。能天気に、楽しくコンサートに行っているような感じでした」と3人とはまた違った体験をしていたよう。しかし、それでも4人で演奏した時は「みんなが違うブースで楽器を練習したので、4人で集まったとくは感無量でした」とコメントしていた。悩みを抱える4人の女性たちが、それぞれに悩みと向き合い、何かに挑戦する1歩を踏み出すことで何かを得る姿に共感し、涙するユーモアたっぷりのヒューマンドラマだ。
(2012年2月21日更新)
●テアトル梅田ほかにて上映中
【公式サイト】
http://www.utahime-eiga.com/
【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/158305/