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沖縄独自の文化を取り入れた斬新なヒーローがスクリーンに登場!
『琉神マブヤー THE MOVIE 七つのマブイ』佐野智樹監督インタビュー

 2008年に放映され、子供だけでなく大人からの人気も集めた沖縄発・特撮ヒーロードラマの劇場版『琉神マブヤー THE MOVIE 七つのマブイ』が大阪ステーションシティシネマほかにて公開中だ。ふとしたことから現代の琉神マブヤーになってしまった青年・ウルマの活躍を描く。山田親太朗、ISSA、ゴリなど、映画版ならではの豪華キャストに加え、地元沖縄出身の出演者が勢揃い。沖縄独自の文化を取り入れた斬新なヒーローがスクリーンで大活躍を見せている本作の公開にあたり、佐野智樹監督が来阪した。

 

 『琉神マブヤー』は、沖縄の歴史や文化、大らかな精神性に特異な方言などを大胆に取り入れた、まさに沖縄の人による沖縄の物語。今回、沖縄で放映されていたTVシリーズの大ヒットを受け、映画化が決定、昨年10月に沖縄で公開され、沖縄で公開された邦画のオープニング記録を作るまでの大ヒットを記録している。しかし、佐野智樹監督は、「ウルトラマンメビウス」の監督を務めるなど、ヒーロー物の経験はあるものの、今まで『琉神マブヤー』に関わってはいない。まずは、本作の監督を務めるに至った経緯について聞いてみるとー

 

監督:TVシリーズの1本目と2本目の間にプロデューサーから電話があって、当初はTVシリーズの2本目を手伝ってほしいという話だったんですが、「実は映画をやりたい」と言われたんですが、最初はやんわりとお断りしたんです。オファーをいただくのは嬉しいことなんですが、『琉神マブヤー』は沖縄の人が脚本を書いて、沖縄の人が演出して、沖縄の人が出演して人気を得たコンテンツなので、そこに東京生まれの東京育ちで縁もゆかりもない人間が乗り込んでいくのは心苦しいですし、TVのスタッフでやった方がいいと思ったんです。でも、映画は沖縄県内だけではなく日本全国、アジアを視野に入れて世界に出ていくためのきっかけにしたいので、沖縄県の人たちだけでやってしまうと、沖縄にしか目がいかないし、もっと広い視野で経験のある人にお願いしたいという話だったので、そういう事情だったらやらせていただこうと思いました。

 

 「沖縄の人が脚本を書いて、沖縄の人が演出して、沖縄の人が出演して人気を得たコンテンツ」と監督が語るように、本作には沖縄独特のゆったりとした空気感が漂っている。それはやはり、山田親太朗やISSAをはじめ、ネイティブに沖縄弁を操るキャストたちによるところも多い。

 

監督:沖縄サイドのプロデューサーに撮影中からちょくちょく耳打ちされていたんですが、沖縄県内に認知されるだけでいいのであれば、TVがやり切ったから、沖縄のひとりよがりで終わらないでほしいと。そのために自分が呼ばれたということですから。でも、『琉神マブヤー』は沖縄を舞台に、沖縄の人が活躍する構図は崩せないと思ったんです。最初は、東京の人が旅行で沖縄に行って、『琉神マブヤー』になって活躍するという、舞台は沖縄だけどキャラクターは東京というアイデアも出たんです。でもやっぱり沖縄全体を支配しているなんとも心地いい雰囲気が『琉神マブヤー』最大の武器であり魅力なんだから、沖縄の人の設定で琉球方言を全面に出して、それをネイティブに話せる人ということで、キャストは沖縄在住もしくは沖縄出身の人たちでやることになりました。

 

 では、その沖縄独特の雰囲気を活かすことと、全国公開を迎えるにあたって、日本全国で受け入れてもらえるような普遍性のバランスはどのようにして保ったのだろうか。

 

監督:結局は『琉神マブヤー』って郷土愛の話なんです。『琉神マブヤー』は正義のヒーローだから沖縄を守りたい。でも一方で、ガレッジセールのゴリさんが演じているハブデービル率いる悪の軍団マジムンも悪いことをやっているように見えても、ちょっと俯瞰的に見ると彼らも沖縄を愛しているんです。郷土愛の物語だったら、大阪だろうと東京だろうと北海道だろうと、あるいはアメリカだろうと中国だろうと、どこでもわかる話だと思うんです。郷土に対する愛情というのは、人それぞれ違うと思いますが、多かれ少なかれありますよね。そう考えると沖縄を舞台に郷土愛を描けば、十分素直に伝わるんじゃないかと思い込むようにしました(笑)。

 

 そのように、郷土愛を描くことでバランスをとっていたそうだが、山田親太朗をはじめ、TVシリーズのキャストから一新されたキャストたちについて監督は、どのように感じていたのだろうか。

 

監督:主役のウルマを山田親太朗でいきたいと言ったのは僕なんです。ウルマはダメ人間というか、いい加減なキャラクターですし、それを体現できるのは山田親太朗しかいないと思ったんです。バラエティで見せる姿が彼の素だと思うし、僕の中では、それがそのままウルマとシンクロしていたので、芝居がうまいとか下手とかではなくて、彼が持って生まれた味をそのまま出してくれればいいと思ったんです。だから、親太朗には「普通でいいよ」と言っていました(笑)。もうひとりの主役『龍神ガナシー』を演じたISSAさんは、仮面ライダーフリークで、小さい頃からヒーローものをやりたかったそうなんです。だから知らず知らずのうちに、芝居の間や見栄の切り方など、ヒーローものの型みたいなヒーロー芝居の基礎が身についていたので、非常にやりやすかったですね。

 

 そんなヒーロー役を演じたふたりに対して、手がハブになっているハブデービルや、口がふたつあって、何でも吸い込むことができるジンベエダーなど、悪の軍団マジムンのキャラクターにも個性的なものが多い。特に、スリムクラブの真栄田が演じたジンベエダーは、真栄田のキャラクターにぴったりで賞賛の声も多い。

 

監督:最初ジンベエダーのデザイン画を見た時はどうしうようかと思いましたし、キャラクター像は悩みましたね(笑)。声も、沖縄の人にお願いしたいと思っていたんですが、真栄田さんもアフレコは初めてだったので、なかなか勘がつかめなくて、真栄田さんには申し訳ないんだけど、「これは失敗したかな?」と思ったりもしました(笑)。でもやっぱり、芸人さんが素晴らしいのは、お芝居じゃなくても、人前に立って臨機応変にリアクションして対応するという、知らず知らずの内に反射神経の訓練をしていることだと思います。だから、やっていくうちにどんどん良くなっていくんですよね。結果、真栄田さんをとても良かったとおっしゃってくれる方がすごく多かったので、嬉しかったです。

 

 真栄田に加えて、悪の軍団マジムンを率いるハブデービルを演じたガレッジセールのゴリのキャスティングも監督がこだわったところだそう。

 

監督:ゴリさんも僕がオファーしたんですが、沖縄でハブデービルの役ができるのはゴリさんしかいないと思ったんです。撮影は4日間ぐらいという短い期間だったんですが、すごくノリノリでやってくれましたし。先にゴリさんがオールアップしたんですが、東京に戻りたくないって言っていました(笑)。現場は、沖縄軍団でがっちりまとまっていましたし、ほんとに、みんなが一生懸命やってくれたことで、この映画に命が吹き込まれたんだと思います。殺伐としたキャラクターものは、よそにたくさんあるので、この映画は特撮映画というジャンルに入るのかもしれませんが、親子揃って楽しめるファミリー映画として楽しんでもらいたいと思います。TVを全然知らない人が見ても問題ないと思いますし、気負いなく劇場に足を運んでもらいたいですね。




(2012年1月12日更新)


Check
佐野智樹監督

Movie Data



(C)2011琉神マブヤ―THE MOVIE製作委員会

『琉神マブヤー THE MOVIE 七つのマブイ』

●大阪ステーションシティシネマほかにて公開中

【公式サイト】
http://www.mabuyer.com/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/157712/

Present Infomation

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