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『探偵!ナイトスクープ』でおなじみの長原成樹が
初監督した感動の青春映画『犬の首輪とコロッケと』
長原成樹監督&主演・鎌苅健太インタビュー

 朝日放送『探偵!ナイトスクープ』のレポーターとしてもおなじみの長原成樹が、自らの生い立ちを基に書き上げた小説『犬の首輪とコロッケと セイキとズイホウの30年』を自らメガホンを執り映画化した『犬の首輪とコロッケと』が、1月28日(土)より梅田ブルク7ほかにて公開される。昭和の大阪・生野を舞台に、筋金入りの不良少年・セイキがお笑いの世界に飛び込んでいくまでを、笑いと涙を交えた青春映画として描き出している。本作の公開にあたり、初監督を務めた長原成樹監督と主人公のセイキを演じた鎌苅健太にインタビューを行った。

 

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 朝日放送『探偵!ナイトスクープ』のレポーター、芸人、そして俳優としての長原成樹を見たことはあっても、長原成樹が映画監督を務めるというニュースには驚いた方も多かったのではないだろうか。まずは、そんな驚きを伝えてみるとー

 

監督:元々僕は映画スターですから(笑)。20年前の紳助さんの映画『風、スローダウン』で主演もしてますし、あの『ブラック・レイン』にもちょっとだけ出てるんですよ。マイケル・ダグラスと高倉健さんと一緒に。監督はリドリー・スコットですよ。映画スターですよ、僕は(笑)。まぁ、それはいいとしても映画監督は、とにかく楽しかったですね。自分のひと言でみんなが動いてくれますし、本当に楽しかったですね。

 

 と、満面の笑みで「楽しかった、楽しかった」と繰り返していた監督だが、では初めての映画監督として特にこだわったところはどこだったのだろうか。

 

監督:少年院から出てきたセイキが、迎えに来ていた父親と見つめ合う台詞も何もないシーンです。こだわったというより、ああいう、言葉はなくても伝わってくる愛情を表現することがすごく大切だと思ったんです。僕を生んですぐに母親が入院してそのまま亡くなったので、僕は母親とは会ったこともないので、ずっと怒られてはいても、僕の根底にはお父ちゃんからの愛情があるんです。それをあのシーンで表現したいと思いました。

 

 たしかに、少年院から出てくるセイキを父親が迎えに来るシーンは、言葉が何もないからこそ、父親の愛情やセイキの申し訳ないという思いが伝わってくる、本作を代表するシーンとなっている。では、映画の方向性をも決めかねない重要な役どころである父親役を“ぐっさん”こと山口智充が演じることになった経緯とはどのようなものだったのだろう。

 

監督:映画化が決まった時に、なんとなく“ぐっさん”の顔が浮かんで、父親役は“ぐっさん”やと思ったんです。僕の父親に似たような雰囲気をあいつから感じてたんかもしれないですね。それで、“ぐっさん”に電話して、「出てくれへんか。お前かもしくはロバート・デ・ニーロに頼むつもりやねん。でもロバート・デ・ニーロには断られたから頼むわ。ほんまはデ・ニーロなんやけどな」って(笑)。“ぐっさん”は、原作も読んでくれてたんで、すぐ引き受けてくれました。ありがたかったです。

 

 そんな父親役以上に重要な役どころである、監督自身を投影した主人公のセイキ役を演じているのが、若手人気俳優らで構成されるバンド、ココア男。のメンバーとしても知られ、最近では俳優としての活躍も目覚しい鎌苅健太。数多くの俳優のオーディションを行った中で、セイキ役を鎌苅に決めた理由とは。

 

監督:東京と大阪でオーディションをしたんですが、偽者のイントネーションになるのが嫌だったし、大阪弁は難しいので、最低でも関西出身の子じゃないととは思っていました。そのオーディションで鎌苅に会ったんですが、まぁ(僕とは)全然違うんですけどね。いいやん、映画ぐらい(笑)。大体、鎌苅は男前すぎますよね。まず、目が綺麗。漫画みたいやもん。こんな目見たことないし、僕らが小さい頃はこんな目した子はいなかった。何か悪いことしたろかっていう目をした奴ばっかりでしたよ。そんな目をした奴を使ったら誰も映画を観てくれないでしょうね(笑)。

 

 では、そんな大役を務めることとなった鎌苅は、セイキ本人である監督が目の前にいるという撮影環境で、どのように考えながらセイキ役を演じていたのだろうか。

 

鎌苅:セイキは、自分にない部分がたくさんあるし、わからないこともたくさんある役だったので現場で監督の成樹さんの話をしっかり聞いて、自分が拾える限りは拾おうと思って演じました。喧嘩にしても、今までほとんどしたことなんてなかったですし。まぁ、成樹さんからしたらおままごとみたいな喧嘩ですが(笑)。ガンガン殴るシーンも全然できなかったら、成樹さんがこうやるんやって見せてくれたパンチの速さにびっくりしましたし、現場で教えてもらうことがたくさんありました。現場に成樹さん本人がいらっしゃるので、プレッシャーは確かにありましたし、もっとやりたいのに出来ない自分に歯がゆさを感じていました。でも、成樹さんが最後まで僕に色々言い続けてくれて、それを飲み込んで演じられたと思うので、すごく温かい映画になっているんじゃないかと思います。

 

監督:結局、技術なんて後からついてくると思うんですよ。だから、「小手先でやったらあかん、気持ちで演じろ」って言ってたんです。そしたらお客さんにも伝わると思うんですよ。僕も映画監督は初めてで技術もないし、やっぱりぶつかっていかないといけないと思うんです。それは役者も一緒だし、(演技や演出の)説得力ってそういうことから生まれるんだと思うし、心から吐き出された言葉はちゃんとお客さんに伝わるんですよね。

 

 監督が話してくれた「心から吐き出された言葉はちゃんとお客さんに伝わる」ということが、まさに体現されたシーンが、シーンの背景は映画を観てのお楽しみだが、鎌苅演じるセイキが「大嫌いや」と言っていたコロッケをむさぼるように食べるシーンで最後に発する「うまい」という台詞だろう。そこには、監督がこの映画で表現したかったことが、全て表現されていると言っても過言ではない。

 

監督:あのたくさんコロッケは、親父の思いもあるし、ミチコさん(セイキの恋人となる女性)の思い、仲間の思いもあるし、要するに、セイキが小さい頃から受けてきた愛情が詰まってるんです。それを1個1個かみ締めて食べるシーンなんです。食べることってすごく大事で、何かを食べるからこそ前を向いて生きていけると思う。だから、あんなに嫌っていたコロッケを食べて、あそこで初めて「うまい」って言うんですよ。それは、みんなの愛情を感じたからなんです。こんなにみんなから愛情を受けて育ってきたことがわかったからこそ、あそこで初めてコロッケをうまいと感じるんです。だから、鎌苅にもむちゃくちゃ食えって言いました。汚い顔で食べてこそ、前を向いて生きていけるんです。あそこでかっこつけたら、逆にかっこ悪いですよ。

 

 と、シーンに込めた思いを熱く語ってくれた監督だが、実際の撮影は本当に大変だったそう。というのも、なんと撮影期間が9日間という、まさに前代未聞とも言うべき短さで行われたからだ。

 

監督:僕も含めてスタッフはまず寝てないですよ。でも、撮影が終わる時は寂しかったですね。ずっと撮影していたかったです。もちろん、撮影日数はあるにこしたことはないんですが、人間死ぬ気でやったらできるな、と(笑)。変な前例を作ってしまったので、これで撮れると思われるのが怖いですね。吉本のことやから、しまいに3日で撮れとか言われそうで(笑)。次に映画を撮る時は、最低でも20日間はほしいです。20日間なかったら無理って言います(笑)。たぶん、(ガレッジセールの)ゴリや木村(祐一)とか、他の吉本に所属してる監督は次は9日間って言われるかも…と戦々恐々としてると思いますよ(笑)。

 

 実際に、本作の映画化が決まった時に、板尾創路や木村祐一、品川ヒロシら吉本に所属する映画監督を経験している芸人たちに、監督は「どうやった?」と聞いたそう。すると、全員が声を揃えて「楽しいです」と話したそうだ。監督も、インタビュー中もずっと「楽しい、楽しい」と言っていたが、最後にこの映画を観てくださる観客の方へのメッセージを聞いてみるとー

 

監督:この映画は色んな意味でストレートな恋愛映画だと思うんです。親子でも、友だち同士でも、恋人でも、根底にあるのは恋愛というか愛情だと思うので、こういう愛情表現の仕方もあるということを感じてほしいです。そして、この映画の中で成長していくセイキの姿を観て、ちょっとでも前を向いていただけたら嬉しいですね。

 

鎌苅:“愛”がテーマになっている作品だと思いますし、セイキが一番辛い時に前に向かせてくれたのもお父ちゃんや周りの人の愛情だったので、自分が周りの人を大切にしていれば、自分も大切にしてもらえるということに気づかせてくれる映画だと思います。セイキをはじめとする登場人物や、物語もすごく真っ直ぐで、そこがこの映画の魅力だと思うので、観終わった後で温かい気持ちになってもらえれば嬉しいです。

 

 インタビュー中も終始笑顔で、特に映画について語る時の少年のような目をした長原成樹監督の姿が印象的だった。実際に、監督が育った大阪・生野で撮影された大阪生まれの映画だけに、監督自身も大阪への思いは熱く、インタビュー中も「大阪を映画の街にしたい」と夢を語っていた。そんな監督や鎌苅、父親役を務めた“ぐっさん”こと山口智充も登壇する、映画の公開を記念した舞台挨拶が2月4日(土)に梅田ブルク7で行われることが決定! ぜひ関西から応援の声をあげるべく、“生”で声援を送ってほしい。




(2012年1月27日更新)


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Movie Data



(C)吉本興業

『犬の首輪とコロッケと』

●1月28日(土)より、梅田ブルク7ほかにて公開

【公式サイト】
http://www.inukoro.jp/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/158156/


Ticket Data

『犬の首輪とコロッケと』舞台挨拶

【日時】2月4日(土)  11:30の回上映後
【劇場】梅田ブルク7
【登壇者】長原成樹監督/鎌苅健太/ちすん/山口智充 (予定)
【料金】全席指定-2000円
【Pコード】559-343

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