ホーム > インタビュー&レポート > 京都を舞台に描くミステリアスな現代の寓話 『天使突抜六丁目』で 映画初出演にして初主演を果たした真鍋拓インタビュー
勤めている会社が倒産し、ひょんなことから追われる身になった男が“天使突抜六丁目”という見知らぬ街へ迷い込み、奇妙な住人たちと日々を送り始める姿を描く異色ドラマ『天使突抜六丁目』が梅田ガーデンシネマにて公開中、その後京都シネマ、神戸アートビレッジセンターでも公開される。『ひとりかくれんぼ 劇場版』などの京都出身の山田雅史が監督を務め、京都市内に実在する“天使突抜町”という地名からヒントを得て、街の虚構に飲み込まれていく男の苦悩を現代の寓話として紡ぎ出す。本作の公開にあたり、映画初出演にして初主演を務めた真鍋拓にインタビューを行った。
真鍋拓と聞いても、ほとんどの方は顔と名前が一致しないはず。というのも、関西を中心にテレビやC、舞台などには出演しているものの、映画は本作が初出演にして初主演なのだ。まずは、映画初出演にして初主演を務めた感想と、初の映画の現場体験について聞いてみるとー
真鍋:撮影は2年前だったんですが、あまり実感はなかったですね。東京では公開されましたし、今はだんだん実感がわいてきていますが、(主演が)決まった時は驚きだけでした。何しろ、(映画出演も含めて)なにもかもが初めてだったので、あまり考える余裕もなく現場に行って、撮影している内に気づいたら夜になっていて、撮影が終わったような感じでした。
と、無我夢中で撮影の日々を過ごしていたようだ。会社が倒産して以降、無我夢中で逃げ回っていた昇は、“天使突抜六丁目”という見知らぬ街へと迷い込む。どこか虚構の匂いが残る街で昇は奇妙な住人たちと暮らし始めるが、ある日、街から出ることを夢見る女・みゆきと出逢い、昇はその奔放な魅力に惹かれていく…という、少し不可思議な物語が綴られる本作。果たして、真鍋自身は、脚本を読んだ時点で具体的なイメージが沸いたのだろうか?
真鍋:脚本が難しかったので、よくわからないまま現場に入って、その場その場で演技を作っていきました。監督とも細かい話はあまりしていなくて、台本を読んで、監督がイメージしている世界観を自分で想像して演じている感覚で、今考えてみると主人公の昇のような感じでした。監督に何回も「僕、大丈夫ですか?」って聞いていたんですが、そうしたら監督が「大丈夫です。自信持ってください」って言ってくださって(笑)。監督も映画の中の昇と僕を同じような状況に置きたかったからこそ、僕にそのままでいいと言っていたんじゃないかと思います。周りの役者さんたちも濃いキャラクターの方が多かったので、その方たちに揉まれていましたね(笑)。
たしかに、本作は柄本明をはじめ、麿赤兒や桂雀々など、個性的な役者が沸きを固めている。錚々たる役者たちから真鍋が学んだこととはー
真鍋:柄本さんと絡むシーンが僕は多かったんですが、柄本さんはオーラがすごくある方なので、なかなか近づけなかったんですが、細かく演技指導もしてくださいました。歩き方ひとつにしても、どういう気持ちで歩いているのかなど、「後姿だけでも、そこには意味がある」と教えていただきました。
そのように、柄本の言葉はもちろん、柄本が演じる姿勢からも学んだことは多かったようだが、元々真鍋が俳優を志したきっかけとはどのようなだったのだろうか。
真鍋:大学時代に心理学を専攻していて、授業の中で自分を見つめなおす時間があったんです。そこで、自分の中にもっと表現したいことや感情があるんじゃないかと考えるようになって、友だちが小さい劇団をやっていたんですが、人が足りないからと、誘われてやってみたのがきっかけです。色んな自分を見てみたいというのと同時に、それを見せることで人の心を動かすことができればもっと素晴らしいと思ったんです。
と、熱く語ってくれた真鍋だが、本作で真鍋が演じた昇は、周りの人にひたすら翻弄され続けるという、まさに観客と同じ目線のキャラクター。そんな昇を演じるにあたっては、どのように意識していたのだろうか。
真鍋:極端に普通の人を演じることを心がけていました。だから、抑えて抑えて演技していましたね。昇は喜怒哀楽をほとんど表現しないので、感情を表現したい時もできなかったんです。また、昇のまっすぐなところとか一生懸命なところは、僕も共感しましたが、笑うことって生きていく上ですごく大事なことだし、昇のように笑わないのはしんどいなと思いましたね(笑)。でも、僕が演じた昇という役は、この映画の中では一番普通の役だと思うんです。だから、観客のみなさんの目線となる人物だと思うので、昇になった気持ちで映画の世界の中に迷い込んでほしいんです。今の時代って、昇のように会社が倒産したり、なんらかの事情で職に就けない方も多いと思うんですが、できるだけ同世代の方たちに観ていただきたいです。この映画の世界観にどっぷりつかって振り回されて、最後は「まぁ、いいか」と前向きになってくださると嬉しいですね(笑)。
誠実に、一生懸命考えながら、言葉を選びながら話す真鍋の姿に、本作の中で、同じアパートに住む、天使突抜町から出ていきたいと願う女性・みゆきに惹かれ、彼女とともに町から出ることに力を尽くす昇の姿が重なって見えた。錚々たる役者陣に翻弄される真鍋演じる昇になった気持ちで映画の世界に迷い込んでみてほしい。
(2011年12月19日更新)
●12月17日(土)より、
梅田ガーデンシネマにて公開
●1月2日(月・祝)より、京都シネマにて公開
●1月14日(土)より、
神戸アートビレッジセンターにて公開
【公式サイト】
http://tentsuki6.jp/
【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/155297/