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岡田将生、榮倉奈々、瀬々敬久監督来場!
『アントキノイノチ』会見レポート
岡田&榮倉の瑞々しい演技と人と人との繋がりの大切さに涙する感動作

 第61回ベルリン国際映画祭で2冠に輝いた『ヘヴンズ ストーリー』の瀬々敬久監督が、さだまさしの同名小説を映画化した『アントキノイノチ』が大阪ステーションシティシネマほかにて公開中だ。本年度モントリオール世界映画祭コンペティション部門で革新的で質の高い作品に贈られるイノベーションアワードを受賞した話題作。主演は『告白』『雷櫻』『悪人』など出演作が相次ぐ岡田将生と、『余命一ヶ月の花嫁』の演技が高い評価を受けた榮倉奈々。若手実力派として目覚しい活躍を見せる両者の初競演に注目だ。公開に先立ち、岡田将生、榮倉奈々と瀬々敬久監督が来阪し、会見を行った。

 

 本作は、岡田将生演じる、ある事件を機に心を閉ざしてしまった青年・杏平が、遺品整理業という仕事を通じて出会った、榮倉奈々扮する女性・ゆきの“衝撃的な過去”を知り、そんな辛い過去を抱え、そこから逃れられないふたりの“ちゃんと生きたい”という思いと“誰かと繋がっていたい”という強い思いを、言葉少なに岡田と榮倉が体現した感動作。まずは、榮倉と監督がそれぞれ「この映画をとおして人との出会いや触れ合い、繋がりを感じてもらえれば嬉しいです」(榮倉)、「今、日本はすごく厳しい状況ですが、基本的には未来への希望を伝えようと思って作った映画です」(監督)と挨拶し、会見は始まった。まずは、初共演となるふたりにお互いの印象について聞いてみるとー

 

岡田:榮倉さんは、すごく明るい人という印象でした。色んな作品に出られてますし、いつかは共演してみたい人のひとりでした。撮影中も、すごく気さくに優しくしてもらって、一緒にやらせていただいて良かったと思いました。

 

榮倉:雑誌などで(岡田くんを)見ていた時は、もっと年上だと思ってましたし、すごく静かな人だと思ってたんですが、実際に会ってみると、全てがまっすぐで嘘のない人でした。

 

 と、イメージどおりでも、イメージが違っても、いい共演者として撮影に臨めたようだった。また、本作のタイトル『アントキノイノチ』から連想されるように、アントニオ猪木さんの名文句「元気ですか~?」を岡田演じる杏平と榮倉扮するゆきが叫ぶシーンが本作にも登場するのだが、そのシーンを演じたふたりはー

 

岡田:動画は見なかったです。見なくても頭の中にインプットされているので、あまり意識せずに自分の気持ちで演じました。

 

監督:でも、ちょっと(アントニオ猪木さんに)似てたよね? 

 

榮倉  :似てないでしょ(笑)。だめですよそういうこと言っちゃ。大きい見出しになっちゃう(笑)。

 

岡田:ほんとですよ。親が悲しみますよ(笑)。

 

監督:厳しいな~。

 

榮倉  :私も、もちろん動画は見てません。

 

岡田 :良かった~。これで見たって言われたらどうしようかと思った(笑)。映画の冒頭からあのシーンまで、杏平は笑ってないんです。だからあのシーンは、やっと笑えたという、すごく救われた気分でした。しかもその気持ちをのせられることがすごく気持ちよくて、あのシーンが終わった後は気が楽になりました。(完成した)映画を観た時も、杏平の笑顔がすごくクローズアップされていて、それがすごく印象に残ったので、いいシーンになったと思いましたし、監督にはほんとお世話になりましたし、ありがとうございますと言いたいです。

 

監督:話が全然繋がってなくない?

 

榮倉  :たしかにあのシーンは、すごく気持ちのいいシーンだったし、希望が見えたからこそ悲しいというか、生きていることを実感したシーンでした。

 

監督 :あのシーンを撮影した日はすごく風が強かったんです。だから、芝居はOKなんですが、榮倉さんの髪の毛が(風で)流れてしまうので、僕が何回もNGを出していたら、スタッフが冷たい目で見るんですよ。「おまえ、もういいだろう、芝居はこんなにいいんだから。細かいことばっかり気にしやがって。小さい監督だな」みたいな。そういう痛い視線を感じながらNGを出し続けていました。そればっかり思い出しますね(笑)。

 

 監督の言葉に岡田と榮倉がつっこみ、監督が笑いを誘うという3人の会話からも、撮影現場のいい雰囲気が想像できるが、本作は遺品整理業という耳慣れない職業に就いた、辛い過去を抱えるふたりを描く物語。撮影に入る前に、岡田と榮倉は実際に遺品整理業を体験したそう。

 

岡田:僕は、知らない人の家に入ることに対して、自分の中で逡巡する気持ちがありました。そして、いざ中に入ると、そこに住んでいた方のリアルな生活がすごく見えてきて、そういう生活感を生々しく感じました。だから、映画の中で遺品整理の仕事を演じる時は、そういう気持ちを忘れずに、なくさないようにすることを心がけていました。

 

榮倉  :私たちが行った現場は、入院した病院で亡くなった方の家だったので、最初は引越しのような作業だったんです。でも、だんだん細かいものの片付けになっていくと、2003年の領収書が出てきたり、送り返してない同窓会のはがきが何通もあったり、そういう身近なものを見ていると、ここに人が生きていて、生活していた、ということを感じて複雑な思いになりました。それが、映画の中でゆきちゃんが言っている遺品整理への思いと近いものだったので、現場に行ってよかったと思うと同時に、生きていることの不思議や、(映画の中に登場する)「生きていることは恥ずかしいことだ」という台詞、“生きる”とか“死ぬ”ということが、悲しいだけじゃなくて、すごく現実的なものとして目の前に突きつけられたような気もしました。生きているから死ぬし、死ぬために生きているし、というようなスピリチュアルな気持ちになりました。

 

 会見の最初に榮倉自身が言ったように“人との出会いや触れ合い、繋がり”を感じるとともに、“生きる”ということを榮倉は現実的に実感し、そう感じたことが演技に反映されているからこそ、ふたりの“ちゃんと生きたい”という思いと“誰かと繋がっていたい”という強い思いが感じられる物語に仕上がっているのだろう。最後に、実生活で“生きている”ことを実感する瞬間を3人に聞いてみるとー

 

岡田:僕は、急に明日は休みだと言われて、休みの日の朝に納豆を食べている時ですかね(笑)。自分のためにお米をといで、みそ汁を作ってっていう、自分のためにしている感覚が生きていると思う瞬間です。

 

榮倉:たしかに私も家事をしていると、生きているというか生活している実感はありますね。

 

監督:二日酔いで起きて、夕方4時ぐらいにだんだん身体の調子が良くなってきた時に、人間の身体って生きてるんだな~と思いますね(笑)。

 

と最後まで、笑いの絶えないまま会見は終了した。本作は、遺品整理業に就く複雑な過去を持つ青年と辛い傷を抱える女の子の魂の行方を描くことで、今までの人生の中で起こった全ての出来事が今の自分に繋がっていて、そんな自分が誰かと繋がっている。そんな当たり前のことを感動の中で痛感するとともに、主演ふたりの演技に胸が震える感動作となっている。




(2011年11月21日更新)


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Movie Data



(C)2011「アントキノイノチ」製作委員会

『アントキノイノチ』

●大阪ステーションシティシネマほかにて上映中

【公式サイト】
http://www.antoki.jp/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/156306/