ホーム > インタビュー&レポート > 新たなスタジオジブリの映画が完成! 『コクリコ坂から』会見レポート
'80年に人気漫画雑誌『なかよし』に掲載された同名少女コミックを原作のスタジオジブリの最新作で、東京オリンピックの前年の'63年の横浜を舞台にした高校生の青春物語『コクリコ坂から』が、7月16日(土)よりTOHOシネマズ梅田ほかで公開される。監督は『ゲド戦記』以来5年ぶりとなる宮崎吾朗が務め、ヒロインの海を長澤まさみ海が思いを寄せる青年・俊を岡田准一が務めるなど、豪華な声優キャスト陣にも話題が集まっている。公開に先立ち、宮崎吾朗監督、鈴木敏夫プロデューサー、主題歌を担当した手嶌葵が来阪し、会見を行った。
2年連続でスタジオジブリの新作が公開される。ジブリファンの方なら、それがきわめて珍しいことだと気付いた上で、心待ちにしていたのではないだろうか。そんな異例の2年連続公開となった『コクリコ坂から』。まずは、5年ぶりに監督を務めた宮崎吾朗に公開を間近に控えた心境について聞いてみるとー
宮崎:『コクリコ坂から』は、スタジオジブリ始まって以来のタイトなスケジュールで作った作品でした。作ってる最中は1週間があっという間だったんですが、初号試写から今日までが2週間で、まだ公開まで1週間もあるのかと、ここにきてすごく時間が長く感じています。
そんな宮崎と同じく、『ゲド戦記』の主題歌でデビューを果たした手嶌は、本作『コクリコ坂から』の主題歌に決まった時にどのように感じたのだろうか。
手嶌:5年前、すごく幸せなCDデビューをさせていただいて、今回も心の中で期待していた部分もあったんですが、今回もお話をいただけて、(スタジオジブリの作品で)2度もすごく大きなチャンスをいただけたことが、正直にとても嬉しかったです。
そんな手嶌の歌う主題歌「さよならの夏~コクリコ坂から~」がノスタルジーを誘う本作は、'63年の横浜が舞台の海と俊というふたりの高校生の純愛物語。そこには、前作『借りぐらしのアリエッティ』やスタジオジブリの代表作『となりのトトロ』、『崖の上のポニョ』のようなファンタジー性は感じられず、いわば新たなスタジオジブリの映画とも言える。
鈴木:この世に存在しないものが登場するかしないかという意味でファンタジーという言葉を使うと、『となりのトトロ』のトトロや、『ハウルの動く城』の動く城、そういうものが出るか出ないかということですよね。この10年か20年の間にそういうファンタジーの世界を作り始めたのはスティーヴン・スピルバーグ監督だと思うんです。子どもが見る企画に時間とお金をかけてきちんと作った人。それを日本でやったのが、吾朗くんのお父さんである宮崎駿だと僕は思うんです。『ET』に対抗するように宮崎さんが作ったのが『となりのトトロ』だったんじゃないかと。そうしてアメリカでも日本でも皆が同じようなことをやるようになってしまったので、ジブリが先頭に立ってそうじゃない映画を作ろうとしてこの映画ができたんじゃないかと感じてます。
そして、その新たなジブリ作品が選んだ舞台が、なぜ'63年の横浜だったのか。東京オリンピックを間近に控え、高度経済成長の真っ只中、全てが新しいものへと変わろうとしていた時代が舞台になっている理由とは。
鈴木:原作の舞台は1980年代だったんです。それを映画化することになった時に、宮さん(宮崎駿)が「時代を'63年にしよう」と言い出したんです。「高度経済成長期やバブルの崩壊、リーマンショックとか色々あったけど、そのスタートは'63年だよね」と。でもなぜその時代なのか、僕の中で疑問は残ってたんです。そうしたら後でわかったんですが、'63年は宮崎駿が働き出した年だったんです。このふたつの理由がなんとなく垣間見えていたんですが、最近はあとふたつあって、吾朗くんが生まれたのは'67年なので、吾朗くんがそういう時代をどう料理するか、もしかしたらそういう父親としての意地悪なところもあったのかな、と(笑)。当時を再現しろということではなく、当然求めるものは現代に通用する映画ですよね。そしてさらにもうひとつは、宮崎駿はその時代に働いていたので記憶が鮮明なんですよ。だから資料を見なくてもいくらでも意見は言えるし、父親としては息子である吾朗くんに対して非常に有利な立場にあるんですよ。そういう気持ちもあったんじゃないかな?
宮崎
まるで、父親である宮崎駿の代弁者かのように話す鈴木プロデューサーの発言に苦笑いしながら父親の話をしている宮崎監督の姿が印象的だった。そんな宮崎監督は、試写会などで高校生の感想を聞くと、「むしろ高校生たちの方が時代背景に捕らわれずに、自分たちと同じ高校生が主人公なんだという風に、意外と素直に受け止めてくれているように感じたし、最初に上映した高校では、「俊くんかっこいい」とかそういう素直な感想が嬉しかった」とのこと。'63年を舞台にしながらも人が人を思う気持ちは普遍だと、この会見でさらに思いを強くさせられた。鈴木プロデューサーが語るように、現代に通じる高校生の青春物語だ。
(2011年7月15日更新)
●7月16日(土)より、
TOHOシネマズ梅田ほかにて公開
【公式サイト】
http://www.kokurikozaka.jp/
【映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/155962/