「観た人が笑顔になって癒されてほしい」小日向文世インタビュー『犬飼さんちの犬』 .

 　犬飼という苗字ながら、実は大の犬嫌いの主人公である父親と、単身赴任中に家族がこっそり飼った犬との“一家の主人の座”をめぐって巻き起こる騒動を描いたハートウォーミングな人間ドラマ『犬飼さんちの犬』がシネ・リーブル梅田ほかにて公開中だ。小日向文世が父親役に扮し、サモエド犬“サモン”とのコミカルな共演を見せている。サモンの真っ白でフワフワの毛並みと“サモエドスマイル”と呼ばれる、愛嬌たっぷりの表情も見どころ。本作の公開にあたり、主演の犬飼さんに扮した小日向文世が来阪した。
 

　三谷幸喜の舞台をはじめ、数多くの舞台や映画に出演し、演技力には定評のある小日向だが、本作の相手役は“犬”。人間と違い言葉が通じないことで、苦労などはあったのだろうか。
 

小日向： この作品は、30分のドラマを12本と映画を1ヶ月半の間で同時進行していたので、ものすごくハードスケジュールでした。基本的に、僕が演じた犬飼さんは出ずっぱりですから、撮影中は平均睡眠時間が2、3時間、休みも元旦と2日の2日間だけで、とにかく体力勝負というか、移動中に車の中で台本を読んでいても気付いたら寝てるという睡眠不足の日々でした(笑)。でも、辛かったのはそれぐらいで、現場に行けばサモエド犬たちがとにかく可愛くて癒されてましたし、彼女たちがいたから乗り切れましたね。サモエド犬って、すごく性格が穏やかで、人なつっこくて、真っ白でフワフワで、彼女たちを見てるだけで可愛かったですね。だから、犬に対しての苦労はないんです。
 

　そのように犬に対しての苦労はなく、可愛くて仕方がないと語る小日向だが、本作で演じた犬飼は大の犬嫌いというキャラクター。しかし小日向は、家族の中の自分の居場所に不安を感じる犬飼と通じる部分を感じていたようで…
 

小日向：僕もこういう仕事をしているので、子どものことは女房に任せっきりなんですよね。だから犬飼さんと共通する部分は感じました。特に、犬飼さんがなかなか犬と折り合いがつかなくて、自分の居場所を犬にとられていくのはものすごくよくわかりました。僕も自分の家にトイプードルが来た時に、僕の場所がとられちゃったんです。しかも、うちのきな子は雄なので女房を独占するんです。そのうち僕のベッドを占領しちゃって、当初はほんとに悩みました。とにかくきな子とふたりっきりにしないでくれって、犬飼さんと同じことを言ってました(笑)。
 

　さらには、小日向自身の犬を飼い始めたきっかけや、飼う過程でも小日向は犬飼と似たようなシチュエーションを体験していたよう。
 

小日向：うちのトイプードルのきな子は、長男の中学受験がきっかけで飼い始めたんです。小学生なのに塾や宿題に追われている息子が可哀想だと思っていたら、息子に癒しを与えてあげるために犬を飼いたいと女房が言いだしたんです。それで飼いはじめて、今4年半ぐらいです。全て女房が決めたので、犬飼さんと同じで僕の意見は一切入ってないです(笑)。でも、完成披露試写の時にサモンたちと3ヶ月ぶりぐらいに会ったら、その瞬間は正直きな子より可愛いと思いました(笑)。大型犬は飼うのが大変なので、たまに会う分には本当に可愛いですね(笑)。
 

　小日向の話を聞いていると、サモエド犬への愛情をひしひしと感じてしまうが、実は、本作で犬飼役に小日向がキャスティングされたのは、ずばりサモエド犬の顔と小日向の笑顔が“犬にそっくり”だから。普通犬に似ているなどと言われると不愉快になる人もいるかもしれないが、小日向はご満悦のようだ。
 

小日向：プロデューサーも監督もそうおっしゃるんですけど、ほんとに似てますか？　でも、この子に似てるって言われるのはすごく嬉しいですし、もし僕がこの子のように人を癒せるんだったらすごく嬉しいですね(笑)。めちゃくちゃ可愛いですもん。この映画は、わんちゃんを見るだけでも十分だと思います。僕がサモンたちに癒されたように、観た人が笑顔になって癒されてほしいですね。素直に笑顔になれる作品ってなかなかないと思うんです。

（2011年6月28日更新）