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 毎日新聞に連載され、TVアニメも好評放送中の西原理恵子の人気コミックを、小泉今日子と永瀬正敏の元夫婦共演で映画化した『毎日かあさん』が梅田ブルク7ほかで公開中だ。本作は、西原自身の実体験に基づき、女性漫画家と元夫のカメラマン、6歳の息子と4歳の娘の日常が、時に鋭い毒気を交えて描かれる、家族の絆が胸に沁みる異色ホームドラマ。原作者である西原理恵子に映画や原作への思いを聞いた。

 

 まずは、西原自身も特別な思いがあるであろう原作についてはー

 

西原:『毎日かあさん』は、善人のイメージを作りたかった作品で、今までの漫画家としてのダークなイメージを払拭しようと始めたのに、1巻目から離婚してしまうという…(笑)。でも、ほんとに新しいお客さんが増えてくれましたね。私は、エロとギャンブル出身なので、男の人のファンばっかりで。女性とかお年寄りとかお子さんとか、狙いはばっちりなのに、なぜか本が売れないという…(笑)。

 

 そんな風に笑いながら話す西原自身はとてもキュートな印象を与える。映画の中で小泉今日子が演じるサイバラは、キュートな女性であると同時に、子どもに対しては肝っ玉母さんというキャラクター。実際に西原と西原の子どもたちは映画を観てどのように感じたのだろうか。

 

西原:やっぱりきつかったですね。(鴨志田さんが)亡くなって3年たって、ようやく普通の生活に戻ったところでしたから。娘なんか特に、泣きっぱなしでしたね。特に、永瀬さんの迫力がすごくて、鴨ちゃん(鴨志田さん)になりきってる感じでしたね。ちょっとした仕草まで似てましたし。息子はずっと居眠りしてました(笑)。

 

 子どもについて楽しそうに話す西原の子育ての最優先は、“親が怒らない家”だそう。そんなモットーで育てられ、無邪気で大らかに育った子どもたちについてはー

 

西原:のんびりしてますね。にこにこして。娘は、私に似てだいぶ性格が悪くて(笑)。ビッチな感じになってきました。それはそれで楽しみかな。女の子はみんなそうですよね。嫌いな男の人の前と好きな男の人の前は全然違いますもん。地図は読めないけど空気は読める、という(笑)。そういう立ち回りは大事ですよね。

 

 また、そんな本作『毎日かあさん』に加え、昨年は『パーマネント野ばら』や『女の子ものがたり』など、西原原作の映画化が相次いだ。そんな“西原ブーム”についてはー

 

西原:不況だったのが良かったんじゃないかと思ってます。低予算で、人生曇りばっかり時々晴れみたいな、ちょっとほっとしてもらえる作風が良かったのかな。それに、今まで私の作品を映画化してくださった監督さんや脚本の方が、ほとんど関西の方なんです。関西人特有の、“まぁ、ええやん”という精神がこの不況の時代に合ってたんだと思います(笑)。

 

 2月5日に公開を迎え、家族連れで映画を観に行く方も多く、家族ムービーのような存在になっている本作。そんなヒットの要因のひとつに、西原作品に漂う関西独特の大らかなムードが考えられる。

 

西原:鴨ちゃんのお葬式の日が、私の兄の誕生日だったんです。そしたら兄が「むこう7年、僕の誕生日はなしやな」って言ってたんです(笑)。男らしいお別れの仕方ですよね。私も、この前仕事を一緒にしていた出版社がつぶれて、印税が2000万円もらえなかったんです。でも、それぐらいのことも笑ってられるようになりました(笑)。うちはアル中が暴れてたんで、それぐらいのことで怒らないんですよ。底ってもっと割れるんですよ。




(2011年2月23日更新)


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Profile

さいばら・りえこ●'64年高知県生まれ。
'88年に『ちくろ幼稚園』(「週刊ヤングサンデー」)でメジャーデビュー。「週刊朝日」連載の『恨ミシュラン』で一躍人気作家に。'96年に旅行体験レポ漫画『鳥頭紀行』で知り合った写真家・鴨志田穣と結婚、2児をもうけるが、鴨志田のアルコール依存症などが原因で離婚。しかし、家族の絆は強く癌で闘病生活を送る鴨志田と家族で同居し、最期を看取る。'97年『ぼくんち』で文藝春秋漫画賞、'04年『毎日かあさん カニ母編』で文化庁メディア芸術祭賞、'05年『毎日かあさん』『上京ものがたり』で手塚治虫文化賞短編賞を受賞。本作のほかにも『いけちゃんとぼく』なども映画化されている。

Movie Data

(c)2011映画「毎日かあさん」製作委員会

『毎日かあさん』

●梅田ブルク7ほかにて公開中

【公式サイト】
http://www.kaasan-movie.jp/

【ぴあ映画生活サイト】
http://pia-eigaseikatsu.jp/title/154829/