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東京で13万人を動員した話題の展覧会
『恐怖心展大阪』体験レポート

東京で13万人を動員した体験型展覧会『恐怖心展』が、グランフロント大阪・イベントラボにて開催中だ。2024年『行方不明展』を手がけたホラー作家の梨、テレビ東京・プロデューサーの大森時生、株式会社闇による異色の展覧会。実体のない"行方不明"を展示した前展に続き、今展も人の心にある、見えないはずの"恐怖心"を展示している。その異世界を体験してきた。

はじめに、『恐怖心展』はお化け屋敷とはまったくの別物で、"怖がらせる"ための演出をしていない。鑑賞者が自身の心にある恐怖を探る、自身の"恐怖心"と向き合う展覧会。「存在」「社会」「空間」「概念」、4つのセクションに分かれた会場を順路に沿って鑑賞していくことで、普段は意識することのない"恐怖心"をジワジワ体感できる構成となっている。


◾️存在への恐怖心
―「そこにあるもの」への恐怖―

「人形」「風船」「注射」「毛髪」。
ここで展示されているのは、普段目にしているもの。もの自体が「恐怖」をもつのではなく、見る側の想像力で、嫌悪から「恐怖」に変わるものをピックアップしている。

恐怖の度合いが増すと、"◯◯恐怖症"という言葉に置き換えることも...。
刃物やペンなど、尖ったものの先端がこわい「先端恐怖症」。
蜂の巣や蓮の実などの集合体がこわい「集合体恐怖症」。
小蝿やダニなどの小さな虫がこわい「微細昆虫恐怖症」。

「存在」のエリアでは、自分の「こわい」という感情を「あるある!」「わかる!」と楽しみながら認識できる。また、同じものを見ていても、悲鳴をあげるほどの恐怖を感じる人と、何も感じない人がいることに気付かされる。

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◾️社会への恐怖心
―「それになること」への恐怖―

「会社」「SNS」「老化」「視線」。
ここでは、社会とのつながりの中にある、存在しない、目に見えないものへの「恐怖」が並ぶ。人とのコミュニケーションや集団生活など、苦痛を感じているもの、普段は苦手という言葉でぼかしているものが、何かのきっかけで「恐怖」に変わることを知る。

「電話に対する恐怖心」では、ある会社のデスクに置かれていた電話を展示。
「もの」でありながら、会社においては社会そのもの。
クレーム処理に使用していたかもしれない。
「ワンコールで出る!」というルールに恐怖を感じていた人もいるかもしれない。

「醜形に対する恐怖心」では、アプリで加工した写真を展示。
自分の顔を否定し、アプリを使ってまったく別の顔に変えてしまう。これを恐怖と思うか、進化と思うかは見る人次第。

「社会」のエリアでは、人との関わりが、"寄り添う"とか"助け合う"といった美しい営みだけでなく、恐怖をももたらすという現実を直視させられる。

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◾️空間への恐怖心
―「そこにいること」への恐怖―

「高所」「閉所」「海洋」「病院」。
広い意味のあらゆる場所が「恐怖」につながることを紹介している。
不安や不快、個人の体験や記憶が導き出す「恐怖」。
個々の身体的な感覚によって、感じ方がまるで違って見える「恐怖」。

「高所恐怖症」がいる一方で、バンジージャンプや絶叫マシンを楽しむ人がいる。
「閉所恐怖症」がいる一方で、狭い空間が落ち着くという人がいる。

「海洋に対する恐怖心」では、ダイビング中にパニックに陥ったダイバーの証言に基づいた映像が流れる。自ら望んで潜ったはずの心地よい海の中が「恐怖」に変わる瞬間を、ダイバーの息遣いと映像が物語る。
海を見た時に、自由やロマンを感じる人もいれば恐怖を感じる人もいる。その表裏一体を知ることができる。

「空間」のエリアでは、「恐怖」は個人差はあるものの、どんな場所にも存在し、時には身体にまで影響を及ぼすこわさも展示している。

ここまでの対象「存在」「社会」「空間」は、避けることができる。
「もの」なら見なければいい。
「社会」なら関わらなければいい。
「空間」なら行かなければいい。
そうはいかない対象が、最後のエリア「概念」だ。

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◾️概念への恐怖心
―「こと」への恐怖―

「死」「無限」「夢」「時間」。
これらは避けることも、無くすこともできない、生きている限りついてまわるもの。実体をもたず、いつどんな時にも存在しているもの。本質的な、概念自体へのこわさ。物質的なものは何もない。

「幸せに対する恐怖心」では、数十万人のフォロワーがいたインフルエンサーの活動休止前の最後の投稿が展示されている。「旅行に行った」「美味しいものを食べた」という幸せな投稿よりも、ちょっとした不幸な体験談の方が共感を呼び、フォロワー数が増えることを実感。それからは「生活の粗探し」を始めるように。次第に「幸せになるのが怖くなった」と書き残している。「自分の幸せが誰かを不幸にしているかもしれない」という彼女を追い詰めたのは「幸せ」。

「概念」のエリアでは、複雑にもつれた「恐怖心」を目撃する。時代が進化し、新しい概念が増えることで、新しい「恐怖心」も生まれるのかもしれない。
数十分前に入場した時の、目に見えていた「恐怖心」から、だいぶ遠いところにきてしまった。これがこの展覧会の深層かもしれない。

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◾️「恐怖は恐怖心とは違います」

ホラー作家・梨さんはSNS上で発表していた怪談が人気となり、2022年『かわいそ笑』で作家デビュー。日常に潜む違和感にも似た恐怖をテーマとするモキュメンタリーホラー作品でファン層を広げている。
この展覧会では梨さんが手がけたいくつものストーリーが、鑑賞者に並走する形で深みをもたせている。

「恐怖心」は「恐怖」とは違います。
「恐怖心」を自認することは「恐怖」からの救いにつながるのでは...。
人に話すことで「恐怖」を楽しみに変えられるのでは...。
梨さんはそうコメントを寄せている。

最先端のホラーを、ぜひ体験しに出かけてほしい。

展覧会パンフレットには、主催者の鼎談や監修を担当した各分野の専門家のコメントなどを掲載。展覧会を体験した上で、さらに恐怖心を考察したい人におすすめ。

『恐怖心展』は5月10日(日)まで開催(※延長の可能性あり)。

取材・文:たなかなつこ




(2026年4月14日更新)


『恐怖心展大阪』

チケット発売中 Pコード:995-923
▼5月10日(日)まで開催中 ※延長の可能性あり
グランフロント大阪 北館B1F ナレッジキャピタル イベントラボ
平日券-2300円
※【期間中の土日祝、GW期間4/30(木)、5/1(金)、5/6(水・振替休日)は使用不可】開館時間は11:00~19:30。最終入場は閉館30分前。観覧の所要時間は約90分となります。小学生以上有料。会場が混雑した場合、ご入場をお待ちいただく場合がございます。会場前での待機はご遠慮いただいております。本券の転売は固く禁止致します。本券の払い戻し、再入場・再発行不可。本券1枚につき1名さま1回限り有効です。
【お問合せ】https://forms.gle/S8UzYAhoKKsJBVxV6

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