ホーム > インタビュー&レポート > 菊池寿人「ビッグバンドと古澤巖さんの編成は、 ここでしか聴けません」
楽曲は毎回、オリジナルアレンジ
――演奏会も今回で20回を迎えますね。
固定メンバーでやっていますから、バンドの質というか、この間にコミュニケーションも変わってきて、そういう意味ではクオリティもすごく変わりましたね。いろんなゲストの方をお招きするのもコンサートのひとつの売りで、毎回、オリジナルアレンジをしているのですごい数の曲数になってきました。
――元々、メンバーの皆さんはどういう経緯で集まったのでしょうか?
僕は元々、24歳の時に自分のビッグバンドを立ち上げてやっていて、その時代、その時代にいろんなミュージシャンに手伝っていただきながら活動してきました。そうするうちにシンフォニーホールの方からお話があったので、立ち上げたビッグバンドを「ザ・シンフォニーホール・ビッグバンド」という形にし直して、始めました。
楽器の組み合わせによってサウンドは変わってくるので、最初はそこが楽しみでしたし、「このメンバーでやったら、こんなサウンドがするんだ」という発見もあって。メンバーそれぞれが独自の音楽性を持っているので、それを組み合わせることによって面白い化学変化が起きるわけです。
あと、もう一つの特徴としては、クラシック専用のホールで演奏するということですね。普通の大きいホールでの演奏はPAを使います。でも、シンフォニーホールの響き方は本当に独特で、このホールじゃないと、というものがあります。そこを聴いていただきたいですね。ビッグバンドなので当然、迫力のある音も出せますし、繊細な音もあります。その響きは僕もトランペットを吹いていて本当に気持ち良いです。
ビッグバンドでは珍しい星にちなんだ曲を用意
――ゲストが古澤さんです。
古澤さんは今回で7回目になります。ゲストの中では一番、出演回数が多いですね。
――古澤さんが初めて来られた時は、どんな印象でしたか。
やっぱり世界をまたにかけて活動していらっしゃる大御所の方なので、そういう意味では緊張感もありました。だけど、それをほぐしてくれて、バンドを和ませてくれる、楽しい方向に持っていてくれるんですよね。お会いしてみたら気さくな方という感じでした。今は何でも相談させてもらっています。当時は古澤さんご自身もビッグバンドとやるのは初めてのことだったそうですが、初回のコンサートから気に入ってくださって、以降、何度も来てくださっています。
――古澤さんと最初に音を合わせた時はいかがでしたか。
すごく心地よかったです。古澤さんも選曲の幅が広くて、その点も長く続いている要因だと思います。ビッグバンドと古澤さんの編成は、ここでしか聴けません。古澤さんが選曲されるジャンルも幅広いので、今、僕らがビッグバンドでやろうとしているところとすごく合うわけです。たとえばクラシックでやる曲をビッグバンドでやったり、クラシックの曲をちょっとプログレみたいな感じでやってみたりとか。僕らも長年ビッグバンドをしていますが、古澤さんが来られることで普通ではできないような経験をたくさんやらせていただいているので、本当に感謝していますし、共演はいつも楽しみです。
――今回の演奏はどうなりそうですか。
「Stardust」とか、「How High the Moon」はジャズのスタンダードなので、こちらから古澤さんに提案して「どうですか?」と。それをご一緒にやってくださいます。演奏会は七夕の日なので、星にちなんだ曲を集めて。「星に願いを」という有名な曲もやりますが、「星めぐりの歌」「見上げてごらん夜の星を」などは、ビッグバンドではあんまりやらない曲で。そういう曲をアレンジして演奏するという新しい試みもあります。
デジタルでは出せない生音の響きを
――ビッグバンドではあまり演奏しない曲は、ファンの方の反応はいかがでしょうか。
前回はタンゴの曲を集めたのですが、タンゴもなかなかやらないジャンルです。でも、やってみたらとても楽しくて。タンゴは曲そのものが良いので、お客さんの反応もすごく良かったです。リピーターの方は毎回、「今回は何が聴けるんだろう」と期待してくださっていますね。シンフォニーホールの響きもそうですし、生の音はデジタルでは出せない音の響きとか、迫力があるので、まず皆様に足を運んで聴いてほしいです。
管楽器は本当に音が直に飛んできますから、臨場感も全然違います。あとは、ホールがうまく響きを作ってくれるんです。特にシンフォニーホールはクラシックのために作られているので、「2秒の残響」があって、それが独特です。2秒響くと、ポップスの場合は響き過ぎになります。でも、それを活かしながら演奏するので、ジャズでもライブハウスなどで聴く音とは全然違って聴こえると思いますので、そういうことも体験してほしいです。
何よりもまずビッグバンドのゴージャスなサウンドを聴きに来てほしいです。とにかくにぎやかなバンドなので、本当に楽しいコンサートになると思います。その辺もぜひ、味わいに来ていただければと思います。
取材・文:岩本
(2023年7月 3日更新)