予約の取れないカウンセラーが
自分に自信が持てない人に捧げる1冊
「こじれたココロのほぐし方」
提案型カウンセリングで、毎月全国各地で4000件以上もの相談に答えている「Counselimg Servive(カウンセリングサービス)」。90名が在籍するカウンセラーのなかでも“予約の取れないカウンセラー”として人気を集めるのが根本裕幸氏だ。そんな根本氏が、このたび「こじれたココロのほぐし方」を上梓した。職場で、家庭での人間関係、友人や恋人同士とのコミュニケーションのみならず、TwitterやFacebook、LINEといったSNSの普及で、人間関係の築き方がより複雑化する現在。人間関係に疲れたときや今の自分に自信をなくしてしまったときに、この本を手に取ると心が柔らかくなる言葉にあふれている。改めて根本氏に、この本へ託した思いを尋ねてみた。
――タイトルの「こじれたココロ」という言葉が印象的でした。根本さんにとって、「こじれたココロ」とはどのような状態を言うのでしょうか。
根本:私のクライアントさんや、ワークショップの受講生の皆さんが抱えている悩みや問題は、多くが人間関係なんですよ。夫婦、職場、友人など、さまざまな人間関係のなかで「どうしたらラクになれるのか」、「どうしたら解決できるのか」という不安を抱えている人が多いです。その悩みは、「自分が本当に思っていること」と「実際に起こす行動」がズレていることから生まれます。ここにズレが生じると、自分の本当の気持ちが見えなくなってしまいます。社会生活を送る中では、誰もが「人に嫌われたくない」と思うものですが、その気持ちが強くなりすぎて自分の本音が見えなくなると、回りに合わせることの方が増えますよね。そうすると、やはり疲れてしまったり、人と付き合うのが億劫になってしまいます。こんな状態を「こじれ」という表現にしました。
――とくにどういう人間関係の相談が多いですか?
根本:今はSNSが普及したことで、情報にあふれている上にすぐ見ることができて便利ですよね。その反面、本来知らなくてもよかった情報も、簡単に入ってきます。例えば職場の同僚とSNSでつながっている場合、その同僚のプライベートが垣間見えてしまったり。自宅に帰ってから「今夜は仕事終わりで同僚と飲み会!」という書き込みと楽しそうな写真を見てしまった日には、「なんで私は誘ってもらえなかったんだろう?」と不安になったりしますよね。でも、同僚との関係を壊したくなくて悶々と悩んだり……。とくに若い女性は、人に対して気を遣いすぎて、「場の空気を読まなければ」と強く思っている人が多いように感じます。結果、「そんなとき、私はどうするべきだったんでしょうか?」と質問されるんですよ。そもそもそこが問題で、僕はいつも「あなたはどうしたかったのですか?」と質問するんです。
――もう、がんじがらめになっちゃって、自分で一体どうしたらいいのかわからなくなってしまう、という。
根本:「自分はこうでなけばならない」と思い描く理想が高すぎて、本来の自分の考えに自信が持てず、不安を抱えてしまうのでしょう。ハウツー本やルール本が売れるのも、そこに理由があると思うんです。自分の本音より先に、「このルールに沿っていないとダメだ」とか「こうしないと幸せになれない」と、自分で作り上げたルールに縛られてがんばりすぎてしまう女性が多いですね。
――やはり、人間関係の悩みを抱えているのは女性の方が多いですか?
根本:そうですね。女性は男性より人に見られる機会が多い分、悩みも多いと思いますね。男性って自然と女性に注目するんですけど、女性って男性だけでなく女性にも注目するでしょう? また、女性の特徴として「和」を大切にしますし、「場」も重要視します。「みんなで」、「一緒に」楽しむことが大切。それがうまくいっているときは問題ないんですが、ふとした拍子に、腹の探り合いになるんです。自分のことは脇に置き、「あの子は何を考えているんだろう?」と顔色を伺い、気を遣い……。
――なるほど、よくわかります(笑)。その原因はどこにあるんでしょうか?
根本:心理学的には、人間関係は元をたどれば親子関係につながると言われています。人とのコミュニケーションに悩みを抱えている人は母親との間に問題を抱えている傾向が強いです。かたや、上司との折り合いが悪くて……といった社会性に不安がある人は、父親との間にわだかまりを持っている人が多いんですよ。例えば相手にはっきりとモノを言えずにいる人を心理分析すると、小さい頃にお母さんが過干渉だったり、反対にお母さんが放任主義だった場合、「私は誰からも必要とされていないのでは」という心許なさを感じているケースが多いです。どこに原因があるのか過去をさかのぼって分析すると、悩みを解きほぐす近道になりますね。
――この本にも書いてある「心をほぐすワーク」は、自分の本音の探り方や考え方のコツがわかりやすくまとめられていて、手軽に実践できますね。
根本:僕らが実践しているカウンセリングは、欧米タイプの「提案型」といわれる方法です。カウンセラーというと、「相手の話をじっくり聞いてくれる人」と思われがちなんですが、僕らの役目は話を聞くだけでなく、悩んでいる人の歯車のズレをカチッとはめるお手伝いなんです。まず、クライアントの相談を聞いてから心理分析をして、提案をする。この3つのプロセスで解決方法を探っていきます。悩みごとは生活習慣病に似ていて、我慢が蓄積するとますますこじれてしまう。こじれに気づいても、すでにその考え方がクセになっていて同じ失敗を繰り返してしまうんです。そこで、心に抱えた荷物を下ろしてもらうような感覚で僕らがその方法を提案する、という具合ですね。
――著書には、過去に根本さんご自身も「悩むのが趣味だね」と言われたことがある、と書かれていましたが…。
根本:そうなんです。サラリーマン時代は、すごく悩みグセがありました。子どもの頃から、模範的な優等生で、「どうあるべきか」を常に考えているようなタイプだったんです。結果、働き出してからもハメをはずせないうえに自分を出すこともできない、とても辛い時期がありました。それで心理学を学び、自分を分析することができたんです。実際に自分自身が経験したことがきっかけで、カウンセラーの道へ進んだんですよ。
――そう聞くと、とても身近に感じます。
根本:そう感じてもらえるとうれしいですね。今やカウンセリングは、特別なことではなくとても身近なものになりました。だからこそ、僕らが目指しているのは「近所に住んでいる気のいいおっちゃん、おばちゃん」なんですよ(笑)。庶民的な、なんでも話せる身近な存在でありたいと思っています。
――では最後に、とくにどういう方々に手に取ってもらいたいですか?
根本:やはり20~30代の女性に読んでもらえるとうれしいですね。40歳の人がよく「40歳って、もっと大人だと思っていた」って笑うじゃないですか。僕は、この感覚はすごくいいことだと思うんですよ。そう言って笑えるというのは、今の自分をありのまま認めている、という証拠なんです。だからこそ、高い理想を追い続けてがんばりすぎているな、と感じたとき、「自分はどうしたいか」を知るヒントになれば。自分が楽しいこと、好きなことを素直にやっていけば、次第に自信がついて人間関係もラクになると思います。身近に置いておいてもらえるとうれしいですね。
(取材・文/中野純子)
(2014年7月 3日更新)
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●根本裕幸
ねもとひろゆき…カウンセリングサービス所属のカウンセラー、兼神戸メンタルサービス所属トレーナー。恋愛や結婚などの男女関係をはじめ、対人関係、ビジネス心理、家庭関係、性格改善など幅広いジャンルを得意とし、わかりやすい切り口で問題解決プロセスを提案している。著書に「本当に愛されてるの?」、「『女子校育ち』のための恋愛講座」(すばる舎)、『頑張らなくても愛されて幸せな女性になる方法』(リベラル社)など。雑誌や新聞、インターネット記事への寄稿のほか、テレビ、ラジオの出演、企画・政策協力なども多数