ホーム > マンスリー・センチュリー 2016 > 第12回 4月〔April〕

エロール:歌劇「ザンパ」序曲
ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 作品11
モーツァルト:レ・プティ・リアン K.299b
モーツァルト:交響曲 第31番 ニ長調「パリ」K.297

 

 日本センチュリー交響楽団2017-18シーズンの開幕を告げる定期演奏会は首席指揮者飯森範親によるフレンチ・プログラム。第1曲目の歌劇『ザンパ』序曲を皮切りに、モーツァルトとエロールとショパンの時間軸が重なり合う、凝った内容となっている。パリで一世を風靡したオペラ作曲家フェルディナン・エロールの生まれた年は、モーツァルトの没年でもある1791年。そしてエロールがヒット作『ザンパ』を初演した1831年にショパンがパリへ到着する、という流れだ。彼らが生きた時代、パリは革命、ナポレオン、共和制そして再び帝政へと目まぐるしく動き、音楽もまた貴族の手からブルジョアの手へと移り変わった。そんな動乱と熱気に満ちたパリの市井を垣間見るような、華やかさと粋に溢れたプログラムとなっている。

 ピアノは'95年ミロシ・マギン国際ピアノコンクール(フランス)、97年シマノフスキ国際コンクール、98年サレルノ国際コンクールのすべてに優勝、ショパンへの深い造詣で知られ、現在洗足学園大学准教授でもある江崎昌子を迎える。飯森範親とはすでにピアノ協奏曲2番の録音を果たしている江崎が、今回演奏するのは第1番。ワルシャワとパリを結ぶ若きショパンの情熱を聴き取りたい。

指揮:本名徹次
ピアノ:児玉麻里
ピアノ:児玉桃

ベートーヴェン:交響曲 第1番 ハ長調 作品21
プーランク:2台のピアノのための協奏曲 ニ短調 FP61
サン=サーンス:動物の謝肉祭(管弦楽版)

 

 今年、センチュリーの豊中名曲シリーズはベートーヴェンの交響曲をテーマ。まずはその幕開けにふさわしく第1番からスタートする。ハイドン、モーツァルトら、先人からの影響を色濃く残しながらも、すでに第3楽章には実質のスケルツォ(題名はメヌエット)を挿入するなど、30歳になったばかりのベートーヴェンの才気に溢れる1作だ。冒頭の第1音が、すべての交響曲が目指すことになるベートーヴェンの9曲の輝かしい始まりを告げている。

 今回見逃せないのが、ピアニスト、児玉麻里と児玉桃の姉妹共演だ。大阪、豊中市出身。ともにヨーロッパで教育を受け、ケント・ナガノとの一連の演奏、録音を中心に高い評価を受ける麻里と、近年はメシアンへの取り組みなどで独自の境地を開拓しつつある桃が、センチュリーとともにフランスの才人プーランクによる『2台のピアノのための協奏曲』を演奏する。プーランクに時に現れる鋭角的な曲想と色彩感に満ちた旋律が、ふたりのピアニストによってイメージ豊かに描かれていくことだろう。

 そして児玉姉妹のピアノが大活躍するのがこの作品。フランスの巨匠サン=サーンスによるエスプリに満ちた組曲『動物の謝肉祭』(管弦楽版)だ。曲名にはライオンや象や亀に化石や水族館までが登場。なぜかピアニスト(!)まで現れるというユーモラスな展開ながら音楽的には高度な趣向が凝らされ、クラシック入門者にはもちろん、クラシックファンにも聴き応えたっぷりな全14曲だ。終曲の直前に独奏チェロとともに演奏される『白鳥』の夢見るような美しさは、きっと聴く人に忘れがたい印象を残すことだろう。バラエティに富んだプログラムを指揮するのは、センチュリーとの厚い信頼で結ばれた本名徹次。2017-18シーズン、豊中名曲シリーズのオープニングを鮮やかに飾ってくれるに違いない。

チケットの発売日をあらかじめご確認ください

いずみ定期演奏会 No.35 ハイドンマラソン
●5月26日(金) 19:00開演 (18:00開場)
いずみホール
Pコード316-387
【指揮】飯森 範親
【ホルン】水無瀬 一成

第217回 定期演奏会
●6月16日(金) 19:00開演 (18:00開場)
●6月17日(土) 14:00開演 (13:00開場)
ザ・シンフォニーホール
Pコード316-392
【指揮/ヴァイオリン】
ドミトリー・シトコヴェツキー

第218回 定期演奏会
●7月7日(金) 19:00開演 (18:00開場)
●7月8日(土) 14:00開演 (13:00開場)
ザ・シンフォニーホール
Pコード316-393
【指揮】ヤーノシュ・コヴァーチュ
【チェロ】イェンス=ペーター・マインツ

■ハイドン交響曲集Vol.1

レコード芸術 2017年1月号 特選盤

ハイドン:
交響曲 第6番 ニ長調 「朝」
交響曲 第17番 ヘ長調
交響曲 第35番 変ロ長調

指揮:飯森範親
2015年6月5日
大阪、いずみホール にてライヴ録音
¥3,200(税抜)
HQ Hybrid盤 OVCL-00610

 

■マーラー:大地の歌

レコード芸術2016 2月号 特選盤受賞

指揮:飯森 範親
テノール:福井 敬
バリトン:与那城 敬
2015年4月10日、11日
ザ・シンフォニーホール にてライヴ録音。
¥3,000(税抜) CD盤 OVCL-00584

 

■ブラームス:交響曲全集

ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調 作品68
交響曲 第2番 ニ長調 作品73
交響曲 第3番 へ長調 作品90
交響曲 第4番 ホ短調 作品98

指揮:飯森 範親
2014年4月17日~19日 
ザ・シンフォニーホールにて録音
¥5,000(税抜)
HQHybrid盤 OVCL-00554

 1stヴァイオリン荒井英治、2ndヴァイオリン松浦奈々、ヴィオラ丸山奏、そしてチェロに北口大輔。日本センチュリー交響楽団が誇るコンサートマスターと首席奏者による贅沢なカルテットが、3月28日(火)豊中市立文化芸術センターに登場する。センチュリー室内楽シリーズVol.2「CENTURY JAZZ NIGHT」だ。センチュリーがジャズ?と素朴に疑問を感じた方にこそ、ぜひ一度聴いていただきたい。手拍子を取りたくなるほどの、熱く、楽しい音楽が味わえるはずだ。

 キーマンは荒井英治だろう。今回のプログラムにあるデイビッド・バラクリシュナンは、アメリカの超絶技巧集団タートル・アイランド・カルテットの中心人物の名前。フォークミュージック、ブルーグラス、スイングからヒップホップまで、あらゆる音楽の魅力を吸収した楽曲の一部は荒井の主導のもと、すでに昨年の、第98回アーバンイブニングコンサートでも披露され、観客を熱い興奮に包んだ。モルゴーア・クァルテットではプログレッシヴ・ロックまでもレパートリーに加える荒井が、弦楽四重奏の新たな楽しさを追求すべく、センチュリーを代表するメンバーたちとともに、このタートル・アイランド・カルテットの作品に再び取り組む。

 クラシックを極めた奏者たちだからこそできるジャズの自由さ。客席とステージが一体となって音楽が満ち溢れる喜び。当日豊中市立文化芸術センターの小ホール200席は、そんな楽しさで溢れるに違いない。そしてもうひとつ、プログラムにある「エマーソン、レイク&パーマー」の文字に反応するファンも多いはず。プログレッシヴ・ロックのDNAを香らせる荒井の存在がどのような音楽にカルテットを導くのか。そんな可能性に心を躍らせつつ、「CENTURY JAZZ NIGHT」の楽しみを待ちわびよう。

■センチュリー室内楽シリーズVol.2
CENTURY JAZZ NIGHT

3月28日(火) 19:00
豊中市文化芸術センター小ホール 全席指定:3,500

 

【出演】(写真上より)
荒井英治〔ヴァイオリン〕 日本センチュリー交響楽団首席客演コンサートマスター
松浦奈々〔ヴァイオリン〕 同コンサートマスター
丸山奏〔ヴィオラ〕 同首席ヴィオラ奏者
北口大輔〔チェロ〕 同首席チェロ奏者

 

【プログラム】
SKYLIFE:デイビッド・バラクリシュナン
Spider Dreamsより:デイビッド・バラクリシュナン
Trilogy:エマーソン、レイク&パーマー  他

 

【問い合わせ】
豊中市立文化芸術センターチケットオフィス
06-6864-5000(10:00~19:00 月曜休館)

(2017年3月17日更新)