ピアノに小菅優を迎え、またしても
いずみシンフォニエッタ大阪が贈る
圧巻のプログラム。第47回定期演奏会『協奏燦然!』
(2/2)
新しい『シャーマン』が芽生えてくることを楽しみに
― 作曲家 西村朗〔いずみシンフォニエッタ大阪音楽監督〕
ピアノ協奏曲《シャーマン》の源泉は、まだ少女といってもいい頃の小菅さんのオーラに触れた時から始まっているんです。初めてお会いしたのは2000年くらいのドイツで、ハノーファーかどこかで私の曲を演奏しに行った時に自転車に乗ってやって来た小菅さんと話をしたのを覚えているんですね。2004年にはかなり忙しくなっていたところを、ロイトリンゲンまで来てもらってこの作品を弾いていただいたんですが、不思議なもので作曲中のイメージとピタリと合った。小菅さんの才能が、もともと持っている大器としてのオーラや音楽性が滲み出してくるような形で力になって、世界に通じるピアニストとして一気に浮上して来たという感じがあったんです。それがまさにシャーマン的な登場の仕方だなと思って、私はこの曲を書いたんです。だから小菅さんは今でも私にとってミステリアスな存在です。霊性というのかな、スピリチュアルな感じがあるんですよ。
思えば私は18年前にこの協奏曲を書いたわけです。この冒頭の音は小菅さんのテーマと言っていいんですが、これなどは私が小菅さんから受けたイマジネーションやオーラというものを直接的に旋律化しています。ここには私が最初に感じて、今でも旋律として彼女のイメージにつながる変わらないものがある。ただ、これを最初に瑞々しい感じて書いた時のこの旋律と私の関係と、18年経ってこの旋律をもう1回味わう時の感覚の中には、もっと(先に)進まなくてはならないという思いとか、もっと別な形もあるだろうというようなジレンマみたいなものもあるんですね。
だから今、同じ《シャーマン》というテーマで曲を書けと言われたら、まったく違う曲を書くと思うんですよ。その時々での私の真実がここに出て来ている。つまりこの《シャーマン》は18歳になった私の子どもなんですね。今回はそれを生まれた時に近い条件でもう1回弾いていただいて、それが私にどう聴こえてくるのかということを感じてみたい。これに対して私はとても怖いような期待感があるんです。またそれに触れて新たな《シャーマン》が私の中で芽生えてくるということも、実はとても楽しみにしているんです。近い将来また小菅さんのために曲を書きたいと思っているので、その時にはそれがまた投影されてくると思います。
[2021年11月25日]
(2022年1月 7日更新)
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