ザ・シンフォニーホールが贈る冬のコンサートに
ソプラノの小林沙羅が待望の登場。「《ノエル》は
クリスマスと日本の冬景色が溶け合うステージ」

12月13日（金）、ザ・シンフォニーホールが贈る新しい冬のコンサート《ノエル》に、可憐な容姿と表現力溢れる歌声で活躍の幅を広げるソプラノの小林沙羅が登場する。《ノエル》とはフランス語でクリスマスの季節やそれにまつわる歌のこと。数々の『アヴェ・マリア』や『アメイジング･グレイス』など聖なる1日を祝福する清純な歌が集められたステージだ。

「2歳から5歳までドイツに住んでいたので、その頃のクリスマスの思い出がありますし、そのせいか今でも家族でしっかりとお祝いしますね。生の大きな樅の木に飾りつけして、クッキーを焼いて、みんなで集まってお料理を食べる、みたいなクリスマスを」そう語るのは公演に先駆けてザ・シンフォニーホールを訪れた小林沙羅。華やかな印象はステージそのまま、声には親しみやすい明るさが溢れる。東京藝術大学および大学院修士課程終了。2006年、モーツァルトのオペラ『バスティアンとバスティエンヌ』のバスティエンヌ役でデビューを飾る。

その後の活躍は枚挙に暇が無いが、分けても関西の音楽ファンへ彼女の魅力をアピールしたのは2011年の兵庫県立芸術文化センターの歌劇『こうもり』におけるアデーレ、および2018年の歌劇『魔弾の射手』におけるエンヒェン、そして2015年5月から11月にかけて全国10都市を巡演し、関西でも2公演が行われた野田秀樹演出、井上道義指揮によるオペラ『フィガロの結婚～庭師は見た！』でのスザンナ役だろう。今回はその彼女にとって、ザ・シンフォニーホールで初めての本格的なリサイタルでもある。「兵庫のオペラや関西での公演で私のファンになって下さった方がたくさんいて、リサイタルがあるなら絶対行きます！って声をかけてくれるんです。うれしいですね。楽しんでいただけるステージにしたいと思います」来年1月11日には東京、Bunkamuraオーチャードホールで美内すずえ原作･台本による歌劇『紅天女』の幕が開く。関西のファンからも、今やその動向には熱い視線が注がれている。

「クラシック音楽はもちろんヨーロッパで生まれたもので、普段は私もその国の言葉で歌います。でも一方で自分の中では日本語というものがとても大きな位置を占めていて、私はこれを大切に歌って行きたい。今年2月のロンドンでのリサイタルでは後半に日本の曲だけを歌いました。お客さまは退屈しないかな、と不安もありましたがとても楽しんで聴いてもらえて、終演後には「日本にはいい曲がたくさんありますね」と声をかけていただきました。私は日本で海外の曲を歌うだけではなくて、日本でも日本の曲を、そして海外で日本の曲を歌っていくという、そんな歌手になりたいんです。だから今回のリサイタルでもよく知られた『きよしこの夜』や『もろびとこぞりて』などを採り上げるほかに、日本の唱歌『冬景色』や『冬の夜』、山田耕作の『ペチカ』なども歌う予定です」さらに伝統的なクラシックからは、マルクスの『マリアの歌』やレーガーの『マリアの子守唄』といった知られざる作品の美しさを紹介したいとも。「ヨーロッパ由来のクリスマスが、どこか懐かしい日本の冬景色と溶け合って、聴いた人が暖かい気持ちになれるコンサートにできれば」溌剌とした笑顔がこぼれた。
 

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　■ザ・シンフォニーホールにて。

（2019年12月 6日更新）