「名曲を弾くことを恐れずに名曲に取り組む」
関西弦楽四重奏団が豊嶋泰嗣(ヴィオラ)と
ともに臨むブラームス弦楽五重奏曲 全曲演奏会
関西を拠点に活動を続ける気鋭のカルテット、関西弦楽四重奏団がヴィオラの豊嶋泰嗣(©大窪道治/写真左)とともにブラームスの弦楽五重奏曲全曲演奏会を行う。結成7年を迎え、実力と人気を確実なものとした彼らが臨む新たなステージだ。
大阪交響楽団コンサートマスターの林七奈、元大阪交響楽団コンサートマスターで京都市交響楽団の田村安祐美、京都市交響楽団首席ヴィオラ奏者の小峰航一、ソリストとして活動するチェロの上森祥平がカルテットを結成したのは2012年のこと。京都のカフェ・モンタージュを中心に活動を続け、2014年11月に大阪、ザ・フェニックスホールで本格的に関西弦楽四重奏団としてのデビューを飾った。2017年からは彼らにとって2度目となるベートーヴェンの16曲、全曲ツィクルスを敢行。2019年5月まで、全6回にわたって聴衆を魅了した熱気に溢れた演奏会を、林七奈は「充足感よりもさまざまな課題に目を開かされた思いがする。ベートーヴェンは私たちが数年ごとに、必ず立ち返る場所」と振り返る。
その関西弦楽四重奏団で林が力を入れて行きたいと語るのが、いわゆる「名曲」によるプログラム。林は自分たちが若い頃に憧れを持って弾いた室内楽の名曲が、現在あまり弾かれないことに危惧を感じているという。「カルテットというのは常に挑戦していなければならない、難しい曲を弾かないと挑戦が足りない、という目で見られることが多いんです。でも、お客さまも私たちも楽しめない難しい曲ばかりを集めて弾いて、それが挑戦か?っていうのも違う気がするんですよ。ドヴォルザークの『アメリカ』(①)、シューベルトの『鱒(ます)』(②)、ハイドンの『ひばり』(③)や『5度』(④)。時には客演の方もまじえて、こうした名曲の良さをお客さまと一緒に味わうことは、弾く方にとっても聴く方にとってもクラシックを一生楽しんでいくための大事なプロセスだと思います。だから私たちは名曲を弾くことを恐れずに名曲に取り組む。関西弦楽四重奏団はそんな団体でありたいと思っています」と語る。
今回のブラームスの2曲の五重奏曲もこうした彼らの姿勢の中から選ばれた作品だ。変則的な編成から実演の機会は少ないが、2挺のヴィオラから生まれるシンフォニックな味わいは格別。ブラームスが穏やかに微笑みかけるような曲想も魅力的だ。「ブラームスの交響曲がお好きな方にもぴったりな、豊かで暖かい音楽があります。真冬の演奏会ですが、ちょうどそこにふさわしい作品がチョイスできた気がします。私たちと一緒に幸福感と充実した響きを楽しみながら、お客さまがそれぞれの2019年を締め括っていただければうれしいと思います」。
【文中に登場する室内楽】
①ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第12番 ヘ長調『アメリカ』
②シューベルト:ピアノ五重奏曲 イ長調『鱒(ます)』
③ハイドン:弦楽四重奏曲第67番 ニ長調『ひばり』
④ハイドン:弦楽四重奏曲第76番 ニ短調『五度』
(2019年11月26日更新)
Check