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ボヘミアの森の奥深く、愛は恋人たちを救えるか!?
ドイツオペラの金字塔、ウェーバー『魔弾の射手』
佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2018

 兵庫県立芸術文化センターは7月20日(金)より、佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2018としてウェーバーの『魔弾の射手』を上演する。同プロデュースオペラがドイツ語作品に取り組むのは2007年の『魔笛』以来11年ぶり。満を持してのドイツオペラ上演である。チケットは2月25日(日)より一般発売される。

 物語の舞台は17世紀のボヘミア地方。護林官の娘アガーテと婚約中の狩人マックスは深刻な銃の腕のスランプに陥っていた。だがアガーテと結婚するための条件は射撃大会で優勝すること。思い悩むマックスの前に悪魔に魂を売った仲間のカスパーが現われ、百発百中の“魔弾”を手に入れれば優勝は間違いないとそそのかす。アガーテの心配をよそに悪魔の棲む狼谷で魔弾の鋳造に取りかかるマックスとカスパー。だがその“魔弾”には、恐ろしい秘密が隠されていた…。
 
 『魔弾の射手』が初演されたのは1821年。ドイツの国民的オペラと評されるほどの人気を博し、後年のワーグナーらへの道を拓いた記念碑的な作品である。イタリアオペラの装飾的な世界とは異なり、そこには悪魔の棲む深い森や、それと相対するような素朴な信仰といったドイツならではの精神性が息づく。ボヘミアの森林を思わせるホルンの重奏やウェーバー独特のクラリネット・ソロが盛り込まれた序曲に始まり、「森を越え、野を越え」(マックス)、「まどろみは近づき」(アガーテ)などのロマンティックなアリアが全編を彩る。中でも第3幕で力強く歌われる「狩人の合唱」は、このオペラ全体を代表する作品として有名だ。
 
 演出はミヒャエル・テンメ、装置にはフリードリヒ・デパルムとドイツ・オーストリアからのコンビを招聘。ドイツオペラのスタイルを継承した正統的な舞台を創り上げるという。主人公マックスには世界的なヘルデンテノール(英雄的な力強さを表現できるテノール)として名高いトルステン・ケールとクリストファー・ヴェントリス、アガーテにはジェシカ・ミューアヘッドとカタリーナ・ハゴピアンのダブルキャストが実現。またアガーテを支える従姉妹のエンヒェンに小林沙羅とマリア・ローゼンドルフスキーが扮するなど、佐渡裕芸術監督プロデュースオペラならではの国際色豊かな顔ぶれが揃った。大阪府内で行われた製作発表記者会見には佐渡裕芸術監督、小林沙羅、フリードリヒ・デパルムが出席。公演に向けた抱負を語った。
 
■7年間の自分の成長を確かめる舞台-小林沙羅〔ソプラノ/エンヒェン〕
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 私が歌うエンヒェンという役はヒロイン、アガーテの従姉妹で底抜けに明るくて、とても前向きな性格を持っています。このオペラのお話の軸はマックスとアガーテの結婚なんですが、エンヒェンのキャラクターは、そこで重要な役割を果します。どんな悩みや苦しみがあったとしても、それに負けないで物事を明るい方向に向けていく力というのは現実の世界でも非常に大切なものだと感じるので、私自身、楽しみながら彼女を演じたいと思っています。兵庫の舞台は2011年の『こうもり』以来、7年ぶり。この兵庫のステージってちょっとクラシックのコンサートとは思えないような熱い盛り上がりをみせるんですよ。前回はお客さまから「沙羅ちゃーん」て声をかけていただいたり(笑)。その楽しい場所に帰って来られて本当にうれしいですし、この7年間の自分自身の成長を確かめる意味でも大切にしたいプロジェクトだと思っています。
 
■最もピュアな『魔弾の射手』を-フリードリヒ・デパルム〔舞台装置〕
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 このオペラは17世紀の中頃のドイツの物語です。ヨーロッパ全土でたくさんの犠牲者を出した30年戦争のすぐあとです。ですから世の中は荒廃していて、背景となる「森」もただロマンティックなばかりの森ではありません。今回の舞台装置には当時の様子が伝わる焼け焦げた木々であるとか、戦争で剥がれ落ちた城の壁などのイメージを多く用いました。悪魔や奇跡といったものを信じていた人たちがたくさんいた時代のお話であることを、お伝えできるように工夫したのです。このオペラはドイツの精神的なものを描いた物語として、長い歴史の中で、いろいろな形で上演されて来ました。政治的な意味を持たせたり、その時代ごとの主張が込められたりしてきましたが、今回私たちはできるだけそうしたものから離れて『魔弾の射手』の本来あるべき姿、そのもっともピュアな形をみなさまにご覧いただきたいと思っています。
 
■今回も素晴らしいスタッフ・キャストとともに-佐渡裕〔指揮〕
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 イタリア語で歌われるオペラとドイツ語を母国語とする人たちがドイツ語で上演する、いわゆるドイツオペラというのは単に言葉の問題だけではなく、内容的にも非常に違ったものを含んでいるような気がします。『魔弾の射手』では何よりも悪魔がいるということが、すごく現実的な問題として扱われています。だからこそ、そうした悪の存在との対比においてアガーテやエンヒェンのアリアの美しさはより際立ちますし、人間の罪と罪を犯したものがどのように救われるか、という精神的な問題にまで踏み込んでいるように思います。今の時代、あらゆるものが複雑化していますが、このオペラが描いているのは、正しい道を進む、あるいはそのためのリーダーシップを持つということを、私たちが決して忘れてはいけないということではないかと考えています。演出のミヒャエル・テンメさんをはじめ、今回も素晴らしいスタッフ・キャストに集まってもらうことができました。私自身がわくわくする期待を持って舞台の制作に臨んでいるところです。



(2018年2月22日更新)


Check

  佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2018
   『魔弾の射手』-Der Freischütz-


〈全3幕/ドイツ語上演・日本語字幕付き/新制作〉

【音楽】カール・マリア・フォン・ウェーバー
【台本】フリードリヒ・キント

【指揮】佐渡 裕 (兵庫県立芸術文化センター芸術監督)
【演出】ミヒャエル・テンメ
【装置・衣裳デザイン】フリードリヒ・デパルム
【照明・映像デザイン】ミヒャエル・グルントナー
【プロデューサー】小栗哲家


【出演/ダブルキャスト】〔7/20.22.25.28.〕

【オットカー侯爵】小森輝彦
【クーノー】ベルント・ホフマン
【アガーテ】ジェシカ・ミューアヘッド
【エンヒェン】小林沙羅
【カスパー】髙田智宏
【マックス】トルステン・ケール
【隠者】妻屋秀和
【キリアン】清水徹太郎(シングル)
【ザミエル】ペーター・ゲスナー(シングル)
 


【出演/ダブルキャスト】 〔7/21.24.27.29〕

【オットカー侯爵】町英和
【クーノー】鹿野由之
【アガーテ】カタリーナ・ハゴピアン 
【エンヒェン】マリア・ローゼンドルフスキー
【カスパー】ジョシュア・ブルーム
【マックス】クリストファー・ヴェントリス
【隠者】斉木健詞
【キリアン】清水徹太郎(シングル)
【ザミエル】ペーター・ゲスナー(シングル)

【合唱】ひょうごプロデュースオペラ合唱団
【管弦楽】兵庫芸術文化センター管弦楽団
    
【公演日程】
7月20日(金).21日(土).22日(日).24日(火).
25日(水). 27日(金).28日(土).29日(日) 全8回公演  
各日14:00開演(13:15開場)
A席-12,000円  B席-9,000円  C席-7,000円 
D席-5,000円   E席-3,000円(消費税込)
2月25日(日)チケット発売  Pコード100-335

【会場】兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
【主催】兵庫県、兵庫県立芸術文化センター
【制作】兵庫県立芸術文化センター

【問い合わせ】
芸術文化センターチケットオフィス 0798-68-0255 

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