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ユーモア溢れる現代音楽『セロ弾きのゴーシュ』
いずみシンフォニエッタ大阪 第33回定期演奏会
「動物たちのワンダーランド」で上演!

 街の楽団でいちばん下手くそなセロ(チェロ)奏者のゴーシュが、10日の後に迫った第6交響曲のために夜ごとチェロを練習する。そんな彼の元に猫やカッコーやたぬきといった動物たちが現れて…。宮澤賢治の童話をベースに、現代作曲家の川島素晴が作曲した音楽劇『セロ弾きのゴーシュ』が7月12日(土)、いずみシンフォニエッタ大阪の第33回定期演奏会で演奏される。
 
 この作品は2004年、チェロ奏者の丸山泰雄が出身地・仙台での公演に際し、川島素晴に委嘱したもの。サン=サーンスの「動物の謝肉祭」とカップリングできる新曲を、という依頼に応えた作品だ。「プロのオーケストラの奏者で楽器が下手ってことは現実には考えられないですから、楽譜を読むのが苦手なゴーシュ君のところに作曲するのが遅い作曲家から、コンサート前日にやっと楽譜が届けられて、ゴーシュ君が必死で練習するという設定に変えてあります。現代ではそのほうがリアル、というか、実は私にも覚えがありまして(笑)」と川島素晴。動物の声は全部ソプラノの太田真紀が演じ分けるのだが、これがめちゃくちゃ面白い。ドラムの練習に現れたたぬきが「ぽんぽこロック」をシャウトしたり、ねずみの親子は「お受験」にほとほと疲れていたり…。
 
 「初演の時は子供たちをコンサートに連れて来ようっていう企画だったんですね。僕は子供たちがクラシックのコンサートに来ないっていうことに、以前からとても危機感を覚えていて、なんとか彼らの「初めて」のハードルを下げる方法はないかと考えて「動物」という切り口でプログラムを作ったんです。その中でこの音楽劇を上演したんですが、芝居はとってもユーモラスでありながらも音楽は非常にしっかりした現代音楽になっている作品、と言えると思います」。丸山泰雄はそのように語る。ゴーシュを演じるのは、もちろん丸山自身。その童心に溢れた(!)演技にも注目したい。「その後、宮城県でもう一度だけ再演の機会があり、今回で3回目。僕としてはこれまでクラシックを聴いてこなかったという子供たちや、親しんでこなかったっていう人たちにぜひ聴いてもらいたくて、日本全国、世界のいろんな場所にもっともっと届けて行きたい作品なんです」。
 
 当日は「動物たちとのワンダーランド」と題し、スティーブ・ライヒの『ヴァイブ、ピアノ、弦楽器のための変奏曲』、そしてサン=サーンスの『動物の謝肉祭』とともに上演される。



曲目紹介 
~あるいは「動物たちとのワンダーランド」が楽しい3つの理由(ワケ)
 
1.響きの快感に満ちた『ヴァイブ、ピアノ、弦楽器のための変奏曲』(2005)
長く、短く、不規則で複雑なリズムに彩られたサウンドが鳴り渡る、躍動感に溢れた作品。音楽は走り出し、立ち止まり、表情を変えるかと思うと再びリズミカルな速度を取り戻す。現代音楽らしい仰々しいタイトルがついてはいるが、難解さに陥らず、聴く者は音響の美しさに身体を浸す快感がある。テクノやクラブ・ミュージックを通過した現代のリスナーには、むしろ親しみやすい音楽と言えるかも知れない。発表当時69歳のスティーブ・ライヒ。その若々しい感覚に驚かされる作品だ。日本初演!
 
2.ナニワの現代音楽に変身!『セロ弾きのゴーシュ』(2004)
聴いて、観て、2度おいしい音楽劇『セロ弾きのゴーシュ』だが、今回はいずみシンフォニエッタ大阪仕様の最新バージョン。ゴーシュたちが演奏する新曲は、初演の時には「ササニシキ・シンフォニー」と呼ばれたが(仙台だから)、今回はなんと「食い倒れシンフォニー」として登場する。「〈語り〉の太田真紀さんは富田林市のご出身です。初演の時は大阪弁のイントネーションを矯正して臨んだ様子ですが、今回は全部開放するらしいので、ご期待ください。きっと、そこまでやるか!のネイティブな大阪弁が飛び出すはずです」(丸山泰雄)
 
3.実は意外に演奏されない『動物の謝肉祭』(1886)の上演
いろいろな動物がさまざまな楽器で表現されることから、管弦楽の入門編として紹介されることの多いカミーユ・サン=サーンスの作品。だが、実は意外に演奏されない作品なのだ。もともと私的な集まりのために書いた作品として、サン=サーンス自身が生前、上演・出版を許さなかったという事情もあるが(『白鳥』だけが例外)、大きな理由はその楽器編成。ピアノ2台に各種打楽器を用意し、しかも管・弦楽器はひとりずつというちょっと面倒くさい編成なのだ。しかし今回、いずみシンフォニエッタ大阪では『ヴァイブ、ピアノ~』『セロ弾きのゴーシュ』と組み合わせることで、この問題をクリア。ユニークなプログラムが実現した。「サン=サーンスと言う人は長生きで、ラヴェルやドビュッシーの時代まで生きていたので保守派の代表みたいに言われるんですけど、実際は非常に斬新な考え方の持ち主で、彼が採用した響きというのは、1曲目のライヒに通じるものもあるほどなんです。そもそも『動物の謝肉祭』自体が皮肉やユーモアに溢れていて、頭の固い作曲家にはとてもムリ。そんなことも考えながらこの曲を聴くと、彼の別な魅力も見えてくるのではないでしょうか」(川島素晴)

(2014年6月19日更新)


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いずみシンフォニエッタ大阪

いずみシンフォニエッタ大阪〈第33回定期演奏会〉

「動物たちとのワンダーランド」

●7月12日(土)16:00 いずみホール
一般-5000円(指定)  Pコード 220-477 
チケット発売中

【指揮】飯森範親
【チェロ】丸山泰雄
【語り】太田真紀

【プログラム】
スティーブ・ライヒ:ヴァイブ、ピアノ、弦楽器のための変奏曲
川島素晴:セロ弾きのゴーシュ
サン=サーンス:動物の謝肉祭
※15:30よりプレコンサート、15:45よりプレトークあり。

チケット情報はこちら


【問い合わせ】
いずみホールチケットセンター■06-6944-1188


           飯森範親(指揮)


丸山泰雄(チェロ)             太田真紀(語り)


         川島素晴(作曲:「セロ弾きのゴーシュ」)