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「絶対にがっかりさせない自信はある」
中村壱太郎、和装でフラメンコを踊る異色歌舞伎が再演!

伝説の大盗賊、石川五右衛門は、スペインの血をひく赤毛のハーフだった―――! 歌舞伎とフラメンコの異色コラボレーションを実現した、奇想天外エンタテインメント歌舞伎、片岡愛之助主演の十月花形歌舞伎『GOEMON 石川五右衛門』が10月5日(金)、大阪松竹座で開幕する。歌舞伎の創始者と言われる出雲の阿国役でヒロインを勤める中村壱太郎に見どころを訊いた。

2011年に徳島県の大塚国際美術館「システィーナ歌舞伎」で和洋の融合をテーマに初演。その後熱い支持に応え、大阪松竹座、新橋演舞場で再演を重ね、このたび大阪では7年ぶり5度目の再演が決定した。「まさに歌舞伎の語源である『傾(かぶ)いている』というのを全面に押し出した作品。チラシもすごく好きで、“ただ事じゃないぞ!”という雰囲気が表れているじゃないですか」と笑顔で語る壱太郎。「あれ? とちょっとでも興味が沸いて足を運んでもらったら、絶対にがっかりさせない自信はある」ときっぱり宣言する。
 
石川五右衛門(愛之助)は、キリスト教布教のため日本を訪れていたイスパニアの神父・カルデロン(今井翼)と明智光秀の家臣の娘、石田局(上村吉弥)との間に生まれるが、間もなく豊臣秀吉が打ち出した切支丹禁止令により父は国外追放、母も命を落とし、天涯孤独の幼少期を過ごす。時を経て天下御免の大泥棒として生き延びた今、彼が狙う“お宝”とは……。
 
5度目の再演では、上方歌舞伎らしい「情」をテーマに掲げる。「もともと筋として親子の情や助け合いの力がこの作品にはあると思うんですね。でも情というのは芝居だけで出すのではなく、カンパニーの中にもすごくあって。愛之助のお兄さんとは数々の舞台で相手役をさせてもらい、その都度たくさんの情をいただきました。共演者の方ともコロナ禍とはいえ、テレビ電話などを使って、活発に意見を交わしていくことで生まれる情や絆もある。お客様に伝える意味でも、そういった思いは大事にしていきたい」。
 
本来なら2020年に上演されるはずだった本作。しかしコロナ禍に見舞われ、昨年は急遽ショー形式に形を変えて上演した。公演中止の知らせには「悔しすぎて、自分でスタジオを借りて、出雲の阿国の扮装をして踊りました」。その模様は壱太郎が開設したYouTubeチャンネル『かずたろう歌舞伎クリエイション』でも公開している。「何が嬉しかったかって、その時力を貸してくれたフラメンコの振付指導の佐藤浩希さんや演奏家の方々、みんなが『GOEMON』を好きでいてくれたこと。それを思ってトークショーに出たときに、愛之助のお兄さん、(今井)翼さん、(上村)吉弥さん、(中村)種之助くん、そして父の(中村)鴈次郎とみんなもやりたかったと。当たり前なんですけど。そこで改めて、これを絶対にやろう! という思いになりました」。
 
主軸を担う愛之助の五右衛門は、茶目っ気があるのが魅力という。「僕の出雲の阿国と話している場面とか、フラメンコを教えてもらうところとか。もちろん立廻りなどもダイナミックでカッコいいんですが、そこに面白さも含まれていて。それがお客様との懸け橋になってどんどん物語へ引き込んでいく」。そんな愛之助と共に、肝となるフラメンコとの融合で見せ場を担うのが、日本舞踊吾妻流七代目家元でもある壱太郎だ。
 
「和の格好でフラメンコを踊ること自体奇抜なのですが、その流れの中でも自分が培ってきた舞踊の力、踊りの力を信じて、しっかりと歌舞伎の日本舞踊で踊るところは踊って。またフラメンコを踊るところ、さらにどちらの要素も入れて踊るところと、変化も見て楽しんでいただける。僕も女性ダンサーの方々と踊る時はすごく刺激を受けるので。かなり柔軟に踊ろうという考えでいつも挑んでいます」。
 
コロナ禍に見舞われた昨年は「挑戦すること」「歩みは止めちゃいけないこと」このふたつの思いから、さまざまな企画に携わり実行した。自身のYouTubeチャンネルの開設、現代劇『夜は短し歩けよ乙女』の主演、そして尾上右近とのオンライン公演『ART歌舞伎』もそのひとつ。『ART歌舞伎』はその後、劇場公開、ファンタジア国際映画祭参加へと発展した。「ご縁がいろいろなことに繋がっていくというのを肌身で感じています。『夜は短し歩けよ乙女』で興味を持ってくれた人が『GOEMON』を観に来てくれたらいいなと思いますし。学んだことはしっかり歌舞伎に落とし込みたいですし、活用できるようにしなければと思います」。
 
ピンチをチャンスに変える一方、歌舞伎公演の再開には喜びをかみしめる。「七月にも大阪松竹座の舞台に立たせていただきましたが、歌舞伎のこしらえをしてお客様の前に立って、生の反応をいただいたときに、やっぱり帰ってくるところはここだなと。東京生まれ東京育ちの僕ですが、上方歌舞伎を通して、愛之助のお兄さんや父とやってきた中で、やっぱりホームグラウンドはここだなと思いました」。
 
改めて十月花形歌舞伎『GOEMON』の見どころについて、こう話す。「歌舞伎の新作というものは結局は、古典の要素を入れて作ります。例えば立廻りには、歌舞伎ならではの魅力がありますし、義太夫という歌舞伎の音楽にのせて演じる翼さんと吉弥さんのお芝居もある。古典を楽しんでいただける要素がたくさん散りばめられている。しかも章仕立てなのでメリハリや展開が多く、そういう意味でも見ていただきやすい構成になっていると思います」。
 
古典を守りつつ、今の時代にしっかりエンタテインメントとして見せていくのも自分たちの使命と力を込める。「今年南座で出させていただいた三月花形歌舞伎では私が一番年上という中で、同世代の方々と歌舞伎の三大名作のひとつにも数えられる『義経千本桜』をさせていただきました。その時も古典の様式なんですけど、観ていて美しいな、カッコいいなと思ったり。そういうところからも歌舞伎に入ってもらえると思いましたので、お衣裳や鬘などの見栄えにもこだわり、様々な工夫をさせていただきました。対して『GOEMON』は設定自体がスペクタクルなので。カッコいいな、綺麗だなでもいいですし。そうやって俳優さんそれぞれを好きになってもらえたら嬉しいなと。やはりこの作品に限らず、これからも一生歌舞伎をやらせていただくので。僕としても、壱太郎さんの舞台をまた観たいなと思ってもらえる、出雲の阿国でありたいなと思います」。
 
公演は10月5日(火)から27日(水)まで、大阪松竹座にて。チケット発売中。

取材・文:石橋法子



(2021年10月 1日更新)


Check
中村壱太郎

『十月花形歌舞伎 GOEMON
 石川五右衛門』

チケット発売中 Pコード:507-391
▼10月5日(火)~27日(水)
大阪松竹座
1等席-14000円 2等席-5000円
[出演]片岡愛之助/今井翼/中村壱太郎/中村種之助/上村吉弥/中村鴈治郎/他
※日時・席種により取り扱いのない場合あり。4歳以上は有料。劇場内では必ずマスクの着用をお願い致します。検温によりご入場をお断りする場合がございます。
[問]大阪松竹座■06-6214-2211

Pick Up!!

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チケット発売中 Pコード:508-035
〈丸万寿司 presents〉
▼10月8日(金) 16:15
大阪松竹座
1等席-14000円 2等席-5000円
[出演]片岡愛之助/今井翼/中村壱太郎/中村種之助/上村吉弥/中村鴈治郎/他
※4歳以上は有料。劇場内では必ずマスクの着用をお願い致します。検温によりご入場をお断りする場合がございます。
※当選者の発表は賞品の発送をもって代えさせていただきます。
[問]大阪松竹座■06-6214-2211

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