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阿波踊りを取り入れた40代の男たちの“熱”を感じるステージ
ゴツプロ!新作『阿波の音』大阪公演が間もなく開幕!
塚原大助、山野海が意気込みを語る!

メンバー7人全員が40代、小劇場界で活躍する脂の乗った男性俳優のみで構成される劇団「ゴツプロ!」。2016年の第1回公演『最高のおもてなし!』以来着実に動員数を増やし、昨年の第3回公演『三の糸』で大阪に初登場、台湾公演も敢行し注目を集めた彼らが、1月18日(金)より大阪・近鉄アート館にて新作『阿波の音』を上演する。『三の糸』では物語に津軽三味線を取り入れ、約1年かけて技術を習得した彼ら。今作は阿波踊りを取り入れた物語で、すでに行われた東京公演では大好評を博した。大阪公演開幕を前に、主宰で俳優の塚原大助と、作・演出を務める山野海(作家名:竹田新)に話を聞いた。

――東京公演の手応えはいかがでしたか?
 
塚原大助(以下、塚原)「役者をして今年で18年になるのですが、今までの中で最も高揚感のある時間が過ごせたなと思っています。それは、阿波踊りの“連”の方たちの踊りや鳴り物が入ったことで、いつものストレートなお芝居だけではなく、エンタテインメント性のあるものに仕上がって、お客さんたちにも高揚していただくことができた。それに自分たちも乗せてもらって一体感が生まれ、今まで味わったことのない感覚を感じられたのだと思います」
 
山野海(以下、山野)「私としては、もちろんラストシーンを書いてはいますが、ある意味、阿波踊りに委ねたというか、そこを観ていただいてこの物語が完結する、という思いで書いたんですね。それが見事に、お客様と踊りの方、鳴り物の方、役者、スタッフ、それら全てで物語が完結したという自負があります。私は一番後ろから観ていたのですが、お客様がどんどん前のめりになっていくのが伝わってきて、お客様と阿波踊りに助けられた作品だったと思いますね」
 
――ツイッターなどの口コミでも、最後のシーンが圧巻だったと仰っている方が多く見られます。
 
山野「阿波踊りの方が仰っていたのは、いつも阿波踊りをしているときは、楽しい踊りだからみんな笑ってらっしゃるけど、泣き笑いしてるお客様の目の前で踊ったのは初めてだと。それは物語の性質上でもありますが、すごくうれしかったですね」
 
塚原「連の方たちも、お芝居のクライマックスで出るというのは初めての経験で最初は戸惑いもあったようですが、皆さん楽しみながら、でもこんなに緊張する舞台は初めてだって言ってて。皆さんが“いい作品を作ろう”と力を注いでくれたので、ご協力いただいた方々に本当に感謝しています」

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――劇団員の方たちも一年かけて阿波踊りの稽古をしたと。
 
塚原「去年の3月から始めて、1年弱ですね」
 
――前回は津軽三味線を1年間ほどやられて、終わってからすぐ阿波踊りに?
 
塚原「そうですね(笑)」
 
山野「昨年2月に台湾公演を終えて、帰ってきた翌々日から阿波踊りの稽古に入りました(笑)」
 
――今回、阿波踊りを取り入れようと思われたのはどうしてですか?
 
山野「第2回公演『キャバレーの男たち』はコーラスグループの話で歌を入れて、『三の糸』が津軽三味線、今回が阿波踊り。塚原が世界に向けて公演を打っていきたいとずっと話していて、そのためには何かフックが必要だと常々思っているんです。例えば三味線とか阿波踊りは日本の伝統文化じゃないですか。阿波踊りを取り入れようと思いついたのは、メンバーの泉知束が高円寺に住んでいて、“阿波踊りなんていいんじゃないの?“って。でもみんな40代ばかりなので、実際に稽古に入ると“やめときゃよかった”と(笑)」
 
塚原「阿波踊りは本当に苦労しました…(笑)」
 
――苦労されたところというのは?
 
塚原「体力的にですね。筋肉痛と肉離れもしましたし。観ているだけだと簡単そうに、楽しそうに踊っているように見えるかもしれないですが、練習はキツイ。1日に3時間くらい稽古するんですけど、ずっとスクワットしているようなものなので、みんな汗だくになりながら、筋肉痛でもだえ苦しみながらやっていましたね。最初は脚の動き方も手の動き方も全然分からないんですよ。でも段々リズムの取り方とかが分かってきて、楽しめるようになったのは本番始まってからですね。それまでは本当に辛かったとしか言いようがないです。40歳過ぎたオジサンばかりなので、始めて2分くらいで後悔しました(笑)」
 
山野「しかも踊るのが、最後の最後なんですよ。この作品では、木場というかつて材木商の男くさい男たちがたくさんいたところが舞台になっていて、そこで、男同士のいろんな出来事が起きるんです。で、最後に阿波踊りなので、そりゃきついですよね(笑)」
 
塚原「2回公演になると本当キツイ(笑)。でも本当にお客さんに助けられていますし、実際、鳴り物の音が鳴り出すと高揚しちゃうんですよ」
 
山野「アドレナリンが出るらしいんですよ」
 
塚原「しかも皆さん達者なので、ちゃんと役者の感情を汲み取りながら演奏してくださるんです。そこで目が合ったりすると、それだけで伝わるものがあったり。本当に感動をもらっています。感謝しかないです」
 
山野「この作品で改めて舞台は総合芸術なんだなって思いました。役者だけじゃなくて、スタッフさん、阿波踊りの方々、お客様と、これが全部一緒にならないと絶対いい芝居にならないじゃないですか。それを今回、ゴツプロ以外の皆さんに助けられて、本多劇場の千秋楽は奇跡みたいな回で、お客様の拍手が鳴り止まなくて、すごかったよね!」

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――音も生でやると全然違いますもんね。
 
山野「全然違います!鳴り物さんと役者の呼吸だったり、それに共鳴してくださるお客さんがグッと入り込んでくださったり、エネルギーの交換だなって本当に思いましたね」
 
――お芝居の醍醐味ですね。昨年は大阪で初公演されて、いかがでした?
 
山野「大阪のお客様は反応が早いというか、前のめりで観ていただいている感じがしますね」
 
塚原「盛り上げてくださろうとしている熱も感じますし、すごく温かみを感じて、楽しかった印象がありますね。また大阪のお客様にお会いできるのが楽しみです。阿波踊りはお祭りなので、本当はお客さん全員と一緒に踊りたい気持ちなんですよ。東京公演では、“最後のところは一緒に踊りたかった”という声をたくさん聞いたので、大阪でもそこまで持っていきたいなという思いがありますね」
 
山野「阿波踊りって跳ねてるし、祭りって楽しいじゃないですか。本当に最後のシーンは祭りを再現しているような感じになっていて。ぜひ大阪のお客様にも楽しんでいただければと思います」
 
塚原「大阪は「大阪天水連」さんにご出演いただくんですけど、“東京には負けない!”ってかなり気合入っているみたいで(笑)。こちらとしてもすごくありがたいなと思います」
 
山野「皆さん、“このお芝居を少しでもいいものにするために来てるんだ”っていう思いがすごく強いんです」
 
――山野さんが男たちの物語を作るうえで大事にされていることは?
 
山野「男が思う男のカッコよさと、女が思う男のカッコよさって違うじゃないですか。そこをすごく意識しますね。私が女だから、その目線を通して描く。女から見て色っぽい男って、男から見ても色っぽいと思うんですね。イケメンかどうかは別にして、彼らが歩んできた人生とか経験してきたものが、舞台に立ったときにエネルギーとして放出させられたらすごくいいなと思っています」
 
――そういう意味でも、最後の阿波踊りのシーンは女性たちがグッとくるのかもしれませんね。
 
山野「きてほしいですね。でも男性も号泣している人が多かったんです。ロビーとかでお会いすると、40代、50代くらいの方たちの目が真っ赤なんですよ。あれはうれしかったですね」
 
塚原「我々と同世代の40代、50代は、社会の中で中心になって働いている人たちで、お客さんにも同世代の方が多いんです。そういう人たちにも自分たちの頑張っている熱を伝えたいし、それによって“俺も頑張ろう”って刺激を受けてもらえるものにしたいなと思っています。大きい話ですけど、そうやってどんどん社会を活性化していけたらいいなと思いますね」

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――塚原さんから見て、山野さんの作品の魅力は?
 
塚原「熱ですよね。あとは、奥深いところも書いているんですけど、必ず笑いがある。笑って泣いてじゃなくて、笑わせながら泣かせる、泣かせながら笑わせるっていう、感情のジェットコースターに乗っているようなホンで、書いていることは普遍的なんですよ。人としての大切なこと、例えば愛情、友情、家族や友達を思う気持ちとか。それは世界的に見ても普遍的だと思うんですよ。だからきっと海外にも通用すると思うし、どんな人間でも共感できる部分はあると思う。そして描かれているのは昭和のギラギラした男というか、男は男らしく、女は女らしく生きていた時代。そういうところが、僕はとても好きですね」
 
――山野さんが昭和の時代を描くのは?
 
山野「1作目の『最高のおもてなし!』で書いたセリフに「人間が生きている意味はただのひとつだけで、次に繋げる橋になることだ」というのがあって、ゴツプロ!ではそこをテーマに書いているんですね。それで今回は、東京の高円寺で盛んな阿波踊りの史実が、私が書きたいものにリンクしていたことがまずひとつあります。あと、自分が子どもの頃にいたような、優しくてわがままで、なんとも不器用な男たちを描きたいという思いがある。そういう不器用な人たちがいて今の我々があるということを少しでも知ってほしいなと思いますし、それを体現できるのは、手前味噌ですが、うちのゴツプロ!のメンバーだと思っていて。だから私は割と昭和の時代を描くことが多いのだと思います」
 
――なるほど。それを体現するゴツプロ!の方々を、山野さんはどう見られていますか?
 
山野「今回、木場の荒々しい男たちを書いて、女の私がどうしてこんな男々しい話を書くんだろうって思ったんですね。彼らと丸5年ずっと一緒にいるんですが、そうすると彼らがどんどんゴツプロ!をやることによって、自信を持って成長していく様をどんどん見ていくわけですよ。それに触発されて書く。だから、私にとってのゴツプロ!は私の創作意欲のもとになる人たちです。彼らは私を守ろうとしてくれますし、私も彼らをホンで守ろうとしていますし、すごく対等な関係というか、パートナーだと思っていますね」
 
――創作意欲のもと!素敵な関係ですね。前回公演から東京は本多劇場に進出され、地方公演も海外公演も実現されていますが、今後の劇団としての目標は?
 
塚原「今までは本多劇場で1週間だけでしたが、来年は2週間やることが決まったので。単純計算でいくと5000人動員しなきゃいけない、というのが目の前の目標ですね。最大の目標は1万人動員ですが、動員だけじゃなくて、芝居のクオリティももっと高めていきたいし、もっと世の中に知られる劇団になりたい。日本国内も海外も、もっといろんなところに行きたいですね。今想像し得ることは達成していければと思っています」

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――今回の大阪公演も楽しみにしています。最後にそれぞれメッセージをお願いします!
 
塚原「東京公演では“阿波踊りを観たことがなかったけど、あんなにカッコいいんだ!”という声も多かったので、お芝居もさることながら、阿波踊りの迫力や、カッコよさを大阪のお客様にも感じていただけたらうれしいですね」
 
山野「昭和の男たちの“粋”をぜひ観に来てください!」

取材・文:黒石悦子
撮影(舞台写真):MASA HAMANOI



(2019年1月17日更新)


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左から、山野海、塚原大助

ゴツプロ!第四回公演『阿波の音』

▼1月18日(金) 19:00
▼1月19日(土) 13:00/17:00
▼1月20日(日)・21日(月) 13:00
近鉄アート館
全席指定-5000円 
【脚本】竹田新 【演出】山野海
【出演】塚原大助/浜谷康幸/佐藤正和/泉知束/津田恭佑/山本啓之/熊田健大朗/谷口就平/風間八/かなやす慶行/渡邊聡/44北川
※未就学児童は入場不可。


公式サイト