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「主人公たちが見ている景色を一緒に見てほしい」
関西小劇場界随一の時代劇集団STAR☆JACKSが
幕末の土佐を舞台に描く岡田以蔵と武市半平太の物語

大阪を拠点に、2007年の旗揚げ以来「古き良き文化を大切にし、かつ時代の感覚を取り込んだ極上のエンターテインメント」をテーマに活動する時代劇集団STAR☆JACKS。9月28日(金)より大阪・日本橋のin→dependent theatre 1stにて新作『君が為~恋風は楊梅(やまもも)の薫り~』をロングラン上演する。本作は、幕末の土佐を舞台に“人斬り以蔵”と呼ばれた岡田以蔵と、以蔵が師と仰ぐ武市半平太の関係性をフィクションで色濃く描いた物語。プロデューサーの浜口望海と本作で脚本・演出を手がけるドヰタイジ(天道満彦)に話を聞いた。

――2007年の旗揚げからずっと時代劇をやり続けてこられているんですよね。
 
ドヰ「そうですね。旗揚げした当時は、あまり時代劇をやっている劇団がなかったこともあり、面白い時代劇を作ろうと。古き良き文化をちゃんと守りながら、自分たちならではの新しいものを取り込んでいこうというコンセプトで作っています」。
 
浜口「着物はちゃんと着るとか、時代劇の本質を大事にしつつ新しいことをやる。日本映画や歌舞伎、新派の舞台があったり、新国劇があったり、そういう流れを見た中で、じゃあ僕らは何をしようかということはちゃんと考えて作ろうと思ってやってます」。
 
ドヰ「歌舞伎でいうところの“型破り”。“型なし”じゃなくて、ちゃんと型を知った上で崩したいなと思っています」。
 
――今回の新作はどんな物語に?
 
ドヰ「人斬り以蔵とその師匠である武市半平太の関係性を濃く描けたらなと。そこに、武市の妻・みやが絡んでくる。主人公としてはあまり取り上げられない人物なんですけど、そこに焦点を当てて書きたいと思ったんです。本当の武市さんはすごく真面目で温厚な人柄だったらしいですけど、それが破天荒だったらどうだっただろうというところから物語を作っていきました」。

starjacks2.jpg前回公演より

 
――男同士の物語であり、男と女の物語でもある。
 
ドヰ「三角関係が結構重要なエッセンスになっていますね。あと今回描きたいのは、人を斬る重さ、命の尊さを感じられるもの。40代になって、若い頃には書けなかった心の機微が書けるようになったというか。自分も家族を持ち、人生経験を重ねてきたからだと思うんです。今までもお芝居の中で立ち回りをしながらたくさん人の命を奪ってきたんですけど、そこに違和感が出てきたんですよね。志のために人を殺していいのかと。その重さを今作で描けたらいいなと思います。あと、僕が書く作品は、大体、“後悔”を吐露するようなものが多いんです。絶対に悔いのない人生は送れないし、悔いがあったとしても最後にどんな死に方をするかが大事で。今回もラストにはそういうシーンがあるので、主人公たちが見ている景色を、お客さんにも一緒に見ていただきたい。いく者、残される者、そして今回は生まれてくる者のことも描いています。20代の頃にはかけなかったお芝居ですね」。
 
――今回は11日間のロングラン公演で、キャストもいろんなバージョンが楽しめるんですよね。
 
ドヰ「日替わりで7チームあり、全員役をシャッフルして上演します」。
 
浜口「全員、最低2ポジションはやっています。ダブルキャストとか、Aの役とBの役を入れ替えるデュアルキャストというのはやったことがあるんですけど、それをちょっと進化させてみたらえらいことになりました(笑)」。
 
ドヰ「今までは2つの役を覚えればよかったんですけど、僕の場合だと今回は、岡田以蔵役と、ひとりで何役もやるポジションをするので大変です…」。
 
浜口「一番多い人は全部で25役あります(笑)。せっかくのロングランで、大阪公演は20ステージあるので、同じチームでやり続けるのも面白みがないなぁと。いろんなバージョンを楽しんでもらおうとバリエーションをつけたら、意外と多くなってしまいました(笑)」。
 
――どのバージョンを観るか、迷いそうですね。
 
浜口「おすすめの見方は前半でAかBを観ていただき、違う組み合わせも観たいと思っていただけたら、C~Gを行ける日から選んでみるとか、キャストの組み合わせから選ぶ。Gからスタートすると選択の余地が減るので、スケジュールの都合もあると思いますが、なるべく前半で観ていただくと、比較対象を増やせられる組み合わせになっています」。
 
ドヰ「Dの岡田以蔵役はゲキバカの中山貴裕君なんですけど、僕が考えの及ばないようなところを考えていたりするので、面白いだろうなと。色が全然違うだろうなと思っています」。
 
浜口「一応、それぞれのチームにコンセプトがあるんです。Aは東京公演の賞レース(池袋演劇祭)を狙った選抜キャストで、Bはメインどころを客演で固めたバージョン。真逆のチームをAとBで作っています。Cは僕の中では女優回。丹下真寿美、兵頭祐香という脂の乗った女優ふたりがそろうというのが大きいですね。Dは中山君が以蔵役なので、カラーがガラっと変わるだろうなという組み合わせ。Eは若手と中堅がバランスよく配置されている。Fは完全に若手メンバーで構成された若手回で、GはSTAR☆JACKSファミリーが大半そろう回。それぞれに面白みがあるので、どれをご覧いただいても楽しんでいただけると思います」。
 
ドヰ「やっている側も、観る側も全然見え方が違うと思います。ただ人が変わっただけではなくて、作品が多面的に観れるような組み合わせになっているので」。

starjacks3.jpg
前回公演より


――殺陣も結構あるんですよね?劇場が狭いので、その点でも工夫が必要になりそうですね。
 
浜口「昔、ライブハウスでやったことがあるんです。天井も低いし、照明とかスピーカーもあるような場所で、いかに当てず、いかに迫力を出せるかという研究もしてきたので、今回はその経験が活かせるんじゃないかなと思います。お客さんにとっては結構迫力あると思いますよ」。
 
――改めて、時代劇の魅力は?
 
浜口「歴史って、ここではこんな事件が起きて、という風に事実が点で残っている。その点をつなぐ線は、作家や演出家次第だと思うんです。そこに役者の解釈が乗っかって、お客さんが受け取る。そういう意味では、いろんな可能性があると思うんですよね。あと単純に、着物の男性はカッコいいし、女性は色っぽい。もちろん中身がついていかなきゃ意味がないんですけど、それだけでも見どころになると思う。殺陣もカッコいいし。そこにドラマがあればさらにいい。シンプルなところでいうと、そういうところだと思います」。
 
ドヰ「僕らが作るお芝居を観ることによって、タイムスリップしたような感覚になっていただけたらいいなと。現代劇にはない、違う感覚を味わっていただけると思います。今回の作品は、幕末好きの人はあらすじを読むだけで観たくなってくれたらうれしいし、歴史をあまり知らない人が観て、こんな人やったんやっていういい誤解をしてほしいですね(笑)。男女問わず、カッコいいなと思っていただけるものをお見せしたいと思っていますので、ぜひ劇場に観に来ていただきたいです」。

取材・文:黒石悦子



(2018年9月27日更新)


Check

STAR☆JACKS
「君が為~恋風は楊梅の薫り~」

〈TEAM A〉
●9月28日(金)・29日(土) (金)19:30 (土)19:00
【脚本】天道満彦 【出演・演出】ドヰタイジ
【出演】浜口望海/中山貴裕/山本誠大/寺井竜哉/兵頭祐香/吉田怜菜
※アフターイベント「1シーン再現」あり。

〈TEAM B〉
●9月29日(土)・30日(日) (土)15:00 (日)19:00
【脚本】天道満彦 【出演・演出】ドヰタイジ
【出演】山本誠大/中山貴裕/下浦貴士/浜口望海/吉田怜菜/兵頭祐香
※9/30(日)公演終了後、アフターイベント「1シーン再現」あり。

〈TEAM C〉
●9月30日(日)・10月1日(月)・5日(金)・6日(土) (日)15:00 (月)(金)19:30 (土)19:00
【脚本】天道満彦 【出演・演出】ドヰタイジ
【出演】中山貴裕/倉田操/徳城慶太/山本誠大/丹下真寿美/兵頭祐香
※10/1(月)公演終了後、アフターイベント「1シーン再現」あり。

〈TEAM D〉
●10月1日(月)・3日(水)・6日(土) (月)15:00 (水)19:30 (土)15:00
【脚本】天道満彦 【演出】ドヰタイジ
【出演】中山貴裕/倉田操/徳城慶太/浜口望海/酒井翔悟/新本千尋/丹下真寿美
※10/1(月)公演終了後、アフターイベント「1シーン再現」あり。

〈TEAM E〉
●10月2日(火)・6日(土)・7日(日) (火)19:30 (土)11:30 (日) 19:00
【脚本】天道満彦 【出演・演出】ドヰタイジ
【出演】寺井竜哉/浜口望海/倉田操/野村洋希/兵頭祐香/鳶野皐月
※10/2(火)公演終了後、アフターイベント「1シーン再現」あり。
※10/7(日)公演終了後、アフターイベント「千秋楽前日!プレ打ち上げ!」あり。同日11時半、15時の回をご観劇になっても参加可。

〈TEAM F〉
●10月4日(木)・7日(日) (木)19:30 (日)15:00
in→dependent theatre 1st
【脚本】天道満彦 【演出】ドヰタイジ
【出演】寺井竜哉/徳城慶太/野村洋希/酒井翔悟/下浦貴士/丹下真寿美/鳶野皐月
※10/4(木)公演終了後、アフターイベント「1シーン再現」あり。

〈TEAM G〉
●10月5日(金)・7日(日)・8日(月・祝) (金)15:00 (日)11:30 (月・祝)11:30/15:00
【脚本】天道満彦 【出演・演出】ドヰタイジ
【出演】浜口望海/下浦貴士/寺井竜哉/野村洋希/鳶野皐月/新本千尋
※10/5(金)・8日(月・祝)15時公演終了後、アフターイベント「1シーン再現」あり。

in→dependent theatre 1st
A席(一般)-4000円(自由席)
A席(U22)-3000円(自由席、要身分証明)
※S席は取り扱いなし。未就学児童は入場不可。
Pコード 488-996
発売中

公式HP
http://starjacks.jp/feature-works.html

<あらすじ>

幕末土佐。
岡田以蔵は命の恩人・武市半平太を師と仰ぎ、まるで飼い犬のように懐いていた。「武市が全て、武市は神」と信じ、自らの全てを武市の率いる土佐勤皇党に捧げていた。

文久二年、梅雨の晴れ間に裏山に咲く楊梅の薫りが辺りを包み込んだ昼下がり。

以蔵は武市にその妻・みやを押しつけられる。半ば強引に夫婦にさせられた以蔵とみやであったが、以蔵はみやを次第に愛していく。しかしみやは武市の子を宿していた…。

一藩勤皇を掲げる土佐勤皇党は、開国覇、公武合体派の要人たちを次々に誅殺。
みやと産まれてくる子供のため、以蔵はその主犯として金を稼ぐ。
そんなある日、以蔵はみやの元から姿を消す。

想いの丈をすべて伝えて…。